taboo 同期で友人でもあるカズサがうちに来たのはとある明け方。事前にメールを受けて、やり取りの中でともに翌日非番であると分かるや否や、
『酒持ってこれから行く』
との返信を受けた数十分後だった。
「急になんだよ」
玄関を開けた僕の問いにカズサは無言のまま、あまり見た記憶のない仏頂面を返すだけ。
「彼女に振られでもしたか?」
それはなんの気無しの当てずっぽうだった。だが、いつだったか聞いてもいないのに惚気られたどこの誰かも知らない相手を引き合いに出した途端、生来垂れた目尻を精一杯引き上げた友人を見て僕はぎょっとしてしまった。
「……悪い」
図星だったのだろう、そう理解して、気まずく謝るこちらにカズサは
「ヤギヤマは悪く無いけどぉ⁉︎」
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