許す男「なあ、隊長さん知らね?」
覗き込んだ室内に、痩身の男の姿はなかった。
そも、誰も彼もが出払っているようで、居るのはそばかすの女だけだ。確か名前を月光院とか言ったか。尋ねるも、案の定、否が返される。
「会議中ですね、半時間程で戻るかと。何かお急ぎのご用でしたか?」
「いや別に。こないだの事件で自販機壊した反省文出せって言われてたから、それを持って来ただけだけど」
渡してさっさと帰ってしまおうか。だが書き直しの場合、また呼びつけられるかもしれない。
監視役をしている彼の男は、最近、何かと下らないことで俺を呼び出すようになっていた。自死を試している最中だろうが、退治人どもと戯れていようが、お構い無しなのだ。それが至極、面倒だったから。
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