yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸あたり前の日常過ぎて、公衆の面前で「あーん」をしてしまうヴィク勇のお話😊
いつもの平和なバカップル💜💙
「いつも通り過ぎたので」 チムピオーンの午後は、いつも平和だ。けれど、ヴィクトル・ニキフォロフの教え子として勝生勇利が同じリンクを使用するようになってから、その平穏はわずかながら乱される瞬間があった。
「あいつら、いつもくっついてるよな……」
「もう見慣れたわ」
練習合間の休憩中――スケートリンクの壁面に背を預けたユーリとミラは、とある光景を同時に見つめながら苦笑いを浮かべた。その視線の先に見えるものは――ヴィクトルと勇利、二人の姿であった。
「ヴィクトル、今のとこ、どうだった?」
「悪くはないと思うけど、ちょっとしっくりこないんだよね」
今期プログラムの全体構成を考えているようで、一曲流して滑った勇利が、エッジカバーをつけながらリンクサイドのコーチのところへやってくる。
1677「あいつら、いつもくっついてるよな……」
「もう見慣れたわ」
練習合間の休憩中――スケートリンクの壁面に背を預けたユーリとミラは、とある光景を同時に見つめながら苦笑いを浮かべた。その視線の先に見えるものは――ヴィクトルと勇利、二人の姿であった。
「ヴィクトル、今のとこ、どうだった?」
「悪くはないと思うけど、ちょっとしっくりこないんだよね」
今期プログラムの全体構成を考えているようで、一曲流して滑った勇利が、エッジカバーをつけながらリンクサイドのコーチのところへやってくる。
meganeuo0713ul
DONEウルトラふわふわワールド1019話『ふわふわエックスのハロウィン肝試し』登場ふわ
ふわっクス…F市W町 A家を守るふわふわ。住む家主の家は古めの日本家屋。タタミに敷いた座布団の上での昼寝をこよなく愛す。今日は新兵器4Kアクションカメラを装備し上機嫌。
ふわコスモス…F寺住まいのふわふわ。とても穏やかな調子で話すが色々鋭い。 6
yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸恋人に甘えたい気分の勇利くんが、ヴィクトルに構ってほしくて甘噛みするけど返り討ちにあう話😊(オチが見えるけど可愛いから書きたかった)
行為中、キュートアグレッション的に噛んでしまうヴィクトルと、構ってほしくてかぷかぷしてしまう勇利くん🐾
「甘噛み」 リビングのデスクに広げた資料とパソコンを前に、おれが仕事に苦しめられていたとある深夜のこと――きい、と扉の軋む音が静かな空間に響いた。はっとして振り返れば、ドアの隙間から室内を覗き込むパジャマ姿の恋人の姿が見えて、おれは目を細めた。
「ユウリ。どうしたの?」
「……ヴィクトル、まだ寝ないの?」
意思の強そうな眉が、かなしげに下がってるのを見て、罪悪感が刺激される。
「うん、ごめんね。もうちょっとかかるよ」
「さっきも、それ聞いた。ねえ、ヴィクトル。もう今日は一緒に寝ようよ」
おれの返事に、勝生家の末っ子は少しだけ唇を尖らせて裸足の足でペタペタと部屋の中に入り込んでくる。
おれの隣に座り、ぎゅっとTシャツの裾を掴んでくる恋人の仕草に気持ちがゆらいだが、拒絶には聞こえないようにできるだけ優しい声で言った。
1196「ユウリ。どうしたの?」
「……ヴィクトル、まだ寝ないの?」
意思の強そうな眉が、かなしげに下がってるのを見て、罪悪感が刺激される。
「うん、ごめんね。もうちょっとかかるよ」
「さっきも、それ聞いた。ねえ、ヴィクトル。もう今日は一緒に寝ようよ」
おれの返事に、勝生家の末っ子は少しだけ唇を尖らせて裸足の足でペタペタと部屋の中に入り込んでくる。
おれの隣に座り、ぎゅっとTシャツの裾を掴んでくる恋人の仕草に気持ちがゆらいだが、拒絶には聞こえないようにできるだけ優しい声で言った。
yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸付き合って長いふたり。ちょっとさびしい気持ちでヴィクトルの帰りを待つ勇利くんが誤爆をやらかしてしまうけど、ヴィクトルがただただ嬉しいお話😇
いつものバカップル💍✨
#ヴィク勇
「みんな知ってた」
みんな知ってた 現在の時刻はもう二十三時――夜も随分と更けた頃、家主がいないニキフォロフ邸のリビングには、寄り添うふたつの影があった。
「ヴィクトル遅いねえ、マッカチン」
「わふ……」
ふわふわのブランケットを肩から羽織り、ソファーに座る勇利が時計を見上げながら呟く。そんな青年の膝の上、溶けるように顎を乗せて伸びている大きな毛玉は、仲良しのマッカチンだ。
「ヴィクトルは、先に寝てて良いって言ってたけど……」
遅くなると思うから、先にご飯食べて寝ててね――と恋人であるヴィクトルから連絡があったのは約四時間前。勇利は、深いため息をついた。
「ヴィクトルの顔見て、安心したいよね。マッカチンも、いつもこんな気持ちでヴィクトルのこと待ってたの?」
2462「ヴィクトル遅いねえ、マッカチン」
「わふ……」
ふわふわのブランケットを肩から羽織り、ソファーに座る勇利が時計を見上げながら呟く。そんな青年の膝の上、溶けるように顎を乗せて伸びている大きな毛玉は、仲良しのマッカチンだ。
「ヴィクトルは、先に寝てて良いって言ってたけど……」
遅くなると思うから、先にご飯食べて寝ててね――と恋人であるヴィクトルから連絡があったのは約四時間前。勇利は、深いため息をついた。
「ヴィクトルの顔見て、安心したいよね。マッカチンも、いつもこんな気持ちでヴィクトルのこと待ってたの?」
yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸こっそりと隠れて、なぜか楽しそうにスマホを眺めるようになった勇利くんに不安を覚えたがヴィクトル、最終には圧倒的にhappyになるおはなし😇🌸
ヴィ「ケータイ見せて?」
結局は君のこと ここ一週間、ユウリの様子がおかしい。
どこか幸せそうに微笑みながら、スマホの画面を眺めるようになった。何を見ているのかと何気なく尋ねれば、なんでもないよとはぐらかされてしまう。――どうして、ごまかす必要があるんだろう。
