Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    nekotakkru

    @nekotakkru
    もしものための保管場所。好きなものを書いていきたい

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 33

    nekotakkru

    ☆quiet follow

    pixivより移動中

    #ヘタリア腐向け
    hetaliaRot
    #水と油
    #普墺

    つまりはそういうこと香水瓶の中の液体を光にかざすと薄く色付いた液体がとぷんと揺蕩う。角度によっては紫や水色、赤にも見えてその不思議な光景にプロイセンは素直に、綺麗だ、と思った。

    「これが例の薬なんだな?」

    確認するように視線をやれば、優雅に紅茶を嗜んでいたイギリスが誇らしげに鼻を鳴らす。

    「ああ。頼まれていた通りに作ったぜ。ま、この俺にかかればそんなもの朝飯前で…」
    「ケセセセ!良くやった!俺様名誉賞をくれてやる!」
    「最後まで聞けよばかぁ!あとそんな賞いるか!」

    眉を釣り上げながら喚くイギリスを無視してプロイセンはもう一度液体を揺らす。ニタリと口角を上げるその顔はいたずらを思いついた子どもを通り越してもはや悪魔のそれだった。








    イギリスの家を飛び出して向かった先はプロイセンの大敵のいる音楽の都だった。狙うターゲットは二人。この都の主であるオーストリアと、その男に献身的なまでに仕えるハンガリーである。古くからの因縁と、弟であるドイツの代わりに、迷子になっているオーストリアを幾度となく回収に来たこともあって、 彼の行動パターンと町の地図は既にプロイセンの頭の中に入っていた。そして、オーストリアと共に行動することが多いハンガリーも高確率で出会えるだろう。時計を見て時間を確認し、今どこにいるか予想を立てる。昼の二時を少し過ぎた今なら、恐らく町の北にある菓子屋で本日の茶菓子を物色しているに違いない。見当をつけたところでプロイセンはそちらに足を向けた。
    予想通り、菓子屋と道路を挟んだ向かい側で様子を伺っていると、程なくしてターゲットの姿が現れた。加えて、朗らかに笑うイタリアと控えめなリヒテンシュタインの姿も見える。どうやら今日はお茶会を開くのだろう、既に買い物を済ませたらしく、オーストリアとイタリアの腕には大きな紙袋が抱かれていた。温かな雰囲気とは対照的に、一人楽しすぎることを噛み締めながら、絶好の機会にプロイセンの目が見開かれる。店から数メートル離れたところでプロイセンは背後から猛スピードで襲いかかった。

    「ケーッセッセッ!くらえ!!」
    「え?きゃあ!」
    「なっ!?」

    イタリアとリヒテンシュタインの間をすり抜けると、標的である二人に瓶の中身を吹きかける。思わぬ奇襲に水滴を振り払いながらハンガリーが現行犯を睨みつけた。折角の楽しい時間を邪魔されたことに加え、その相手が憎きプロイセンだと認識すると彼女の普段の愛らしい顔がみるみる変化していった。その怒気に思わずプロイセンもたじろいでしまう。プロイセンの後ろでは、状況が飲み込めないイタリアとリヒテンシュタインがオロオロと取り乱していた。

    「あんた、命捨てる覚悟あるんでしょうね!?」
    「け、ケッセッセ!やれるもんならやってみろ!」

    言い終わらないうちにハンガリーが取り出したフライパンが空を切った。その音から如何に鋭く重い一撃なのか容易に想像出来る。引き攣った笑みを浮かべ、冷や汗が顎を伝い、失敗だったのかと後悔が頭をよぎったその刹那、フライパンがプロイセンの頭上わずか数センチ上でピタリと止まった。衝撃波に髪がなびき背中を寒いものが走るが痛みはない。恐る恐るプロイセンがハンガリーの顔を覗き込むと、そこには 顔を真っ赤にしながら戸惑いの表情を浮かべる乙女がいた。

    「あ、あれ?なんで…!?」

    どういう訳か力が入らないらしいハンガリーが、戸惑いながら問いただすようにプロイセンを睨みつける。だが、視線が合うとさらに顔を赤くしながら数歩後ろへと退いてしまった。表情を隠すように頬に手を当てているが、相手を伺う瞳には明らかに憧憬が滲んでいる。
    見たことのないハンガリーの反応にプロイセンは確信した。成功だ!
    高笑いを響かせながら威圧的にハンガリーに詰め寄ると、悔しさと焦燥を含ませながらさらに数歩、後ずさった。

    「あんた、何したの!?」
    「なあに、ちょっとした実験だよ。俺様発案の超絶素晴らしいスペシャルな薬の、なぁ!」

    先程の香水を掲げながらプロイセンが胸を張る。薬、という言葉にハンガリーの警戒心が更に強くなるが、その気持ちとは裏腹にフライパンはすっかり下ろされていた。片手は胸の中心部を抑え、浅い呼吸を繰り返すが目眩や痺れといった症状はない。しかし、鼓動の方はプロイセンを見るとより一層早くなるばかりだった。
    早鐘のように高鳴る心臓にハンガリーはある感覚を錯覚する。まさか、これは。

    「ハンガリー、どうしました?」

    いつもとは違う反応にオーストリアが問いかける。肩を叩いてみると、体を震わせながらハンガリーが振り返った。その顔は困惑を混ぜながら赤く色付いている。
    どうにもおかしいハンガリーの様子に原因であるプロイセンを睨む。最大の敵を退けたと、勝ち誇った表情を見せる相手に苛立たしさを覚えながら、毅然とした態度でオーストリアが問いかけた。

    「その薬、とやらはいったい何なのですか」

    ハンガリーをも伏せてしまうような薬とは…。オーストリアに緊張が走る。勝利を確信した途端に饒舌になるのは昔からのプロイセンの癖だ。喉の奥で笑いながら、恐らくずっと自慢したかったのだろう、薬の全貌が明かされた。

