キツキトウ
DONE2024/4/24自分は、鉱物は何だか人みたいだなと思う時があるのです。
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エブリスタ「三行から参加できる」用に新しく書いたもの。「終煙奇譚」シリーズの一つ。
終煙怪奇譚:「息する仮晶」.
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「じゃあ、大人しくここでまっているのよ」
吐かれた息は白く広がりついには消えた。
赤い背は遠ざかっていき、その人にいつも纏わり付いていた強い匂いがそれに付いて消えていく。
自分に向かって誰かがそう言っていたのだ。
✤ ✤ ✤
屋根の下で、細く白い手を空に透かしては微かに白い息を天へ投げ、見上げていた視線をまた地に落とす。……クラリと頭が揺れた時、何かが視界の端に映り込んだ。
もふもふとした何かが目の前を通る。もふもふとした白くてまん丸い毛玉達だ。ちょこんと目のような粒も見える。
それはぴょんぴょんと跳ねてはピタリと止まり、止まった場所で次々にぶつかり合ってはひっついて、むきゅむきゅとおしくらまんじゅうをしだす。そして暫くすると一匹一匹と塵じりになっていき、やがてまた戻ってきては同じことを繰り返していた。
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「じゃあ、大人しくここでまっているのよ」
吐かれた息は白く広がりついには消えた。
赤い背は遠ざかっていき、その人にいつも纏わり付いていた強い匂いがそれに付いて消えていく。
自分に向かって誰かがそう言っていたのだ。
✤ ✤ ✤
屋根の下で、細く白い手を空に透かしては微かに白い息を天へ投げ、見上げていた視線をまた地に落とす。……クラリと頭が揺れた時、何かが視界の端に映り込んだ。
もふもふとした何かが目の前を通る。もふもふとした白くてまん丸い毛玉達だ。ちょこんと目のような粒も見える。
それはぴょんぴょんと跳ねてはピタリと止まり、止まった場所で次々にぶつかり合ってはひっついて、むきゅむきゅとおしくらまんじゅうをしだす。そして暫くすると一匹一匹と塵じりになっていき、やがてまた戻ってきては同じことを繰り返していた。
キツキトウ
DONE2024/4/7怪奇中毒者は彼方《かなた》。それが私の最初の〝話〟だった。
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エブリスタ「三行から参加できる」用に新しく書いたもの。「終煙奇譚」シリーズの一つ。
終煙怪奇譚:「メメメ」.
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ふるふるふると、自身のやるせなさに震える。
ふつふつふつと焦げる心の底が、じれったさに悶える。
考えども考えども浮かばない。インクの一滴すらも進みがない。苦しく、悶え、気が晴れず、言い知れぬ心地悪さに浸食される。何かが浮かびそうで浮かばない。
ごうんごうんと、そしてがたがたと震える洗濯機の群れに囲まれながら待合の椅子に腰かけ、煙草を咥え、万年筆と手帳を片手に髪を掻き上げる。持ち上げた脛を置いた片脚が貧乏揺すりをし出しそうだ。
レトロなコインランドリーで、晴れ晴れとしない鬱屈さともう少しで何かが掴み取れそうなもどかしさに浸されている。
「クソッ、締め切りまで間がないぞ」
幸か不幸か、しかし有り難さなのか。
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ふるふるふると、自身のやるせなさに震える。
ふつふつふつと焦げる心の底が、じれったさに悶える。
考えども考えども浮かばない。インクの一滴すらも進みがない。苦しく、悶え、気が晴れず、言い知れぬ心地悪さに浸食される。何かが浮かびそうで浮かばない。
ごうんごうんと、そしてがたがたと震える洗濯機の群れに囲まれながら待合の椅子に腰かけ、煙草を咥え、万年筆と手帳を片手に髪を掻き上げる。持ち上げた脛を置いた片脚が貧乏揺すりをし出しそうだ。
レトロなコインランドリーで、晴れ晴れとしない鬱屈さともう少しで何かが掴み取れそうなもどかしさに浸されている。
「クソッ、締め切りまで間がないぞ」
幸か不幸か、しかし有り難さなのか。
キツキトウ
DONE2024/3/27彼は誰時。
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エブリスタ「三行から参加できる」用に新しく書いたもの。「終煙奇譚」シリーズの一つ。
終煙怪奇譚:「誰そ彼、その声は、」.
