「白鷹」
水辺の側に植る木の根元。幾羽かの雛が上擦る声音で親鳥を希う下に集めた素材を置き終えたとき。徐に呼び名を紡がれ、白鷹は顔を上げた。声は近頃聞き馴染んだベインのものに違いない。白鷹よりもはるかに上背のある森の番人は、存外なほど直ぐとした眼差しを白鷹に注いでいた。
「あの子を頼む」
告げられたのは眼差しと同じく直ぐとした声音だ。いっそ重たさすら感じ得るというのに、その底にあるものはあまりに優しい。
あの子、と、ベインが幼い子供のように呼ぶのはひとりだけだ。森の守り人の奥底にある人。暗い夜にひとりきりで泣いている彼。その名を知らずとも、ベインはあの厳格たろうとする姿の奥にある彼を見つけている。
「言われるまでもないだろう。解っている。だが、言わざるを得ない程にあの子は孤独だ。そして孤独に慣れすぎた」
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