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    nekotakkru

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    nekotakkru

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    pixivより移動中。某曲イメージで殴り愛
    事後描写あり

    #腐向けヘタリア
    hetaliaForRotten
    #普墺
    #水と油

    その愛は痛みを伴う鼻につくのは硝煙と鉄の臭い。鼓膜を震わせる爆音は聴覚を鈍らせる。砂塵は視界を奪い、数メートル先すら見えない。騒音に負けじと声を出す指揮官の首は次の瞬間には胴体と別れ、二足歩行していた人間は血飛沫と共にただの肉塊へと変わった。
    怒号や銃弾が飛び交うこの戦場では誰もが武器を手に取り命を奪いあう。しかし、対峙する両軍の主、いや祖国はどう言うわけか原始的にも拳のみを構えていた。

    「ははは、死ぬほど似合わねぇなお坊ちゃん」

    高笑いする黒の軍主、ギルベルトに対して白の軍主、ローデリヒは淡い紫の瞳で睨み返す。普段のお淑やかで上品な身の振る舞いを思えば、野蛮にも戦う意志を見せるその姿はあまりにも不釣り合いで滑稽だ。自分に似合わないことは重々承知しているが、だからといってやめるわけにはいかない。ここは戦場で、目の前にいるのは宿敵なのだから。

    「なんなら、後ろの剣を取りに行くまで待っててやろうか?俺様は紳士だからな!」

    ローデリヒの後方には無惨にも折れ、墓標のように地面に突き刺さる剣の柄が見える。それは相手も同じだが、ギルベルトの剣は自らが刺し、尊厳を誇るように傷がなかった。あくまでも同じ状態を演出しているのは敬意ではなく、安い挑発からだ。
    口元の血を拭い、息を吐く。背筋が寒くなるような冷笑を浮かべ、ローデリヒは穏やかに述べた。

    「口ばかり達者ですね。それとも、怖くて動けないのですか、小鳥さん?」

    紅の瞳が見開かれ、歪な唇がさらに弧を描く。一瞬の静寂の後対立する黒と白が駆け出し、衝突した。









    ばちりと音がするほど目を広げ辺りの情報を得る、まず目に入ったのは見慣れた天井と簡素な灯り、続いて近すぎて影になっている自分の腕だった。額に乗っているそれをゆっくりと上げてみる、電流が流れたような痛みが肩まで走った、思わず顔をしかめる。そのまま腕を放り出せば指先が何か柔らかい物に触れた。絹糸のようなそれを少し引いて、瞳だけを動かし何を掴んでいるのかを確認する、チョコレートを思わせる焦げ茶色のそれは毛髪で、髪の主は産まれたままの姿に傷を負って横たわっていた。相手を確認してようやっとギルベルトは状況を把握する。

    「あー...。誰が片付けると思ってんだよ、くそ坊ちゃんめ。」

    絡まった毛先を乱暴に引っ張るとローデリヒの眉間にしわが寄った。



    ギルベルトとローデリヒは自他共に認める犬猿の仲だ。顔を見れば罵り合い、近付こうものなら嫌がらせをし、周りなど気にせず二人だけの険悪な空間を作り出す。他の介入を許さない雰囲気を止めるのは、本人は望んでいないがギルベルトの弟、ルートヴィッヒの義務ともなった。
    しかし、そう都合よくルートヴィッヒがいるわけではない。

    始まりはいつものようにお互いを罵倒するところからだった。一を吐けば十を返し、更にその倍を返す。加えて虫の居所が悪かったのか舌戦は熱を増していった。先に手を出したのはギルベルトだ。ローデリヒの襟元を掴み上げ壁に押しやる。追いやられたローデリヒは不快を顔に表すだけで抵抗はしなかった、それがギルベルトの神経を逆なでする。拳を振り上げローデリヒの白い頬へと叩き込むと、吹き飛んだかと思う程に首が回った。口の中が切れたのか唇の端から一筋の血が伝う、歯が欠けなかったのはローデリヒが打たれ強いからではなく、かつては自分も戦うための国だったのだという誇りを噛み締めたおかげだ。ゆっくりと首を正面に戻せば紅い双眸が高揚している。その顔面へ、今度はローデリヒが裏打ちを当てた。パンッという乾いた音は威力こそないものの、相手の自尊心を傷つけるのには十分だった。ギルベルトのこめかみに青筋が浮かぶ。