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『それはこっちの方がいい』
また今日も声が聞こえた。
幼い頃からこうだ。何かに迷う時、危機を回避する時、失敗して泣きそうになった時は宥め、子供ながらに悪さをしてしまった時は親に見つかる前に諭すように声が出てくる事もある。ポケットから。
ただ、最終的には己で決めるので、その声に沿う事もあれば携えた小さな反抗心で沿わない事もあった。
「お前は何にする?」
「……そうだな」
夕の色も瞑色に変化しつつある街中を抜けた先、訪れた店の卓上で、品書きの羅列を眺めながら通り過ぎたいつもの声をやり過ごす。
喉が渇き、まずは茶かそれとも酒かで迷い、けれど今の状況、結局の所最後には酒をあおる事になるのだから――
『無駄だろう』
2555.
『それはこっちの方がいい』
また今日も声が聞こえた。
幼い頃からこうだ。何かに迷う時、危機を回避する時、失敗して泣きそうになった時は宥め、子供ながらに悪さをしてしまった時は親に見つかる前に諭すように声が出てくる事もある。ポケットから。
ただ、最終的には己で決めるので、その声に沿う事もあれば携えた小さな反抗心で沿わない事もあった。
「お前は何にする?」
「……そうだな」
夕の色も瞑色に変化しつつある街中を抜けた先、訪れた店の卓上で、品書きの羅列を眺めながら通り過ぎたいつもの声をやり過ごす。
喉が渇き、まずは茶かそれとも酒かで迷い、けれど今の状況、結局の所最後には酒をあおる事になるのだから――
『無駄だろう』
agete24sontaku
DONEかずのこが見聞きした怪談怖くありません
不思議なお話不思議なお話
流す
よく「禊」で滝に打たれる行為がありますよね
あれ、単に推し潰されるような強い水圧で何かが変わった感覚になるみたいなんですが
霊能的にも、あながち効果があるようなんです
これは俳優の原田龍二さんのYouTubeチャンネルに出てくる霊能者の方の話なんですが
彼の話によると流水って除霊効果があるそうなんですよ
心霊スポットとか、強い負の念の溜まり場とかに行ってしまった場合は、滝行を受けるしか除霊方法がないのですが
単に「つかれたー」「うらやましーい」「いいなー」みたいな小さいレベルの負の念なら
風呂場に行き、頭をシャンプーして洗い流せば清められるそうです
一番は、一神教の国々のように「存在するわけないじゃん」と、いちいち気にしないのが一番効果抜群なのですが
600流す
よく「禊」で滝に打たれる行為がありますよね
あれ、単に推し潰されるような強い水圧で何かが変わった感覚になるみたいなんですが
霊能的にも、あながち効果があるようなんです
これは俳優の原田龍二さんのYouTubeチャンネルに出てくる霊能者の方の話なんですが
彼の話によると流水って除霊効果があるそうなんですよ
心霊スポットとか、強い負の念の溜まり場とかに行ってしまった場合は、滝行を受けるしか除霊方法がないのですが
単に「つかれたー」「うらやましーい」「いいなー」みたいな小さいレベルの負の念なら
風呂場に行き、頭をシャンプーして洗い流せば清められるそうです
一番は、一神教の国々のように「存在するわけないじゃん」と、いちいち気にしないのが一番効果抜群なのですが
キツキトウ
DONE2024/1/24見えるから、それがシンとは限らない。
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「世界に知らされず、世界が知ろうともせず、世界が知らない」世界の話。そんな話はこの世の日常の中でさえ転がっている。世界を知らないのは何方なのだろうか。
エブリスタの企画「三行から参加できる」用に新しく書いたものに「終煙怪奇譚」として書き足したもの。お題は「犬」。
終煙怪奇譚:「井の中のシン、大海知らず」.
