友人が外国に住んでいる、というのは何だか妙な気分だ。
慣れない飛行機を降り立ち、きょろきょろと空港を見渡す。当然だが日本語は目に入らず、英語は読めるが若干の心細さを感じた。仕事に呼ばれて外国に行くことが無い訳ではないが、そういった時は大体切羽詰まっているので、頭の中は症例と術式のことでいっぱいだ。今回は譲介に呼ばれた身なので、何となく浮ついた気持ちになっている。学会に合わせて前日入りしただけだが、ワクワクとした気持ちは抑えられなかった。
「よぉ、久しぶりだな」
「譲介! 久しぶり、元気そうだね」
「お前もな。……それは?」
預けた荷物を受け取り、空港の外に向かうと譲介が出迎えてくれた。さすがにあの頃のようなパーカーは着ていないが、相変わらずラフなTシャツ姿だ。アメリカの地にも馴染んでいて、少し緊張しているこちらが恥ずかしくなってくる。しばらく会わないうちに随分と大人びたように見えたが、目ざとく指さされた紙袋にあの頃の片鱗を感じて頬が緩んだ。
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