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    nekotakkru

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    #ヘタリア腐向け
    hetaliaRot
    #水と油
    #普墺

    ごっこ遊び「それは必要なのでしょうか」

    言葉にした後、オーストリアはしまったと口を閉じた。言葉を向けられたプロイセンは、今まさに名ばかりの避妊具を装着している真っ最中の格好で止まる。なんだか間抜けに見えるその格好に加え、出た声も、は?というなんとも間抜けな一言だった。












    分厚い雲が空を覆い、冷たい雨が傘を伝う。しとしとと雨が降り続く空の下に、天気と同じくして頬を濡らす家族がいた。皆が皆、黒い服に身を包み黒い傘をさし暗い顔で物言わぬ墓石に花を手向ける。大人達は口を噤んで涙を流す中、代わりとでも言うように子供たちは声を上げて泣いていた。
    まるで絵画のような風景だと、雫が滴る硝子からオーストリアは眺めていた。いつ作ったのかも忘れたオーダーメイドのスーツはしとどに濡れて、来た時よりも濃い色に変色していた。整えていた髪は長く雨に打たれていたせいですっかり崩れてしまっている。それを直す手間すら惜しいほどに、オーストリアは遠くから家族たちを見守っていた。

    「もっと近くに行かなくていいのかよ」

    不意に影がさして雨が止んだ。振り返れば仄暗い景色とは真逆な程、明るい銀髪がオーストリアに傘を向けている。家族と同じように黒い服に身を包んだプロイセンの問いに、オーストリアは静かに首を振った。

    「コーヒー店の主人で、何年も贔屓にさせて頂いてたんです。……このような天気の日でも爽やかな気分になる、いい豆をいつも仕入れてくれていました」
    「そうか。……もしかして昨日の朝のやつか?」
    「ええ」
    「なるほど。そりゃ残念だな」

    遠くの方で雷が呻いている。雨はこれから更に強くなるのだろう、家族たちは名残惜しみつつも墓石を後にした。人がいなくなってから再びプロイセンが近くに行くことを促したが、それでもオーストリアは首を振った。



    玄関で軽く水滴を払ってからシャワーを、と声をかけてバスルームへ向かう。おう、と短く返しプロイセンはキッチンへと向かった。我が物顔で部屋を進むプロイセンに、ここは私の家ですよと怒っていた頃が懐かしい。思わず苦笑いをこぼす。
    脱ぎにくい喪服を更に時間をかけて脱いでいく。動作一つ一つをこなしながら故人との思い出を振り返った。目頭を熱いものがこみ上げてくるの感じ、ゆっくりと瞼を閉じる。溢れてくる前に熱いシャワーを浴びた。

    リビングへ向かうとソファに腰掛けながらプロイセンが待っていた。特に何をするでもなくぼんやりと外を眺めている。予想通り雨足は強くなっており、水滴が窓を強かに打ち付けていた。ソファの前のローテーブルには湯気を立てたカップが置かれている。何も言わずそのカップのあるところへ座れば、ようやくプロイセンはオーストリアに気付いたようだった。
    いただきます、と声をかけてカップに口をつける。鼻を抜けるコーヒーの香りはまさに故人の品だった。

    「やはり美味しいですね」
    「そりゃ、俺様が淹れたからな」
    「自惚れが過ぎますよ」

    プロイセンを窘めつつ、もう一口とカップに口をつける。プロイセンも用意していた自分の分を手に取り味わっていた。美味い、と呟いた声は外の雨によってすぐに消える。沈黙が空間を支配していた。
    ふと、オーストリアの記憶が蘇る。一度だけ店以外で故人と会ったことがあった。普段から穏やかな顔を更に綻ばせ、両腕には熟れたりんごのように赤い頬をした赤ん坊を抱いていた。孫が生まれたんだと、抱いて欲しいと、手渡されたその赤ん坊の重さや太陽のような匂いを今でも懐かしく思う。穏やかに眠る赤ん坊を眺めていたら、故人は少し躊躇いながら伺いを立ててきた。

    『祖国様、どうかこの子に名前を与えてやってはくれませんか』

    その申し出に数回瞬きをした後、オーストリアは慌てて首を横に振った。今思えばよく赤ん坊を落とさなかったものだと感心する。何度か懇願されたが、オーストリアは頑なに断り続けた。それは何よりも家族からの贈り物であり、自分が口を出すものでは無いからという理由での辞退だった。赤ん坊を返すと故人は少し残念そうにしていたが、すぐに目尻を下げ名前の候補を挙げ連ねはじめた。きっと良い名前が決まることを確信して、オーストリアは故人と別れた。思い返せば、墓石で声を上げて泣いていた子供の一人は例の赤ん坊なのだろう。またじわりと胸を締め付けられる。



