秘色-ヒソク-
DOODLEファウフィガ とってもお世話になっているおともだちに贈ったもの。テーマは【100点】。「きみ、学ぶほうだけじゃなくて教える側でも、ちゃんと優秀だよねぇ」
呟く声に視線を上げると、感嘆と喜色に満ちた微笑みがあった。こういうとき、僕にどう返してほしいんだ、と訊いてしまいたくなることがある。素直にそんなことを口にする気には、到底なれないというのに。
こちらの都合などお構いなしに押しかけてきたこの男を追い返すにはどうしたらよかったのか。うまくいかなかったのは、思ったままには言葉にできないからだろうか。そんなことを言ってしまって、もしも、万が一。あの流星と雪景色の夜、フィガロの都合などお構いなしに、北の偉大な魔法使いの元へと押しかけた過去に触れられたりしたら。いったいどんな顔をしたらいい? 断る術がなくなるだろう、と言い訳みたいに胸の内、呟いて。生徒たちの試験の採点があるからと正直な理由で断ったのに、どうしてこうなる。ああ、それなら、と納得した声は、仕方ないねと続くものだと思ったのに。
2662呟く声に視線を上げると、感嘆と喜色に満ちた微笑みがあった。こういうとき、僕にどう返してほしいんだ、と訊いてしまいたくなることがある。素直にそんなことを口にする気には、到底なれないというのに。
こちらの都合などお構いなしに押しかけてきたこの男を追い返すにはどうしたらよかったのか。うまくいかなかったのは、思ったままには言葉にできないからだろうか。そんなことを言ってしまって、もしも、万が一。あの流星と雪景色の夜、フィガロの都合などお構いなしに、北の偉大な魔法使いの元へと押しかけた過去に触れられたりしたら。いったいどんな顔をしたらいい? 断る術がなくなるだろう、と言い訳みたいに胸の内、呟いて。生徒たちの試験の採点があるからと正直な理由で断ったのに、どうしてこうなる。ああ、それなら、と納得した声は、仕方ないねと続くものだと思ったのに。
秘色-ヒソク-
TRAININGファフィ、難しすぎていつも挫折する フィガロ様、と呼ばれていた頃から、そういえば好きだと言われた事はなかったように思う。
それもそうか、と思いはするけれど胸の内、閊えるものに恐る恐る目を向ければ、根を張るものはやはり寂寞だ。
畏怖や畏敬といったものを捧げられることには慣れたもので、あの子の眼差し、思慮と声にもそういったものは確かにあって。
けれど手元に置く内に、もっと柔らかく肌触りのよい心持ちを、触れやすいようにあたためて、そっと手のひらに乗せるみたいに差し出してくれたあのとき。
慎重に、零れ落ちてしまわないように、正しい分量を推し量りながら、ほんの少しずつ。
真面目で誠実で几帳面な性格はこんなところにも。そう思ったら愛しくて、嬉しくて。そんな自分のことまでおかしくなって、笑ってしまったのだけれど。
801それもそうか、と思いはするけれど胸の内、閊えるものに恐る恐る目を向ければ、根を張るものはやはり寂寞だ。
畏怖や畏敬といったものを捧げられることには慣れたもので、あの子の眼差し、思慮と声にもそういったものは確かにあって。
けれど手元に置く内に、もっと柔らかく肌触りのよい心持ちを、触れやすいようにあたためて、そっと手のひらに乗せるみたいに差し出してくれたあのとき。
慎重に、零れ落ちてしまわないように、正しい分量を推し量りながら、ほんの少しずつ。
真面目で誠実で几帳面な性格はこんなところにも。そう思ったら愛しくて、嬉しくて。そんな自分のことまでおかしくなって、笑ってしまったのだけれど。