nekotakkru
PASTpixivより移動中つまりはそういうこと香水瓶の中の液体を光にかざすと薄く色付いた液体がとぷんと揺蕩う。角度によっては紫や水色、赤にも見えてその不思議な光景にプロイセンは素直に、綺麗だ、と思った。
「これが例の薬なんだな?」
確認するように視線をやれば、優雅に紅茶を嗜んでいたイギリスが誇らしげに鼻を鳴らす。
「ああ。頼まれていた通りに作ったぜ。ま、この俺にかかればそんなもの朝飯前で…」
「ケセセセ!良くやった!俺様名誉賞をくれてやる!」
「最後まで聞けよばかぁ!あとそんな賞いるか!」
眉を釣り上げながら喚くイギリスを無視してプロイセンはもう一度液体を揺らす。ニタリと口角を上げるその顔はいたずらを思いついた子どもを通り越してもはや悪魔のそれだった。
4374「これが例の薬なんだな?」
確認するように視線をやれば、優雅に紅茶を嗜んでいたイギリスが誇らしげに鼻を鳴らす。
「ああ。頼まれていた通りに作ったぜ。ま、この俺にかかればそんなもの朝飯前で…」
「ケセセセ!良くやった!俺様名誉賞をくれてやる!」
「最後まで聞けよばかぁ!あとそんな賞いるか!」
眉を釣り上げながら喚くイギリスを無視してプロイセンはもう一度液体を揺らす。ニタリと口角を上げるその顔はいたずらを思いついた子どもを通り越してもはや悪魔のそれだった。
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PASTpixivより移動中ごっこ遊び「それは必要なのでしょうか」
言葉にした後、オーストリアはしまったと口を閉じた。言葉を向けられたプロイセンは、今まさに名ばかりの避妊具を装着している真っ最中の格好で止まる。なんだか間抜けに見えるその格好に加え、出た声も、は?というなんとも間抜けな一言だった。
分厚い雲が空を覆い、冷たい雨が傘を伝う。しとしとと雨が降り続く空の下に、天気と同じくして頬を濡らす家族がいた。皆が皆、黒い服に身を包み黒い傘をさし暗い顔で物言わぬ墓石に花を手向ける。大人達は口を噤んで涙を流す中、代わりとでも言うように子供たちは声を上げて泣いていた。
まるで絵画のような風景だと、雫が滴る硝子からオーストリアは眺めていた。いつ作ったのかも忘れたオーダーメイドのスーツはしとどに濡れて、来た時よりも濃い色に変色していた。整えていた髪は長く雨に打たれていたせいですっかり崩れてしまっている。それを直す手間すら惜しいほどに、オーストリアは遠くから家族たちを見守っていた。
3644言葉にした後、オーストリアはしまったと口を閉じた。言葉を向けられたプロイセンは、今まさに名ばかりの避妊具を装着している真っ最中の格好で止まる。なんだか間抜けに見えるその格好に加え、出た声も、は?というなんとも間抜けな一言だった。
分厚い雲が空を覆い、冷たい雨が傘を伝う。しとしとと雨が降り続く空の下に、天気と同じくして頬を濡らす家族がいた。皆が皆、黒い服に身を包み黒い傘をさし暗い顔で物言わぬ墓石に花を手向ける。大人達は口を噤んで涙を流す中、代わりとでも言うように子供たちは声を上げて泣いていた。
まるで絵画のような風景だと、雫が滴る硝子からオーストリアは眺めていた。いつ作ったのかも忘れたオーダーメイドのスーツはしとどに濡れて、来た時よりも濃い色に変色していた。整えていた髪は長く雨に打たれていたせいですっかり崩れてしまっている。それを直す手間すら惜しいほどに、オーストリアは遠くから家族たちを見守っていた。
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PASTpixivより移動中普→墺←洪
隣の芝は昔はキラキラしたものが苦手だった。
いつも野山を駆け回って、馬の乗り方や弓の使い方を学び、泥だらけになるのが日常で、それが毎日楽しかった。服が汚れるのも構わなかったし傷を負うのだって、痛かったけど誇りに思っていた。言葉遣いだって勇ましく、いつかは大地を統べることだって夢見ていた。
ところが、気がつけば体は想像と違う成長を遂げていくし、周りの接してくる態度も変わった。走り回ることは許されず狩りに出るのも野蛮だと言って止められて、あの頃は自由を奪われたと思った。代わりに充てられたのは今まで見たことのないような服。赤や黄色で目がチカチカしたしふんわりとした形は動きにくい。何より恥ずかしくて何度も着るのを抵抗した。それだけじゃなく、嗜みの一つだと言われて宝石を首や耳に飾るのも鬱陶しくて仕方なかった。なんで俺がこんなことをしなくちゃいけないと、食ってかかったこともある。けれどあの人はいつも静かに諭すように述べるだけだった。
