お茶会断章(3.5) 鏡の向こう《鏡の向こう》
パトカーの音が遠くから響く中、真次は用意していた巡査の制服をシャツの上から羽織り、手袋をはめている事を一度確認してから友一の怪我にハンカチを巻いた。すぐ治るとはいえ、跡くらい残るかもしれない。心中詫びる。まさか連中があんなに早く手をあげるとは思わなかった。自分の判断ミスだ。もし最初から顔にでも傷を作られていたら、と思うとゾッとする。想像するだけで殺意がわく。
見納めだ。
乱れた髪に隈のひどい目元が見え隠れしている。
正直、このまま奪いさっていきたい。
誰も探せない場所に閉じ込めてしまいたい。
欺瞞と慈愛を持つあの希有な瞳を、自分だけものにして、自分だけを見させてみたい。そうさせられる自信はある。
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