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「……」
今日も見える。
神社の境内。御使い達が御座すその台座。その片側では今日もあれがちょこんと鎮座している。……本来の像は何処行ったんだ?
(あれ……犬だよな……)
吽と口を紡ぎ、どやっと誇らしげな犬が鎮座している。真っ白くてふわふわですらっとした到底石像とは思えない犬が其処に居る。
此処は幸住神社だ。そして御使いは狛犬である。犬ではない。ただ、この道を通る度に、犬を見かける度に、(その毛並みを撫でてみたい)と思ってしまっていた。
私は犬好きである。
「あ、早く行かないと」
急いで行かねば遅刻する。
書店員として今日もお勤めに行かねば。給与前で金欠なのである。
急ごうとしたその端で。
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「……」
今日も見える。
神社の境内。御使い達が御座すその台座。その片側では今日もあれがちょこんと鎮座している。……本来の像は何処行ったんだ?
(あれ……犬だよな……)
吽と口を紡ぎ、どやっと誇らしげな犬が鎮座している。真っ白くてふわふわですらっとした到底石像とは思えない犬が其処に居る。
此処は幸住神社だ。そして御使いは狛犬である。犬ではない。ただ、この道を通る度に、犬を見かける度に、(その毛並みを撫でてみたい)と思ってしまっていた。
私は犬好きである。
「あ、早く行かないと」
急いで行かねば遅刻する。
書店員として今日もお勤めに行かねば。給与前で金欠なのである。
急ごうとしたその端で。
キツキトウ
DONE2023/9/10虚の中の実。
思考の果てに、其処に「君」は「何が」残ると思う?
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お題はなし。前の「虚」繋がりで。
タイトルで括らないSSのつもりで書いていたけど、絵も描きたいなと思いつつ創作タイトル付けた。
気のせいだとは思いつつも、何かにもやっとしたから誰かに話したくなったのかもね、その人は。なんて。
終煙怪奇譚:「虚実」目をぱちぱちと瞬かす。
疲れているのかと思った。気のせいなのかと思った。幻覚でも見ているのかと思った。
部屋の隅、言いようもないくらい真黒いそれがじっと此方を見てくる。真黒なのに、なぜかこっちを見てると認識できて。しかもそれがじりじりとこっちに迫り来ている気がして。
だからもう眠る事にした。きっと気のせいなのだから。仕事続きで自分は疲れているからきっとそれが影響しているのだ。
「あ、よかった。やっぱり気のせいだったのか」
休日にそんな出来事があったのだと、同僚が言ってきたのだ。休憩時間も終わりかけ、さっきまで話のネタにと揚々と話していた語り手が、飲み物の缶を捨ててその場を立ち去っていく。
「……なぁ、あいつの後ろの黒いの何?」
1020疲れているのかと思った。気のせいなのかと思った。幻覚でも見ているのかと思った。
部屋の隅、言いようもないくらい真黒いそれがじっと此方を見てくる。真黒なのに、なぜかこっちを見てると認識できて。しかもそれがじりじりとこっちに迫り来ている気がして。
だからもう眠る事にした。きっと気のせいなのだから。仕事続きで自分は疲れているからきっとそれが影響しているのだ。
「あ、よかった。やっぱり気のせいだったのか」
休日にそんな出来事があったのだと、同僚が言ってきたのだ。休憩時間も終わりかけ、さっきまで話のネタにと揚々と話していた語り手が、飲み物の缶を捨ててその場を立ち去っていく。
「……なぁ、あいつの後ろの黒いの何?」
キツキトウ