休憩中、ベンチに腰掛けて楽しげにスマホを見つめる恋人を、おれはリンク上から見守った。
「……まさか、おれ以外に好きな人が?」
ぽつりと呟いて、慌てて首を振る。ユウリに限って浮気なんてありえない。何よりこの一週間、おれたちは公私共にずっと一緒にいた。おれ以外の誰かと出会う暇なんてないはずだ。
「ユウリ! もう、休憩終われる?」
「え?! あっ、はいっ……!」
声をかければ、驚いたようにびくんと肩をすくめるユウリ。大切そうにスマホを置いてエッジカバーを外す恋人の姿を見つめながら、おれは、今夜、「決着」を付けることに決め、人知れず深く息を吐いた。
1890どこか幸せそうに微笑みながら、スマホの画面を眺めるようになった。何を見ているのかと何気なく尋ねれば、なんでもないよとはぐらかされてしまう。――どうして、ごまかす必要があるんだろう。
休憩中、ベンチに腰掛けて楽しげにスマホを見つめる恋人を、おれはリンク上から見守った。
「……まさか、おれ以外に好きな人が?」
ぽつりと呟いて、慌てて首を振る。ユウリに限って浮気なんてありえない。何よりこの一週間、おれたちは公私共にずっと一緒にいた。おれ以外の誰かと出会う暇なんてないはずだ。
「ユウリ! もう、休憩終われる?」
「え?! あっ、はいっ……!」
声をかければ、驚いたようにびくんと肩をすくめるユウリ。大切そうにスマホを置いてエッジカバーを外す恋人の姿を見つめながら、おれは、今夜、「決着」を付けることに決め、人知れず深く息を吐いた。
雪ノ下
MEMO2023.08.08『🍮が🚬の看病をする話』再録Main:KURONO・MASHIRO
クロノがマシロの看病をする話この熱が疲労によるものなのか、己への腹立たしさからくるものなのかわからない。それほど今の状態に苛立っていた。
「……最悪」
わかりやすく熱をだすのはいつぶりだろう。不摂生を自覚しながら体調を崩さないのをいい事に適当な生活を放置していた。体の強さを過信していたのが仇になったか。
今日は本当なら揃って新曲のリハをするはずだった。
よりにもよって、なんだってこの大事な時期に。
ため息をついて寝返りをうつと、室内に来客を知らせるチャイムの音が響く。どうせ新聞の営業か何かだろう。無視していればそのうちいなくなる……と、軽く考えていたのだが。
ピンポーン ピピピピンポーン
「……うるさ」
その業者は有り得ないくらいしつこかった。布団を頭から被り抵抗してみるものの、リズミカルなチャイム音が止むことはない。ただでさえ調子が悪いというのにこう連打されてはますます頭が痛くなる。あまりのしつこさに耐えきれなくなって、仕方なくベッドから這い出した。
3923「……最悪」
わかりやすく熱をだすのはいつぶりだろう。不摂生を自覚しながら体調を崩さないのをいい事に適当な生活を放置していた。体の強さを過信していたのが仇になったか。
今日は本当なら揃って新曲のリハをするはずだった。
よりにもよって、なんだってこの大事な時期に。
ため息をついて寝返りをうつと、室内に来客を知らせるチャイムの音が響く。どうせ新聞の営業か何かだろう。無視していればそのうちいなくなる……と、軽く考えていたのだが。
ピンポーン ピピピピンポーン
「……うるさ」
その業者は有り得ないくらいしつこかった。布団を頭から被り抵抗してみるものの、リズミカルなチャイム音が止むことはない。ただでさえ調子が悪いというのにこう連打されてはますます頭が痛くなる。あまりのしつこさに耐えきれなくなって、仕方なくベッドから這い出した。
yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸真夜中、悪夢から目覚めた勇利くんを、優しく慰めるヴィクトルの短いおはなし😊
眠れない夜。心が騒がしい夜。
なにか辛いことがあった日も、
二人の迎える夜が、いつも幸せなものであるといい💍🌙✨
さいごのときは 隣で眠っていたはずの恋人が、突然ベッドから身を起こしたのは、夜ももう随分と更けた頃のことだった。闇の中に響く、乾いた荒い呼吸と衣擦れの音。薄く目を開けば、激しく肩を上下させながら胸を押さえているユウリの姿が見えた。
「……ユウリ? どうしたの、」
上体を起こそうとしたが、それよりも早く、全身の力が抜けたようなユウリの身体が、シーツの上にどさりと倒れ込んでくる。沈み込む恋人の肢体を、慌てて腕の中に抱き込んだ。わずかに凍えた背中が冷たい。掠れた声が、呟くように言った。
「……びくとる、」
「なに?」
吐息が触れるほどの距離で、ユウリはおれの名を呼ぶ。その指先がおれの頬を静かになぞる。
「……僕と『お別れ』する時はさあ、」
1092「……ユウリ? どうしたの、」
上体を起こそうとしたが、それよりも早く、全身の力が抜けたようなユウリの身体が、シーツの上にどさりと倒れ込んでくる。沈み込む恋人の肢体を、慌てて腕の中に抱き込んだ。わずかに凍えた背中が冷たい。掠れた声が、呟くように言った。
「……びくとる、」
「なに?」
吐息が触れるほどの距離で、ユウリはおれの名を呼ぶ。その指先がおれの頬を静かになぞる。
「……僕と『お別れ』する時はさあ、」
yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸某動画サイトの個人チャンネルにて、毎回お騒がせをする勇利くんと結局惚気けるヴィクトルのお話😊
くるっぷにてネタを呟いたところ、お声がけ頂いたのが嬉しかったので書いてみました🙏✨ありがとうございました🙇
お騒がせ勇利くん チムピオーンのリンク、その建物内にあるミーティングルームでは、珍しく眉を吊り上げたヴィクトルと肩を落とした勇利が、テーブルを挟んで向かいあっていた。
「ユウリ、これ、ちゃんと反省してる?」
愛弟子に見えるよう、画面を上にしてスマホをテーブルの上に置くヴィクトル。そこに映し出されたのは、とある動画サイトに開設された「勝生勇利」の個人チャンネルである――真っ黒なサムネイルに『大切なお知らせ』という白文字がなんとも物々しい。