    「なんだ、結局付けてやらなかったのか」

    コーヒーを啜りながらプロイセンが尋ねた。無意識に口に出していたことを知り、思ったよりも感傷に浸っているのだと自覚する。無理に溜め込んでも意味が無いことは重々承知しているため、オーストリアは半ば観念するようにぽつりぽつりと続けた。

    「恐れ多いと感じたのです。私が名付け親になるなんて」
    「なんでだよ」
    「だって私はあの子の親でも家族でも、ましてや神でもない。……ただの国なのですから」

    自身がどういった存在かを自問自答するのは何百年も前にやめていた。それでもこうして時々出会ってしまう疑問に何度も心を掻き乱されてしまう。
    果たして自分は何者なのか、なんのために人の形をして、人と同じような行動をとるのか。生殖器や生殖行動の意味は、感情の理由は?
    繰り返し問いかけたところで答えがあるわけでもなく、結局はありのままを受け入れる結論に至るのがオーストリアの常だった。
    自嘲気味に答えるオーストリアにプロイセンが片眉を上げる。暫し考えた後、なにか思いついたのかカップを置くと、無遠慮にオーストリアの隣へ腰掛けた。少し警戒するオーストリアの肩を逃すまいと抱き込み、にやにやと笑った顔を向ける。

    「つまり、坊ちゃんは子供が欲しいわけだ」
    「なっ…!?」
    「だから前の時もゴムなんていらねぇ、なんて熱烈なお誘いをしてくれたわけだろ」
    「違います!あれはそういう意味ではなくて…!」

    弁明するオーストリアをよそに、持っていたカップを奪うとプロイセンは静かにテーブルへと置いた。流れるように慣れた手つきでオーストリアをソファへと押し倒す。聞いているのですか、と湯気を出して怒るオーストリアの眼鏡を奪うと紅い瞳が紫紺を縫い止めた。

    「あんまり難しく考えんなよ、坊ちゃん」
    「っ、何を…」
    「なんでこんな格好してるのかなんて考えたってわかんねぇよ。意味があるのかないのか、そもそも存在自体が不安定だしな。でも、坊ちゃんが俺様のことを好きって気持ちまで否定することねーだろ」

    オーストリアのシャツに手がかけられる。器用にボタンが外され白い胸が徐々に露わになった。先程シャワーを浴びたオーストリアの肌は少し湿っていて温かい。だがそれ以上に、プロイセンの手の平は熱を持っていた。真紅の双眸がゆっくりと迫る。唇が触れる既でオーストリアがプロイセンの口を覆った。

    「……ちょっとお待ちなさい。なぜ私が貴方に好意を寄せていることになっているのです。貴方が私に好意を寄せているのでしょう」
    「……んなわけねーだろ」
    「なんですって!」
    「あーもーうるせーうるせー!」

    誤魔化すように唇が塞がれた。プロイセンの手がオーストリアのシャツの中に侵入し、体の形をなぞりながら撫でていく。絡めた舌と同じように投げ出した足をプロイセンの体躯に絡めれば満足そうに口角が上がった。

    結局、問題の回答は得られないまま行為は進んでいく。なんだか丸め込まれたようで腑に落ちないが、痺れるような快感がオーストリアの脳を麻痺させ思考力を奪っていった。徐々に荒くなる呼吸が興奮を煽る。ソファの軋みが背徳感を演出する。生理的な涙で滲む視界の端で、獣の目をしたプロイセンを愛しいと思ってしまったところでオーストリアは今回の議題に白旗を振った。耳元で囁かれるゴムは?の問いに、オーストリアは何を今更と首に腕を回して受け入れた。









    数日後
    眠い目を擦りながら入ったリビングでオーストリアは声を上げた。たまたま、泊まりに来ていたプロイセンが飛び起きて何事かとリビングを凝視する。ローテーブルの付近では何やら小さい生き物がチョロチョロと周囲を観察していた。特徴的なくせ毛に淡い茶が混ざった白髪。位置こそ違うものの誰かを思わせる黒子に、紫の瞳。プロイセンがごくりと唾を飲む。

    「坊ちゃん子供が産めたんだな」
    「でしたら貴方のせいですよ、認知なさい」

    呆然とする二人に漸く気付いたのか、白髪の子供が二人の元へとやってきた。まだ何も理解出来ていないのかぼんやりとオーストリアとプロイセンの顔を交互に見つめる。観念したように息を吐いてオーストリアはその子供を抱き上げた。

    「仕方ありませんね。少しの間私たちが面倒を見ましょう」
    「ええっ、俺様もかよ…」
    「居合わせたんですからお手伝いなさい、Vater」
    「誰がお父さんだ」

    「さて。まずは貴方の名前を教えてくれますか」









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