Talkin’ bout ThaT./ They Kill PPL.Talkin’ bout ThaT.
最近では物騒な事件が多いという。部屋の隅に捨て置かれた小さな画面から、今日もどこかで誰かが命を落としたというニュースが流れていた。暗い世相を反映しているのでしょうか、長引く不況が人々の心を荒ませるのでしょうか。深刻そうな声を聴き流しながらハングマンは小さく笑う。
戦場では毎分毎秒、今この瞬間にさえ多くの兵が命を喪っているというのに、日常の中で生きる人々はそんなことには無頓着だ。用意された原稿を読みつづけるぺらぺらの美人の紅く染められた唇は、訓練を重ねて作られたうつくしい声に併せてうねうねと動く。
だれかがそういうことにしたいんだろうな。肩を竦めると苦い笑いがくちびるの上へと戻ってきた。生きている人間は実にグロテスクだ。殺す相手の顔すら見えない戦場も、そこで死に行く者も、生きて戦争を操っている奴等に比べればずいぶんと上等な存在に違いない。戦争なんてクソくらえだ。しかし自分はその中で生きている。
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