その新着動画が、今回『騒動』を引き起こした。「証拠」を突き付けられた青年は、深々とコーチに頭を下げる。
「……本当にお騒がせしました」
「この動画、実際どんな内容だったっけ?」
「……SNSアカウント開設のお知らせです」
4140「ユウリ、これ、ちゃんと反省してる?」
愛弟子に見えるよう、画面を上にしてスマホをテーブルの上に置くヴィクトル。そこに映し出されたのは、とある動画サイトに開設された「勝生勇利」の個人チャンネルである――真っ黒なサムネイルに『大切なお知らせ』という白文字がなんとも物々しい。
その新着動画が、今回『騒動』を引き起こした。「証拠」を突き付けられた青年は、深々とコーチに頭を下げる。
「……本当にお騒がせしました」
「この動画、実際どんな内容だったっけ?」
「……SNSアカウント開設のお知らせです」
ツ。(月灯)
MAIKINGエイ○アンズエ○アの辰豊140+α字SS倉庫追加していくスタイル
◆1.辰豊で今日のお題は『それでは皆様、良き余生を!』です。
「お前、あの時、なんで死のうとしたんだよ」
「あの場面で生き残っても仕方ねぇだろ」
ゆるやかに立ち上る煙を見つめながら豊は視線を合わせない。まっすぐ過ぎる視線に貫かれれば何かが崩壊してしまいそうで。
「生き残ったんだから、生きろよ」
「……さてね」
良き余生を過ごせるかどうか、それは目の前の相手にかかっているような予感が煙とともに通り過ぎていった。
◆2.辰豊で今日のお題は『誰かの代用品』です。
誰も誰かの代わりになんてなれないと知ることは大人になるための儀式の1つなのだろうか。
同じ高さの目線、短くて硬い髪、でかい手の平、骨太な身体。
余りにも違いすぎて代わりになんてなるはずが無かった。
3064「お前、あの時、なんで死のうとしたんだよ」
「あの場面で生き残っても仕方ねぇだろ」
ゆるやかに立ち上る煙を見つめながら豊は視線を合わせない。まっすぐ過ぎる視線に貫かれれば何かが崩壊してしまいそうで。
「生き残ったんだから、生きろよ」
「……さてね」
良き余生を過ごせるかどうか、それは目の前の相手にかかっているような予感が煙とともに通り過ぎていった。
◆2.辰豊で今日のお題は『誰かの代用品』です。
誰も誰かの代わりになんてなれないと知ることは大人になるための儀式の1つなのだろうか。
同じ高さの目線、短くて硬い髪、でかい手の平、骨太な身体。
余りにも違いすぎて代わりになんてなるはずが無かった。
ツ。(月灯)
MAIKINGエイ○アンズエ○アの豊写140+α字SS倉庫追加していくスタイル
◆1.豊写で今日のお題は『はんぶんこ』です。
「知らないかい?日本で1番有名なわけっこアイス」
写楽の差し出した、瓶の形を模倣したアイスの片割れ。
「…あのバカの入れ知恵だろ」
写楽の生立ちを思い返せば自主的に食べてるとは想像し難い。
「この前分けてもらってね、美味しかったから」
美味しいと思った物を共有する。ただそれだけのことが二人にとって喜びになるまで、まだ時間が必要だった。
◆2.豊写で今日のお題は『忘れられないのです』です。
「それは仕方の無いことだね」
そんな聞き分けのいい台詞が聞きたいわけじゃなかった。どうしても消えない炎が胸に燻る。
「ちゃんとフラれてくればよかったのに」
もう出来ないことだから意味は無いと知っていても口にする写楽にこれ以上なにも言わせたくなくて、ただ乱暴にその唇を塞いだ。
3172「知らないかい?日本で1番有名なわけっこアイス」
写楽の差し出した、瓶の形を模倣したアイスの片割れ。
「…あのバカの入れ知恵だろ」
写楽の生立ちを思い返せば自主的に食べてるとは想像し難い。
「この前分けてもらってね、美味しかったから」
美味しいと思った物を共有する。ただそれだけのことが二人にとって喜びになるまで、まだ時間が必要だった。
◆2.豊写で今日のお題は『忘れられないのです』です。
「それは仕方の無いことだね」
そんな聞き分けのいい台詞が聞きたいわけじゃなかった。どうしても消えない炎が胸に燻る。
「ちゃんとフラれてくればよかったのに」
もう出来ないことだから意味は無いと知っていても口にする写楽にこれ以上なにも言わせたくなくて、ただ乱暴にその唇を塞いだ。
ツ。(月灯)
MAIKINGエイ○アンズエ○アの辰写140+α字SS倉庫追加していくスタイル
◆1.辰写で今日のお題は『嘘吐きの恋』です。
最近自分がわからねぇ。相棒で、運命共同体だと言ってくれた写楽を見てると腹の辺りがムズムズする。コンビだから共に事件に向かえば、集中していればやりすごせるのに書類を渡す時に触れた手だとか俺の弁当をつまみ食いにきた期待に満ちた笑顔とか。なんでもねぇことだと必死に言い聞かせていた。
嘘をつくのは主義ではないね。言わないこともあるし流し方も心得ている。必要なら言えない訳では無いけれど、これは必要なのか不要なのか判断が難しい。相棒の真っ直ぐな目と熱情に返す応えに嘘を混ぜていいのか混ぜた方がいいのか、こんな難題は久しぶりで少し心が踊ったことは黙っておこう。
◆2.辰写で今日のお題は『またあとで』です。
4110最近自分がわからねぇ。相棒で、運命共同体だと言ってくれた写楽を見てると腹の辺りがムズムズする。コンビだから共に事件に向かえば、集中していればやりすごせるのに書類を渡す時に触れた手だとか俺の弁当をつまみ食いにきた期待に満ちた笑顔とか。なんでもねぇことだと必死に言い聞かせていた。
嘘をつくのは主義ではないね。言わないこともあるし流し方も心得ている。必要なら言えない訳では無いけれど、これは必要なのか不要なのか判断が難しい。相棒の真っ直ぐな目と熱情に返す応えに嘘を混ぜていいのか混ぜた方がいいのか、こんな難題は久しぶりで少し心が踊ったことは黙っておこう。
◆2.辰写で今日のお題は『またあとで』です。
yuakanegumo
DONE両片想いヴィク勇❄⛸ヴィクトルが勇利くんの唇ケアをするようになったきっかけのお話😊
何でも許しちゃう勇利くんが、ちょっと心配になるヴィクトルだけど、結果的にハッピーエンド🥰
無防備な君のはなし その時、なぜ唇を見つめていたのかとユウリ本人に聞かれたら、おれは何も答えられなかったに違いない――君のことを、恋愛対象として愛してしまっただなんて。
