どうか僕の手を取って(仮題)「愚かだな、君も、俺も」
特殊加工が施された防塵硝子を透かして、朝のやけに清々しい陽の光が白々しく病室を照らす。砂漠の日差しは強いが、朝のそれはそれほどでもなく都市部と同じように静やかだ。
病室だからこそ明るくしたいんだと、この元ダールアルシファの改築を教令院から依頼された建築デザイナーが言っていたのをアルハイゼンは思い出した。
まさか当の本人は、自分がその病院の世話になって、その居心地を自分の身で確かめることになるなんて思いもしなかっただろう。アルハイゼンは未だ昏々と眠り続けるカーヴェの土気色をした顔を見下ろし、それから彼の手をそっと握った。
添木と包帯でしっかり固定され、幾つも点滴の管を入れられた傷だらけの彼の手は氷のように冷たくて、手首から感じられる脈拍は酷く弱々しい。
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