DONE2023/9/10虚に入る虚。確かに其処にあったのだ。
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お題はなし。
欠伸した時(油断してるし)に何か飛び込んで来たら怖いなって。時々作業のお供にする怪談凸を聞きつつ、目を閉じながら欠伸した時にそう思って(情緒が迷子)。
欠伸する時は口に手を当てよう!(違うそうじゃない)
終煙怪奇譚:「うろ」自分はですね……眠くて少しだけ目を閉じたんですよ。それでですね、その時に欠伸も出たんです。目を閉じたまま、大きく口を開けて欠伸をしたんです。
そしたらですね、その途端ずぼっと口が埋まるほどに何かが入り込んで来たんです。びっくりして、咄嗟に目を開けた時にはなんっにも居なかったんですけどね。
自分、何を食べたんですかね……。
- 了 -
183そしたらですね、その途端ずぼっと口が埋まるほどに何かが入り込んで来たんです。びっくりして、咄嗟に目を開けた時にはなんっにも居なかったんですけどね。
自分、何を食べたんですかね……。
- 了 -
キツキトウ
DONE2023/8/18山の中で笑う。誰にも見られたくないから。
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お題ガチャ:https://odaibako.net/gacha/8955?id=20b52a0a6442401a96b515b882a609b2
息抜き書きもの2。
8/13が怪談の日だったの忘れてて、その日に何か投げれば良かったなと(少し前に呟怖絵また描こうかなと思ってはいた)。季節もの何時も遅刻する人です
終煙怪奇譚:「山笑」――自分は森や木々の中を歩くのが好きで、ふとした時に山を登り歩く事が多かったのです。
まぁ、本格的に登る人達のように、そう高い山を登る事は無いのですが。所謂ハイキングに近いのでしょうか。
基本的には低すぎず、それでいて高すぎない山へ向かい、森の中の空気を楽しむんです。
その日も知人と共に生きたい場所へ目星をつけ、森の中を進んでは景色を楽しんでいました。
ただ登りも半分を過ぎ、森深い中を知人から少し離れては進み、疲労を産み始めた身体を感じてはそろそろ沢が見えてくる筈なので、そこで休息を取ろうかと考えていたんです。
ふと辺りを見回しました。
淡い色の何かが木々に絡まっているのが見えたんです。
「何だろうか、自分の知らない植物でも絡んでいるのか」「ああ、絡まっているという事は蔦か何かなのだろうか?」と思いながらも後で知人とそれについて話したり、帰りがけにでもまた確認しながら行けばいいかと一先ず目的の場所まで向かう事にしました。
1561まぁ、本格的に登る人達のように、そう高い山を登る事は無いのですが。所謂ハイキングに近いのでしょうか。
基本的には低すぎず、それでいて高すぎない山へ向かい、森の中の空気を楽しむんです。
その日も知人と共に生きたい場所へ目星をつけ、森の中を進んでは景色を楽しんでいました。
ただ登りも半分を過ぎ、森深い中を知人から少し離れては進み、疲労を産み始めた身体を感じてはそろそろ沢が見えてくる筈なので、そこで休息を取ろうかと考えていたんです。
ふと辺りを見回しました。
淡い色の何かが木々に絡まっているのが見えたんです。
「何だろうか、自分の知らない植物でも絡んでいるのか」「ああ、絡まっているという事は蔦か何かなのだろうか?」と思いながらも後で知人とそれについて話したり、帰りがけにでもまた確認しながら行けばいいかと一先ず目的の場所まで向かう事にしました。
キツキトウ
DONE2023/6/10あの向こうでこんこんこん。貴方は何者?
