ひなたの過去ひなたの過去❶
頭を撫でられたのを微かに感じた。誰かが小さく消え入りそうな声で何かを自分に向かって言っている。それは暖かく聞き覚えのある…そんな気がしていた。でも目は見えず、強烈な耳鳴りでそれは掻き消され、一体何を言っていたのか聞こえなかった。
ひなたが最初に見た世界は深くて冷たくて青かった。上を見上げたが眩しすぎて何も見えない。外側の世界からなのだろうか、どこからか人が騒ぐ声が聞こえる。
「何があった!」
「人が、子供が!…コンピュータの中に入ったとの報告が!」
「外的刺激により量子コンピュータ 椿 の制御機能が停止されています。このままでは暴走しかねません!」
「コンピュータを緊急停止しろ!そして早く救助を!」
3329