    「てめ…、ぶっ殺してやる!」
    「やってごらんなさい!」

    そこからは拳と平手の応酬だった。大振りで外れやすいが当たると致命的な拳、威力ほど微々たるものだが確実にプライドを傷つけていく平手。やはりというべきか、軍配は拳に上がった。ローデリヒは再び、床へと場所を変えてギルベルトに縫い付けられる。身長こそさほど変わらないものの、体格の差はそのまま力の差になり、馬乗りになられれば簡単に抜け出すことはできない。ギルベルトの腕はローデリヒの腕を押さえ、さらにもう一本の腕は首に手をかけている。それでも抵抗を諦めないローデリヒは己の首にかかっている手を振りほどこうと必死だった。

    「いい加減にしろよ!首へし折られたいのか!」
    「あなたこそ、いちいち私に突っかかってこないでください!」
    「今日こそはどっちが上か教えてやる!」
    「力でしか誇示できないなんて昔から成長が見られませんね、飼い犬の方がよほど聡明ですよ!」

    ぶちっ、と何かが切れる音がしてローデリヒの首に回された手に力がこもる。突然の圧力に目を見開いて、ローデリヒが酸素を求める。このまま締めあげれば数十秒でこと切れるだろう、だが特別な存在であるギルベルトたちは簡単には死ねない。少し力を緩め、取り込んだ酸素にローデリヒがむせている間に、腕の拘束を外しシャツへと手をかける。そのまま一気に引き裂けばボタンがはじけとんだ。

    「なっ…。何するんです!まだ着れたのに!」
    「うるせぇ!怒るとこそこかよ貧乏貴族!」

    さらけ出した胸板、そこにある突起を強く抓る。痛さに顔を顰めた一瞬、ローデリヒの口から甘さを含んだ吐息が漏れる。しまったという顔でギルベルトを見れば口角がゆっくりと上がっていった。見せてはいけない隙を見せた自分に憤りを感じ、奥歯を噛む。

    「そうだよ、その顔だよ。そういう顔が坊ちゃんにはお似合いだぜ」
    「悪趣味な。品性を疑いますね」
    「なんとでも言えよ。すぐに懇願させてやる」
    「誰が貴方なんかに」

    滑らせた手はそのまま下へ。あとは獣の食いあいのように、本能のままにお互いを傷つけ貪りあった。命の奪い合いはできなくとも自尊心を奪うことは出来る。寧ろ、死を知らない体には屈服こそがそれに値する。今の時代に生死の駆け引きなんて馬鹿げているのに、それでもなお争いが続くのは、相手に負けたくない、その一心。主導権を握ることの多いギルベルトは蹂躙するかのように力強く強引に、受身に回るローデリヒは凛として決して媚びぬように振舞った。当然として、お互い譲らないのだから決着のつきようもない。大抵は同時に力尽きるのが常だ。
    そんな不毛な争いをかれこれ何十年と続けた
    だろう。





    「早くしてください。風邪を引いてしまいます」
    「そう思うなら自分で探せよ」
    「剥ぎ取ったのはあなたでしょう」

    傷だらけの体にシャツを羽織り、足を組みながらローデリヒが催促する。その偉そうな姿に舌打ちをしながらも渋々ギルベルトが探すのは、彼から強奪したパンツだ。といっても流れ上脱がせて放り投げてしまったのだが。