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お題ガチャ「三題噺(ホラー)」:https://odaibako.net/gacha/8955?id=20b52a0a6442401a96b515b882a609b2
瞼も一種境だよなって思ったら、そういえば蟲師でそんな話があったなって。瞼の中で更に幕を下ろす話。蟲師のあの言い知れぬ空気感好き。よき。
終煙怪奇譚:「こんこんこん」こん
ほんの遊び心だったんだ。
こん、こん
狐の窓。
そんなものがあるって聞いて、試しに指で窓を作って、何がのぞけるかなって。
こんこんこん
窓の向こうで見えてしまったものに目を背けて。
こんこんこんこん
それから〝音〟が聞こえる様になってしまって。
コン、コンコンコンコンコンコンコン
ゴンッ
鈍い音がすぐ傍で生まれ、冷たい室内に響いては溶け込む。
動きに合わせて揺れる空気が波を立てていき、己の頬を撫で過ぎていく。
強く目を閉じ、帳落ちる暗闇に自分を突き落す。
また自分は目を背けてしまった。
コン、
- 了 -
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● お題
境界(鳥居、川、門 他)
繰り返し
目
三題噺(ホラー)
https://odaibako.net/gacha/8955id=20b52a0a6442401a96b515b882a609b2
416ほんの遊び心だったんだ。
こん、こん
狐の窓。
そんなものがあるって聞いて、試しに指で窓を作って、何がのぞけるかなって。
こんこんこん
窓の向こうで見えてしまったものに目を背けて。
こんこんこんこん
それから〝音〟が聞こえる様になってしまって。
コン、コンコンコンコンコンコンコン
ゴンッ
鈍い音がすぐ傍で生まれ、冷たい室内に響いては溶け込む。
動きに合わせて揺れる空気が波を立てていき、己の頬を撫で過ぎていく。
強く目を閉じ、帳落ちる暗闇に自分を突き落す。
また自分は目を背けてしまった。
コン、
- 了 -
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● お題
境界(鳥居、川、門 他)
繰り返し
目
三題噺(ホラー)
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キツキトウ
DONE2023/6/1そんな夏の日。背後にはお気を付けを。
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お題ガチャ「三題噺(ホラー)」:https://odaibako.net/gacha/8955?id=20b52a0a6442401a96b515b882a609b2
書くって難しい(何時もの事)。
終煙怪奇譚:「そんな夏の日」遠い場所からわざわざ此処まで来たのだ。
だから自分もと思っていたが、身体半身を照り付ける暑く熱を持つ陽射しと、沈め浮かべる身に降りかかる海の冷たさで酔いそうになる。頭がグラグラとし、風に煽られ揺らされた波が身へ押し寄せてくる。
楽しそうに遊ぶ友人達を眺め、此処へ来るまで過ごした出来事にも想いを廻らせながらどうするかと思案する。いっそ身を潜らせて温度を合わせてしまおうか。或いは再び
けれど刺す様な悪寒が熱い筈の半身に雪崩れ込む。
背後に、
何か
いる
皆目の前で悠々と泳いでは楽しそうに戯れている。此処へと来たのは自身と友人達だけの筈だった。湧き立ち続ける油と焦げ燃ゆる匂いにうんざりして、こんな夏日、そろそろ皆で此へ往くかと話し合って。
929だから自分もと思っていたが、身体半身を照り付ける暑く熱を持つ陽射しと、沈め浮かべる身に降りかかる海の冷たさで酔いそうになる。頭がグラグラとし、風に煽られ揺らされた波が身へ押し寄せてくる。
楽しそうに遊ぶ友人達を眺め、此処へ来るまで過ごした出来事にも想いを廻らせながらどうするかと思案する。いっそ身を潜らせて温度を合わせてしまおうか。或いは再び
けれど刺す様な悪寒が熱い筈の半身に雪崩れ込む。
背後に、
何か
いる
皆目の前で悠々と泳いでは楽しそうに戯れている。此処へと来たのは自身と友人達だけの筈だった。湧き立ち続ける油と焦げ燃ゆる匂いにうんざりして、こんな夏日、そろそろ皆で此へ往くかと話し合って。