小説家してる桑名のところに旧知の豊前が旅に出るからこれをもらってくれ…珍しいものだからって、青い魚をくれるので、不思議で珍しい魚をくわなは大事に金魚鉢にいれて、それを眺めるのが楽しくなっていたところ、度々不思議な夢を見るようになる。青い魚は青い髪飾りと浴衣を着て松井と名乗り夢枕の中で自分に甘えてくるようになる。そのうち夢と現実が混ぜこぜになる桑名は昼間でも人の形をした魚が部屋をうろつくようになるので、魚の時と変わらず松井を眺めて食事を与える。魚の松井は人になったらしてみたかったって、桑名にキスや添い寝を強請るようになるけど、あまりにも精神が幼なげな松井に桑名は躊躇い、それは好きな人同士がするものだから…。って断るけれど、ある日松井にと買ってきた真っ赤なみぞれ玉を渡すと、喜んで舐め始めたものの、ざらめのせいで舌が痛いから痛くなくなるように撫でて。って口をぱかっと開けて、いつも通りのおねだりをしてくるので、桑名は松井の真っ赤な舌をみて思わずキスしてしまう。ぽけっとした松井がそういえば今のはキスってやつだけど、桑名は僕のことが好きなのか?と問うので、見目の綺麗な松井が自分に四六時中甘えてくることを好ましく思っていた桑名は、そうだね…。僕は君のことが好きだ。って言って初めて共寝をする。それからずぶずぶ松井に溺れる桑名、それと共に桑名の小説の作風が変わって、飛ぶように売れだすので、全部松井のおかげだよ。って上機嫌な桑名に反して魚の松井の寿命が迫ってくる。僕はもっと桑名と一緒にいたい、この身が恨めしいよ。って起き上がることのできなくなった松井は、それから魚の時のことを話し出す。豊前の恋人が僕を買って2人に世話してもらっていたこと。彼のところでキスや人と人が抱き合うところを見たこと、冷たい身体で愛なんて知らなかったけどそれが羨ましいと思ったこと。赤色が好きなのは人の血潮のあたたかい色だったから。それから、彼が旅に出る前日、彼の恋人は僕を見ながらとても泣いていたこと。話し終えた松井はしばらくしてから、雨の降る夜、魚に戻って死んでしまった。
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