叶ってほしくなかった カービィを探しに町の方に赴く。まん丸な桃色のシルエットを見つけるも、友人たちと談笑中だった。盛り上がっていて、ボクが入り込む余地はない。
「……出直ソ」
ボクはくるりと背を向けて、その場を後にする。こういうことは、一度や二度ではない。ボクが会いに行くと、カービィはいつも友人たちに囲まれていた。当然だろう。彼は人気者のヒーロー、「星のカービィ」なのだから。
無理やり割り込んで会話の主導権を握ることも、ボクの話術なら可能ではある。しかし、憩いの場に水を差した邪魔者に向けられるのは、白い目だけだ。
「……また、渡せなカッタナァ」
ローアに戻り、ため息をつく。手の中でクッキーの袋がカサカサと軽い音を立てた。
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