「ユウリ、唇荒れてない? リップとか持ってる?」
貸し切りの空間。リンクサイドのベンチに並んで座りながら、おれはふとユウリに尋ねた。自らの唇に触れた教え子は、かさりとしたその乾いた感触にいきあたり、意思の強そうな眉を下げた。
「リップ、持ってないです……」
分かりやすくしゅんと肩を落としてしまうユウリ。うつむいて、黒髪の隙間からちらりとおれの顔を覗く仕草が、まるで悪戯をしてしまった子犬のようで可愛いらしくて、思わず笑ってしまった。
「だろうね。待ってて。おれがやってあげるよ」
1747「ユウリ、唇荒れてない? リップとか持ってる?」
貸し切りの空間。リンクサイドのベンチに並んで座りながら、おれはふとユウリに尋ねた。自らの唇に触れた教え子は、かさりとしたその乾いた感触にいきあたり、意思の強そうな眉を下げた。
「リップ、持ってないです……」
分かりやすくしゅんと肩を落としてしまうユウリ。うつむいて、黒髪の隙間からちらりとおれの顔を覗く仕草が、まるで悪戯をしてしまった子犬のようで可愛いらしくて、思わず笑ってしまった。
「だろうね。待ってて。おれがやってあげるよ」
あかぎ(利便事屋のすがた)
DONE久方ぶりの小説です。夏休み前に急に思い立って書いたのはいいけど、最初の下書きから状況やら心理やらの描写の追加及びリテイクですっかり遅れてしまいましたがようやく完成しました。ちなみに時系列的にはこのマンガ
https://seiga.nicovideo.jp/watch/mg579856 (全12話)
の後日談です
ミ~ンミンミンミン‥
暦の上ではとうに立秋を過ぎてはいるものの、日本の気候は未だ猛暑の空気が漂っている。それは今、オーサム・ワンとシュンのSPトリオが滞在しているこの地でも変わらなかった。
ここは都心にある小さな墓地。シュンの亡き母、シオリが眠りし地でもある。カザミ一族所有の墓もある事にはあるのだが、周囲の反対を押し切ってイチローと結婚した彼女の事を今なおも快く思わない者もいるためか、最終的には彼が私財を使ってここに建てたのだった。う~ん、金持ちの家系ってつくづく面倒くさい。
シュンも数年前に自分がロスヴォルモスに赴くまでは日々、社長業で多忙を極める父に代わり、お盆と命日の度にトシと一緒に墓参りによく来ていたのだが、父も父でこっそりと花束だけは添えていくようで、二人がここに来た時には既に花束が添えられていた事が何度かあったものの、愛する妻を亡くしたトラウマを掘り起こすようでそれ以上は言及できなかったのだ。
6556暦の上ではとうに立秋を過ぎてはいるものの、日本の気候は未だ猛暑の空気が漂っている。それは今、オーサム・ワンとシュンのSPトリオが滞在しているこの地でも変わらなかった。
ここは都心にある小さな墓地。シュンの亡き母、シオリが眠りし地でもある。カザミ一族所有の墓もある事にはあるのだが、周囲の反対を押し切ってイチローと結婚した彼女の事を今なおも快く思わない者もいるためか、最終的には彼が私財を使ってここに建てたのだった。う~ん、金持ちの家系ってつくづく面倒くさい。
シュンも数年前に自分がロスヴォルモスに赴くまでは日々、社長業で多忙を極める父に代わり、お盆と命日の度にトシと一緒に墓参りによく来ていたのだが、父も父でこっそりと花束だけは添えていくようで、二人がここに来た時には既に花束が添えられていた事が何度かあったものの、愛する妻を亡くしたトラウマを掘り起こすようでそれ以上は言及できなかったのだ。
yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸残り香。恋人の香りで安心したい勇利くんとそんな恋人が可愛くて仕方ないヴィクトルのお話😊
こんな幸せが二人にずっと続くといい。
ハッピーヴィク勇💜💙
あなたの香りは 恋人とふたり、寝支度を済ませて、あとは眠るだけとなった夜はあまりにも幸せだ――おれとユウリは、そんな贅沢な時間を過ごしていた。
リビングのソファーで何気ない会話を楽しむおれたちの足元でマッカチンはゆったりとくつろぎ、ユウリは明日の荷物の準備をしている。そんな愛弟子を見て、たまらずにちくりと心が痛んだ。
「……ユウリ、ごめんね」
「え? 何が?」
「最近、なかなか一緒に練習できなくて。明日も取材が入ってるから、リンクに行けるの、夕方くらいになりそうなんだ」
コーチと選手の2足わらじ、覚悟していたことではあったけど、ユウリも辛いのではないだろうか――そう思いながら告げた言葉に、少しだけ不思議そうにアーモンド色の瞳を瞬かせたユウリは、あまりにもあっさりと言い放ったのだ。
1253リビングのソファーで何気ない会話を楽しむおれたちの足元でマッカチンはゆったりとくつろぎ、ユウリは明日の荷物の準備をしている。そんな愛弟子を見て、たまらずにちくりと心が痛んだ。
「……ユウリ、ごめんね」
「え? 何が?」
「最近、なかなか一緒に練習できなくて。明日も取材が入ってるから、リンクに行けるの、夕方くらいになりそうなんだ」
コーチと選手の2足わらじ、覚悟していたことではあったけど、ユウリも辛いのではないだろうか――そう思いながら告げた言葉に、少しだけ不思議そうにアーモンド色の瞳を瞬かせたユウリは、あまりにもあっさりと言い放ったのだ。
yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸寝起きのヴィクトルを寂しさからペタペタと構いたい勇利くんと、そのせいでセッ…したくなってしまい、理性と衝動との間で戦うヴィクトルのお話😊
構いたい勇利くん 重たい眠りからゆっくりと覚醒すれば、世界の輪郭がはっきりと見えてくる。目を開けばまず初めに視界に映るのは、何よりも愛しい愛する人の姿だ。
「おはよう、びくとる」
珍しく、おれよりも先に起きていたらしいアーモンド色の瞳が、瞬いて朝の光を弾く。まだ掠れた小さな声で、ささやくユウリ。
「おはよう、ユウリ。今日は、はや――」
今日は早いんだね、と。
告げようとしたおれの唇は、あまりにも唐突な恋人のキスによって封じられてしまった。小さな水音。触れるだけのバードキス。不意を食らって思わず目を見開いたおれの顔を見て、まるでいたずらが成功した子どものように、無邪気にユウリは笑った。