5028いつも野山を駆け回って、馬の乗り方や弓の使い方を学び、泥だらけになるのが日常で、それが毎日楽しかった。服が汚れるのも構わなかったし傷を負うのだって、痛かったけど誇りに思っていた。言葉遣いだって勇ましく、いつかは大地を統べることだって夢見ていた。
ところが、気がつけば体は想像と違う成長を遂げていくし、周りの接してくる態度も変わった。走り回ることは許されず狩りに出るのも野蛮だと言って止められて、あの頃は自由を奪われたと思った。代わりに充てられたのは今まで見たことのないような服。赤や黄色で目がチカチカしたしふんわりとした形は動きにくい。何より恥ずかしくて何度も着るのを抵抗した。それだけじゃなく、嗜みの一つだと言われて宝石を首や耳に飾るのも鬱陶しくて仕方なかった。なんで俺がこんなことをしなくちゃいけないと、食ってかかったこともある。けれどあの人はいつも静かに諭すように述べるだけだった。
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PASTpixivより移動中。某曲イメージで殴り愛事後描写あり
その愛は痛みを伴う鼻につくのは硝煙と鉄の臭い。鼓膜を震わせる爆音は聴覚を鈍らせる。砂塵は視界を奪い、数メートル先すら見えない。騒音に負けじと声を出す指揮官の首は次の瞬間には胴体と別れ、二足歩行していた人間は血飛沫と共にただの肉塊へと変わった。
怒号や銃弾が飛び交うこの戦場では誰もが武器を手に取り命を奪いあう。しかし、対峙する両軍の主、いや祖国はどう言うわけか原始的にも拳のみを構えていた。
「ははは、死ぬほど似合わねぇなお坊ちゃん」
高笑いする黒の軍主、ギルベルトに対して白の軍主、ローデリヒは淡い紫の瞳で睨み返す。普段のお淑やかで上品な身の振る舞いを思えば、野蛮にも戦う意志を見せるその姿はあまりにも不釣り合いで滑稽だ。自分に似合わないことは重々承知しているが、だからといってやめるわけにはいかない。ここは戦場で、目の前にいるのは宿敵なのだから。
4384怒号や銃弾が飛び交うこの戦場では誰もが武器を手に取り命を奪いあう。しかし、対峙する両軍の主、いや祖国はどう言うわけか原始的にも拳のみを構えていた。
「ははは、死ぬほど似合わねぇなお坊ちゃん」
高笑いする黒の軍主、ギルベルトに対して白の軍主、ローデリヒは淡い紫の瞳で睨み返す。普段のお淑やかで上品な身の振る舞いを思えば、野蛮にも戦う意志を見せるその姿はあまりにも不釣り合いで滑稽だ。自分に似合わないことは重々承知しているが、だからといってやめるわけにはいかない。ここは戦場で、目の前にいるのは宿敵なのだから。
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PASTpixivより移動中遅れてきた拾い物先に動いたのはハンガリーだった。普段とは違う、控えめながらに上品なドレスにも関わらず、どこに隠していたのか現れた(それは普段着からでも言えることだが)、愛用のフライパンを片手に目の前の敵へと向かっていく。振り上げたそれは敵と認識されている相手、プロイセンへ真っすぐ下ろされた。が、敢えなくそれは避けられ、更に追撃に備え距離を空けられた。
「ケセセそんなの当たらねぇよ怪力女」
「今日こそは覚悟しなさい鳥男」
罵声を飛ばしながら空けた間を一気につめる、流れるような連撃はしかしぎりぎりのところで躱される。それでも、顔に笑みを浮かべてはいるがプロイセンも余裕があるわけではない。あのフライパンの威力は知っている、多分今まで一番味わってきた、何度となく『死んだかも』と思ったことだろう、気を抜けばやられる、殺られる。
3688「ケセセそんなの当たらねぇよ怪力女」
「今日こそは覚悟しなさい鳥男」
罵声を飛ばしながら空けた間を一気につめる、流れるような連撃はしかしぎりぎりのところで躱される。それでも、顔に笑みを浮かべてはいるがプロイセンも余裕があるわけではない。あのフライパンの威力は知っている、多分今まで一番味わってきた、何度となく『死んだかも』と思ったことだろう、気を抜けばやられる、殺られる。