    「見つからねーからこれ履いていけよ」
    「死んでも嫌です」

    自分の履いているパンツのゴム部分を少し広げながら提案するが、即座に却下されたことにギルベルトが苦い顔をした。頑なに拒むローデリヒの頑固さは嫌という程知っている、見つけるまでは梃子でも動かない気だろう。体力を使い果たした今ではまた争うのは億劫で、なんとか諦めてもらう口車を模索する。まだ部屋の片付けが残っているというのに、なんて面倒臭い奴なんだとギルベルトは心底うんざりしながら探すふりを続けた。

    「いい加減諦めてそのまま帰れよ。どうせ隣の部屋なんだし、お前片付け手伝う気ないんだろ」
    「ここはあなたの部屋でしょう。なぜ私が手伝うんです」
    「……。じゃあいつまでいる気なんだよ馬鹿眼鏡」
    「そうですね。…いつまででしょうか」

    ぽつりとこぼした言葉に先程までの棘がなくて、ギルベルトがローデリヒを盗み見る。ローデリヒはまっすぐとギルベルトを見据えながら再び言葉を投げた。

    「私達は、いつまでこのような関係を続けるのです?」

    問いかけに感情の起伏はない。ただ単純に、いつまで続くのかを尋ねただけのその声は淡白だった。ここで終了と言えばローデリヒは素直に納得するだろう。決断を委ねたのは優しさからではなく、ギルベルトのしつこさを知っているからだ。尋ねられたギルベルトは、手に持っていた服をその場に捨ててぐるりと部屋を見渡した。普段の粗暴からは想像もできないほど整えられていた部屋は、物がなぎ倒され雑然としており、シンプルなベッドはお互いの血と欲望の染みで汚れている。酷い有様なのは確かだが、血肉や死臭が漂っていた昔に比べれば随分可愛いものだと鼻で笑った。
    大股にローデリヒに近づいて腕を組み見下す。見下された方も、負けじと相手を見据えていた。 ギルベルトの手が乾いたローデリヒの唇をなぞる、なんでもないようにローデリヒはそれを受け入れた。

    「その提案は、お前が負けを認めて俺様の下になるってことだよな」
    「このお馬鹿さん、何をどう解釈したらそうなるんです」
    「認めちまえば楽になるぜ?そして俺様を褒めろ讃えろ!」
    「生憎と、そう素直な性格ではありませんので」

    一度だけ、ルートヴィッヒに説教の中で尋ねられたことがあった。過去に諍いがあったとはいえ、なぜ未だにいがみ合っているのかと。二人は同じタイミングでただ一言、気に入らないから、とだけ言ってルートヴィッヒを困らせた。だが、その一言に全てが込められている。自分を認めないから気に入らない、自分を受け入れないから気に入らない、何よりも、狂おしいぐらいの思慕を大嫌いな相手に抱いている自分自身が気に入らないのだと重々承知している。だからこそ、この戦いは引けない。引くわけにはいかない。

    「はっ、いつかそのお綺麗な顔をぐしゃぐしゃに泣かせてやる」
    「それはそれは。返り討ちにしてあげますよ」

    ギルベルトの手を払いのけ暫く視線が交差する。その視線はいつぞやの戦場で対峙した時を思わせた。言葉はすべて暴言に、心はすべて暴力として表現してきた。それは今でも、そしてこれからも変わらないのだと理解して喉の奥から笑いが漏れる。



    「ところで」
    「あ?」
    「あなたが履いているそれ、私のじゃありませんか?」

    指差しで指摘されたパンツをギルベルトがまじまじと見る。何かに気付いたのか顔を上げると、憎たらしい笑顔を浮かべた。はっとしてローデリヒが手を伸ばすが、それよりも早くギルベルトの体が逃げる。

    「さっきこのパンツは死んでも履きたくないって言ったよなぁ?」
    「それはあなたのパンツだと思ったからです!お返しなさい!」
    「やなこった!」
    「あ、こら、お馬鹿!」

    逃げ回るギルベルトと追うローデリヒ。高笑いと怒声が延長戦の開始を告げた。
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