「驚いた? ヴィクトル」
つられて、おれも笑ってしまった。
1702「おはよう、びくとる」
珍しく、おれよりも先に起きていたらしいアーモンド色の瞳が、瞬いて朝の光を弾く。まだ掠れた小さな声で、ささやくユウリ。
「おはよう、ユウリ。今日は、はや――」
今日は早いんだね、と。
告げようとしたおれの唇は、あまりにも唐突な恋人のキスによって封じられてしまった。小さな水音。触れるだけのバードキス。不意を食らって思わず目を見開いたおれの顔を見て、まるでいたずらが成功した子どものように、無邪気にユウリは笑った。
「驚いた? ヴィクトル」
つられて、おれも笑ってしまった。
yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸付き合いたて。「恋人」になったヴィクトルと勇利くん。はじめての「お付き合い」に戸惑いながらも、ヴィクトルとのスキンシップを頑張ろうとする勇利くんとそんな不器用な恋人を見守るヴィクトルのお話😊
君のもの 抜けるような青空の下に広がっていたのは、夏の太陽に似た黄色い花が一面に広がる――ひまわり畑だった。
「ワオ、凄くきれいな景色だね、ユウリ!」
「でしょ? 子どもの頃から、僕と優ちゃんたちの秘密の場所だったんだよ」
地元の人もあんまり知らないんだ、と得意げに笑うユウリに、目を細めながらおれは少しだけ意地悪く聞いた。
「……そんな秘密の場所、おれに教えちゃってもいいの?」
「いいんだよ! ヴィクトルは僕の……こ、『恋人』なんだから!」
投げやりのように言って、ひまわり畑に囲まれた小道を一人でずんずん進んで行ってしまう年下の恋人。にやけた顔を隠しきれずに、おれはユウリの後ろに続いた。
「ユウリから『恋人』なんて言ってもらえる日がくるなんて、嬉しいなあ」
1768「ワオ、凄くきれいな景色だね、ユウリ!」
「でしょ? 子どもの頃から、僕と優ちゃんたちの秘密の場所だったんだよ」
地元の人もあんまり知らないんだ、と得意げに笑うユウリに、目を細めながらおれは少しだけ意地悪く聞いた。
「……そんな秘密の場所、おれに教えちゃってもいいの?」
「いいんだよ! ヴィクトルは僕の……こ、『恋人』なんだから!」
投げやりのように言って、ひまわり畑に囲まれた小道を一人でずんずん進んで行ってしまう年下の恋人。にやけた顔を隠しきれずに、おれはユウリの後ろに続いた。
「ユウリから『恋人』なんて言ってもらえる日がくるなんて、嬉しいなあ」
yuakanegumo
DONE恋人ヴィク勇❄⛸付き合いたて。ヴィク勇ピロートーク。お世話するヴィクトルとなぜか泣き出してしまう勇利くんのお話😊
ヴィクトルの愛を実感して嬉しい勇利くん✨
秒で全てが解決するふたり👍
愛のあるところ 二人揃ってのオフの日――差し込んできた明るい朝陽に照らされた恋人の幸せそうな寝顔を前にして、もう我慢が出来なかった。
すこやかに眠る恋人を見つめること数分、おれの視線に気づいたユウリがゆっくりと目を開き「……おはよう、びくとる」とふわり微笑んでくれた瞬間、おれの理性はきれいさっぱり吹き飛んだ。そして気づいた時にはもう、恋人をベッドの上に組み敷いて深いキスを仕掛けていたのだ。
「ユウリ。水持ってきたよ。飲める?」
「……ありがと、びくとる」
まだどこかぼんやりとしているユウリに、冷蔵庫から持ち出してきたペットボトルの蓋を開けて手渡す。大きなバスタオルだけを肩に掛けた姿はとても扇情的で、ちらりと覗く赤いあざだらけの白い脚には気づかぬふりをした。
1804すこやかに眠る恋人を見つめること数分、おれの視線に気づいたユウリがゆっくりと目を開き「……おはよう、びくとる」とふわり微笑んでくれた瞬間、おれの理性はきれいさっぱり吹き飛んだ。そして気づいた時にはもう、恋人をベッドの上に組み敷いて深いキスを仕掛けていたのだ。
「ユウリ。水持ってきたよ。飲める?」
「……ありがと、びくとる」
まだどこかぼんやりとしているユウリに、冷蔵庫から持ち出してきたペットボトルの蓋を開けて手渡す。大きなバスタオルだけを肩に掛けた姿はとても扇情的で、ちらりと覗く赤いあざだらけの白い脚には気づかぬふりをした。
雪ノ下
MEMO2021.05.18『Endless Scenarios』再録 お題「スタート!」Main:MASHIRO
『Endless Scenarios』はじめてベースに触れた時のことはよく覚えていない。いつの間にか腕の中にあって、いつの間にか弾いていたというのが正直なところだ。
ベーシストとしての始まりをいうなら……それはやはり、ルビレの冬木真白になった時のことをいうのだろう。
居場所がほしかった。俺のベースを最大限活かしてくれる居場所(バンド)が。
ベース、ベースを弾く俺、あと足りないものは一つだけ。
けれどそのたった一つの不足は、ベーシストである自分にとっては致命的な欠陥だった。
「……そろそろ潮時かな」
吐きだした紫煙が天井に溜まり白い尾を引いて溶けてゆく。それはまるで、今のバンドと自分の関係性を如実に表しているように思えた。なんとなくで繋がった結びつきなど空に消える煙のようなものだ。一度別れてしまえば無かったものと同じ。向こうはどうだか知らないが、少なくとも自分の中には何も残らない。
2176ベーシストとしての始まりをいうなら……それはやはり、ルビレの冬木真白になった時のことをいうのだろう。
居場所がほしかった。俺のベースを最大限活かしてくれる居場所(バンド)が。
ベース、ベースを弾く俺、あと足りないものは一つだけ。
けれどそのたった一つの不足は、ベーシストである自分にとっては致命的な欠陥だった。
「……そろそろ潮時かな」
吐きだした紫煙が天井に溜まり白い尾を引いて溶けてゆく。それはまるで、今のバンドと自分の関係性を如実に表しているように思えた。なんとなくで繋がった結びつきなど空に消える煙のようなものだ。一度別れてしまえば無かったものと同じ。向こうはどうだか知らないが、少なくとも自分の中には何も残らない。
雪ノ下