    「これは俺様が考えに考え辿り着いた、究極かつ最強の薬!そう、『惚れ薬』だ!!」

    ばぁん、と音がしそうな発表とは裏腹に、あまりにも予想していなかった薬の名前が飛び出して再びオーストリアの時が止まる。聞き間違いかと思い、訂正を待ったがプロイセンは舞台役者のように朗々と語り出した。

    恋愛感情とは、一種の催眠状態であり相手を思えば思うほど視野が狭まり意中の人物しか見えず、その者の言葉しか入らなくなる。 これをどこぞの国が言い換えれば愛の奴隷などと歯の浮く台詞になるのだろうが、 つまりはその効果が高ければ高いほど従順な下僕ができるということだ。調教など一切必要とせず、簡単に相手を従えてしまうその感情に気付いた時、プロイセンに一つの名案が浮かんだ。

    対戦相手が自分に恋愛感情を抱けば倒すどころか主導権すら手に入れることが出来るのでは、と。

    問題はその恋愛感情にある。好意というものは直感的に容姿から入るものもあれば、長い年月をかけて築きあげるものでもある。しかし、後者だと時間ばかりがかかってしまうので、それじゃあ意味がない。
    では、本能の方を刺激してみたらどうだろうか。
    フェロモンを使えば強制的に本能の部分を刺激することが出来るはず。加えて、自称魔法使いのイギリスの力を借りればその効果を底上げすることも出来るだろう。

    「つまりこれは、俺様の溢れ出るフェロモンから出来た最強最高の惚れ薬ってわけだ!さすが俺様、褒めたっていいんだぜ?」

    いやらしく口角を上げながら見下したようにオーストリアを見る。先程のハンガリーと同様、赤面して逃げ出すか、或いは跪いて敬愛の目を向けるか。普段の澄ましたオーストリアの表情がどう変わるのかをこの目に焼き付けようと、プロイセンが距離を縮めた。
    ところが、いつまでたっても紫紺の瞳がそらされることは無い。真摯に見つめられることによってプロイセンの方がたじろいでしまう。

    「……お前、何ともないのかよ?」
    「ええ。別に何ともありませんが?」

    オーストリアの返答にプロイセンの額から汗が流れる。思わず薬を凝視して効果を疑う。プロイセン、と声をかけられ振り返れば心配そうなイタリアの顔が見えた。一瞬の躊躇いのあと、すまんと声をかけて瓶をふりかける。傍らにいたリヒテンシュタインにまで被害が及んだが、なりふり構ってはいられない。虫が潰れたような声をあげ、何するんだよぉと猫のように顔を擦るイタリアに比べ、リヒテンシュタインは眉を下げつつもあくまでも上品に雫を払っていた。

    「ど、どうだ二人とも!俺様のことどう思う?特にイタリアちゃん!」
    「ヴェ?どうも何も、プロイセンはプロイセン……あれ?」

    普段から血色の良いイタリアの顔が少しずつ色味を増していく。女性を口説く時には機関銃のように舌の回るあのイタリアが、今では何故か照れたように俯いて言葉を探しているようだった。方やリヒテンシュタインも同じく、陶器のような白い肌に朱色がじわじわと広がっている。初めての感情に戸惑いが隠せないのか目には水の膜が張っていた。
    確実に効いている。そう実感させるものの、オーストリアはいつもと変わりがない。想定外なことは焦りを産み、こうなれば量の問題だと全部を振り掛けるつもりで瓶の蓋を外す。大きく振りかぶった時、プロイセンの後頭部に硬い何かが突きつけられた。

    「貴様……リヒテンシュタインに何をした」

    振り向かなくても分かる、硬い筒状のそれ。地の底から響くような声に何よりリヒテンシュタインがいるということは、当然彼も一緒だろう。
    失念していたプロイセンの顔が青ざめる。考えつく限りの言い訳は開口と共にスイスの銃口によって塞がれた。










    ――――――――――――――

    『はぁ?薬が効かなかったって?』
    「おう。お陰でえらい目にあったじゃねーか…」

    ブッスリと頬を膨らませながらプロイセンが不満をぶちまける。その頬にはガーゼが当てられ、腕には包帯と松葉杖、足にも同じく包帯が巻かれ体中は擦過傷によって赤くなっていた。
    受話器の向こうでは今回の計画の協力者であるイギリスが、相変わらず紅茶を飲んでいるのか陶磁器の当たる音が聞こえる。呆れたように息を吐きながら、少し怒っているのか刺々しい声が耳をさした。

    『馬鹿言えよ、俺の魔術は世界一なんだ。失敗するわけない』
    「でも現に効かなくて…!」
    『あのな、お前が注文してきたのは“自分に強制的に惚れさせる薬”だろ?だから他の奴らには効いたんじゃねぇか』
    「は?」
    『つまり、お前に惚れてない奴にはちゃんと効いてたんだろ?逆に効かなかったって奴はもうその状態ってことだ。だから、そいつはもうお前に惚…』

    ガチャンッと、叩き割るように受話器を切る。リビングの方からうるさいと一喝されたが今のプロイセンの耳には届かない。イギリスに言われた言葉をゆっくりと反芻する。

    強制的に惚れさせる薬。
    それが効かないということは既にその状態であるということ。
    あの中で唯一効かなかったのはオーストリア。
    それはつまり、
    つまり―――。















    「どうした兄さん。顔が赤いぞ?」

    電話の前で蹲りながら、何やら悶えている兄にドイツが尋ねる。
    頭から湯気を出しつつもなんでもないと答える兄に、ドイツは疑問符を浮かべながらそこにいては電話が出来ないと一蹴した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works