口内炎が出来ている気がする。
刺すような違和感に思わず顔を顰め、目の前の鏡に向かって口を開けた。
噛んだ記憶も無いし、ビタミン不足かストレスだろう。分かりやすい舌先や唇の裏ではなく、舌の付け根がピリピリと痛む。舌を出してもうまく見えず、首を傾げた。
「何やってんだよ」
「……口内炎が出来た」
「あー……そういうのって別に見たって意味ねぇのに見たくなるよな……」
隣で顔を洗っていた左馬刻が大きく欠伸をする。昨日の夜は遅かったし、まだ寝惚けているのだろう。同じ時刻に就寝した筈の理鶯はとっくに起きて飯を作り始めているが、低血圧の左馬刻は眠そうに瞬きを繰り返している。
「どこだよ」
「見えねぇ…多分、舌の左の端だと思うんだが」
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