MEMO2021.05.19『夕飯献立論争』再録 お題「好きなもの」Main:TSUGUMI・AKANE
『夕飯献立論争』好きな食いもん。すき焼きとハンバーグ。正確に言うなら、"クロノがつくった"すき焼きとハンバーグ。
「どーすっかなぁ……」
目の前の男が首を捻るたび金色の瞳にかかった前髪がゆらゆらと揺れる。
午後一でディグプロに寄った帰り、偶然ルビレの日暮茜に遭遇した。今日は日中クロノさんが留守にしているらしく、時刻も昼時を少し過ぎた時間だったため一緒に昼食をとろうということになったのだが……
アカネは店に入って注文を終えるなりずっとこの調子でスマホの画面と睨めっこしながら唸っている。それをいい声してんなコイツとか思っている自分にもなんだか腹が立つ。
アカネの余裕綽々な表情は見慣れているが、眉間に皺を寄せて悩んでいる姿は非常に珍しい。というか、見たことがない。先程から気になって仕方ないのだけれど自分から聞くのはどうにも躊躇われた。何を考えているのか気にするなんて、"俺はお前に興味があります"と言っているようなものだ。それはなんとなく悔しい。コイツ相手となれば尚更。
2039「どーすっかなぁ……」
目の前の男が首を捻るたび金色の瞳にかかった前髪がゆらゆらと揺れる。
午後一でディグプロに寄った帰り、偶然ルビレの日暮茜に遭遇した。今日は日中クロノさんが留守にしているらしく、時刻も昼時を少し過ぎた時間だったため一緒に昼食をとろうということになったのだが……
アカネは店に入って注文を終えるなりずっとこの調子でスマホの画面と睨めっこしながら唸っている。それをいい声してんなコイツとか思っている自分にもなんだか腹が立つ。
アカネの余裕綽々な表情は見慣れているが、眉間に皺を寄せて悩んでいる姿は非常に珍しい。というか、見たことがない。先程から気になって仕方ないのだけれど自分から聞くのはどうにも躊躇われた。何を考えているのか気にするなんて、"俺はお前に興味があります"と言っているようなものだ。それはなんとなく悔しい。コイツ相手となれば尚更。
雪ノ下
MEMO2021.05.23『秘密の逢瀬はレモン色』再録Main:TSUGUMI・MASHIRO
『秘密の逢瀬はレモン色』「つぐみくんの色だね、ソレ」
運ばれてきたケーキを指差すと、最近事務所に所属したばかりの四つ下の後輩が"ほんとだ"とあどけない笑顔を浮かべた。
白のレアチーズケーキに黄色いゼリーの覆いがかかり、一番上には砂糖漬けのレモンがひと切れ乗っかっている。オランジェットが光を反射してキラキラと輝く様は、まるで彼の髪が陽光に透けた時のようだ。
こうして同じテーブルを囲むのは何度目になるだろう。初めて食事に誘った時はまさかこんなに交流を図ることになるとは思ってもいなかった。二人で会っていたと知ればまたアカネが妬くだろうから、今回も内緒の逢瀬だ。バレるのは時間の問題だろうけれど、それはそれで楽しいから良しとする。
1560運ばれてきたケーキを指差すと、最近事務所に所属したばかりの四つ下の後輩が"ほんとだ"とあどけない笑顔を浮かべた。
白のレアチーズケーキに黄色いゼリーの覆いがかかり、一番上には砂糖漬けのレモンがひと切れ乗っかっている。オランジェットが光を反射してキラキラと輝く様は、まるで彼の髪が陽光に透けた時のようだ。
こうして同じテーブルを囲むのは何度目になるだろう。初めて食事に誘った時はまさかこんなに交流を図ることになるとは思ってもいなかった。二人で会っていたと知ればまたアカネが妬くだろうから、今回も内緒の逢瀬だ。バレるのは時間の問題だろうけれど、それはそれで楽しいから良しとする。
雪ノ下
MEMO2021.05.27『rainy day special』再録※時間軸Never end直後
Main:HAIJI
『rainy day special』「……いつの間に降り出したんだろ」
ある日の仕事帰り。自主練のために寄ったスタジオを出ると、目の前が霞むほどの大雨が地面を叩きつけていた。練習に没頭していたせいか室内にいる時は気づかなかったが、周囲の音が聞こえないほどの強さだ。数メートル先の視界も危ういこの状況、屋根の下から出ていくのはかなりの勇気がいる。が、今日はこれから夕飯の支度をしなくてはならない。同居人の帰宅時間を考えると、ここで二の足を踏んでいる暇はなかった。
「…...行くしかないか」
天気予報は曇り予報だったが念のため傘は持ってきていた。最寄りの駅までは五分もかからない距離だし行き慣れた道だ、この雨でもなんとか辿り着けるだろう。
1929ある日の仕事帰り。自主練のために寄ったスタジオを出ると、目の前が霞むほどの大雨が地面を叩きつけていた。練習に没頭していたせいか室内にいる時は気づかなかったが、周囲の音が聞こえないほどの強さだ。数メートル先の視界も危ういこの状況、屋根の下から出ていくのはかなりの勇気がいる。が、今日はこれから夕飯の支度をしなくてはならない。同居人の帰宅時間を考えると、ここで二の足を踏んでいる暇はなかった。
「…...行くしかないか」
天気予報は曇り予報だったが念のため傘は持ってきていた。最寄りの駅までは五分もかからない距離だし行き慣れた道だ、この雨でもなんとか辿り着けるだろう。
雪ノ下
MEMO2021.06.08『おいしくたべて』再録「LOVER」ジャケ写考察。自己解釈強
Main:RUBIA Leopard
『おいしくたべて』「物騒だよなぁ……」
「なにが?」
新曲ジャケットの色校を見返しながら呟くと、すかさず隣から反応が返ってくる。アカネがスマホから顔を上げると同時に"Are you ready ?"とカウントダウンを告げるツイートがタイムラインに流れた。
本日最後の仕事を終えたのが二時間前。メンバー揃ってアカネ・クロノ宅に到着したのが一時間前。そして"今からジャケット公開するわ"と言い出したのが数分前のことだ。
いつもの事とはいえあまりに唐突な発言に目が点になったが、やると言い出したら聞かないのが王様だ。サプライズと焦らしはルビレ(主にアカネ)の十八番ということもあり、問題ないだろうと最終的には全員が頷いた。もちろん敏腕マネージャーの許可もとってある。若干呆れられはしたが。
2273「なにが?」
新曲ジャケットの色校を見返しながら呟くと、すかさず隣から反応が返ってくる。アカネがスマホから顔を上げると同時に"Are you ready ?"とカウントダウンを告げるツイートがタイムラインに流れた。
本日最後の仕事を終えたのが二時間前。メンバー揃ってアカネ・クロノ宅に到着したのが一時間前。そして"今からジャケット公開するわ"と言い出したのが数分前のことだ。
いつもの事とはいえあまりに唐突な発言に目が点になったが、やると言い出したら聞かないのが王様だ。サプライズと焦らしはルビレ(主にアカネ)の十八番ということもあり、問題ないだろうと最終的には全員が頷いた。もちろん敏腕マネージャーの許可もとってある。若干呆れられはしたが。
雪ノ下
MEMO2021.07.05『互いの35センチメートル』再録 お題「意外な一面」※男性用傘の直径約70センチ
Main:KURONO・MASHIRO
『互いの35センチメートル』クロノは面倒見がいい。それこそファンから"ママ"なんて愛称で呼ばれるくらいには。
俺は必要以上に干渉されるのは嫌いだが、事ある毎に何かと口を出してくるアイツのことを"余計なお世話だ"と思ったことは不思議と一度もなかった。恐らく毎回の主張に筋が通っているからだろう。そんなクロノのお節介は特に"健康"に対して発揮される。これは幼い頃からずっと一緒にいるアカネのお墨付きだから間違いない。
三年来の付き合いがある今でこそ当たり前のように認識している事実だが、ルビレが結成されて間もない当時はまだ知らなかったのだ。なぜクロノが、これほどまでに他人の体を心配するのか。
2816俺は必要以上に干渉されるのは嫌いだが、事ある毎に何かと口を出してくるアイツのことを"余計なお世話だ"と思ったことは不思議と一度もなかった。恐らく毎回の主張に筋が通っているからだろう。そんなクロノのお節介は特に"健康"に対して発揮される。これは幼い頃からずっと一緒にいるアカネのお墨付きだから間違いない。
三年来の付き合いがある今でこそ当たり前のように認識している事実だが、ルビレが結成されて間もない当時はまだ知らなかったのだ。なぜクロノが、これほどまでに他人の体を心配するのか。
雪ノ下
MEMO2021.07.22『a piece of glass』再録 お題「無自覚」※時間軸BREAK TIME in無人島
Main:KURONO・MASHIRO
『a piece of glass』「マシロのやつ……一体どこに行ったんだ」
MV撮影のため海外を訪れたルビレは現在無人島でサバイバルの真っ最中だ。どうしてそうなってしまったのかは割愛するが、今は救助を待つしかない状態なので各々開き直ってこの無人島生活を楽しんでいる。アカネさんとハイジは連れ立ってダイビング中、巌原さんは何やらPCと睨めっこしており、マシロは迷子で見当たらない。一体どこにいったのかと海岸沿いを歩いていると、洞窟から随分離れた砂浜で見慣れたふわふわ頭がしゃがみ込んでいるのが目に入った。白い肌が日差しを跳ね返して光っている。このまま晒し続けていればいずれ赤くなってしまうと、無防備な背中目掛けてパーカーを投げつけた。
1630MV撮影のため海外を訪れたルビレは現在無人島でサバイバルの真っ最中だ。どうしてそうなってしまったのかは割愛するが、今は救助を待つしかない状態なので各々開き直ってこの無人島生活を楽しんでいる。アカネさんとハイジは連れ立ってダイビング中、巌原さんは何やらPCと睨めっこしており、マシロは迷子で見当たらない。一体どこにいったのかと海岸沿いを歩いていると、洞窟から随分離れた砂浜で見慣れたふわふわ頭がしゃがみ込んでいるのが目に入った。白い肌が日差しを跳ね返して光っている。このまま晒し続けていればいずれ赤くなってしまうと、無防備な背中目掛けてパーカーを投げつけた。
雪ノ下
MEMO2021.07.27『たまの星、夏の花』再録 お題「お祭り」Main:AKANE・HAIJI
『たまの星、夏の花』「おー。眺めいいな」
「ありがとうございます。がんちゃんもそうやってよく外を眺めてるんですよ」
お昼時、不意にアカネさんが「ハイジって花火大会行ったことある?」と話を振ってきた。
いつもならまた一体何のことかと思考を巡らせるところだが、今回は"花火大会のニュースを熱心に見ていたから話の種にするかもしれない"と事前にクロノさんから聞いていたのですぐに合点がいった。
花火大会に行ったことはある。けれど覚えているのは"行ったことがある"という漠然とした事実だけで、その他のことは大部分がぼやけてしまっている。子供の頃のことだからきっと母に手を引かれて行ったのだろうけれど、その温もりすら曖昧だ。
1970「ありがとうございます。がんちゃんもそうやってよく外を眺めてるんですよ」
お昼時、不意にアカネさんが「ハイジって花火大会行ったことある?」と話を振ってきた。
いつもならまた一体何のことかと思考を巡らせるところだが、今回は"花火大会のニュースを熱心に見ていたから話の種にするかもしれない"と事前にクロノさんから聞いていたのですぐに合点がいった。
花火大会に行ったことはある。けれど覚えているのは"行ったことがある"という漠然とした事実だけで、その他のことは大部分がぼやけてしまっている。子供の頃のことだからきっと母に手を引かれて行ったのだろうけれど、その温もりすら曖昧だ。
雪ノ下
MEMO2021.08.20『change my perspective.』再録 お題「汗」マシロのとあるセリフに関する考察
Main:AKANE・KURONO
『change my perspective.』マシロの言葉が始終頭の片隅に陣取っているせいで、日々後ろ髪を引かれるような思いで過ごさなければならなかった。
あの時は随分と極端な物言いだと思って取り合わなかったが、冬木真白という男は適当なようでいて適当でなく……それはヤツの言葉も同様で、よくよく考えてみれば昔から核心をついているものが多かった。ただ厄介なのは、マシロはひどく回りくどい言い方をするから都度噛み砕いて考えなければならないということである。
野球でいえば変化球の連続。少しは充弦くんを見習ってストレートを投げてほしいものだが……正しく厄介の一言に尽きる。
"バンドマンの本音なんて、楽しくて気持ちいいことしてたいだけ"
それが肉体だけでなく精神の充足も含むのだと知った時、あぁ。確かにそうかもしれないと半分くらいは納得できた。
1776あの時は随分と極端な物言いだと思って取り合わなかったが、冬木真白という男は適当なようでいて適当でなく……それはヤツの言葉も同様で、よくよく考えてみれば昔から核心をついているものが多かった。ただ厄介なのは、マシロはひどく回りくどい言い方をするから都度噛み砕いて考えなければならないということである。
野球でいえば変化球の連続。少しは充弦くんを見習ってストレートを投げてほしいものだが……正しく厄介の一言に尽きる。
"バンドマンの本音なんて、楽しくて気持ちいいことしてたいだけ"
それが肉体だけでなく精神の充足も含むのだと知った時、あぁ。確かにそうかもしれないと半分くらいは納得できた。
雪ノ下
MEMO2021.08.23『sweeter than sugar and honey.』再録マシロのとあるセリフに関する考察
Main:AKANE・MASHIRO
『sweeter than sugar and honey.』「お前にだけは言われたくねーな」
独り言かと思って振り向くと、金色の瞳とバチリと視線が合った。最近SNSで偶然ヒョウの写真を目にする機会があって、なんだマジでアカネそっくりじゃんと感心したことを思い出す。
相変わらず"RUBIA Leopard"というバンドを体現したような男だ。
今更言うことでもないが、ルビレのボーカルにこれほど相応しいヤツは他にいない。歌唱力的にも、ビジュアル的にも。
「……今の俺に言ったの?」
「他に誰がいんだよ。俺とお前しかいねーのに」
「独り言かと思って」
アカネの言う通り今この部屋には俺とアカネの二人しかいない。
というのもここはスタジオに併設された喫煙ルームで、クロノもハイジも基本的にタバコは吸わないから必然的に並ぶ顔ぶれは俺一人、もしくは俺とアカネ二人のどちらかということになる。吸う頻度でいえばアカネよりがんちゃんの方が高いけれど、アーティストとマネージャーという立場上休憩時間が被ることはあまりない。
1760独り言かと思って振り向くと、金色の瞳とバチリと視線が合った。最近SNSで偶然ヒョウの写真を目にする機会があって、なんだマジでアカネそっくりじゃんと感心したことを思い出す。
相変わらず"RUBIA Leopard"というバンドを体現したような男だ。
今更言うことでもないが、ルビレのボーカルにこれほど相応しいヤツは他にいない。歌唱力的にも、ビジュアル的にも。
「……今の俺に言ったの?」
「他に誰がいんだよ。俺とお前しかいねーのに」
「独り言かと思って」
アカネの言う通り今この部屋には俺とアカネの二人しかいない。
というのもここはスタジオに併設された喫煙ルームで、クロノもハイジも基本的にタバコは吸わないから必然的に並ぶ顔ぶれは俺一人、もしくは俺とアカネ二人のどちらかということになる。吸う頻度でいえばアカネよりがんちゃんの方が高いけれど、アーティストとマネージャーという立場上休憩時間が被ることはあまりない。
雪ノ下
MEMO2021.09.07『ぷりんぱにっく』再録販促音声# 11の後日談妄想
Main:AKANE・KURONO
『ぷりんぱにっく』「……、」
冷蔵庫を開けた瞬間思考が停止した。
開いた口が塞がらないとはきっとこういう状態のことを言うのだろう。原因は今目の前に広がっているこの景色だ。
何を言っているかわからないかもしれないが、冷蔵庫の中がプリン一色なのだ。
プチッとお皿にのせられるプリン。とろけるプリン。真っ白なミルクプリン。焼きプリンからプリンアラモード。
種類は違えど右から左、上から下の棚まで全てプリンで埋め尽くされている。
左隅の、申し訳程度に空けられたスペースに買ってきた食材をなんとか詰め込んだ。俺が買い出しに行っている間に一体何が……
「悪かった」
「……アカネさん」
振り返ると、今まさに思い浮かべていた人物が大きな体を縮こませて立っていた。いつもはスパンと言い切る口も今日はどこか歯切れが悪い。
1056冷蔵庫を開けた瞬間思考が停止した。
開いた口が塞がらないとはきっとこういう状態のことを言うのだろう。原因は今目の前に広がっているこの景色だ。
何を言っているかわからないかもしれないが、冷蔵庫の中がプリン一色なのだ。
プチッとお皿にのせられるプリン。とろけるプリン。真っ白なミルクプリン。焼きプリンからプリンアラモード。
種類は違えど右から左、上から下の棚まで全てプリンで埋め尽くされている。
左隅の、申し訳程度に空けられたスペースに買ってきた食材をなんとか詰め込んだ。俺が買い出しに行っている間に一体何が……
「悪かった」
「……アカネさん」
振り返ると、今まさに思い浮かべていた人物が大きな体を縮こませて立っていた。いつもはスパンと言い切る口も今日はどこか歯切れが悪い。
雪ノ下
MEMO2021.11.12『Halloween-like Halloween』再録 お題「仮装・コスプレ」Main:RUBIA Leopard
『Halloween-like Halloween』「アカネー、ちょっといい?」
肩を叩かれ振り向くと、頭に勢いよく何かが被せられた。
反動でぐらりと視界が揺れていきなりなんだと顔を顰めるも、当人のマシロはあーでもないこーでもないと唸るばかりでこちらの事など一切お構いなし。仕方なく手で触れて確認してみるものの、感触だけではさっぱりわからず……鏡で見るのが一番手っ取り早いのだが、残念ながら周囲には見当たらなかった。
この大型マーケットに訪れるのは今回で二度目になる。前回はクロノと二人きり。今日はルビレ揃って。マネージャーも誘う予定だったが恒常的に忙しい人だし、全員で行くと言ったら心労で卒倒するかもしれない。今度声をかける時は入念に準備を整えておかなければ。いっそ貸し切りにしてしまおうか。
3073肩を叩かれ振り向くと、頭に勢いよく何かが被せられた。
反動でぐらりと視界が揺れていきなりなんだと顔を顰めるも、当人のマシロはあーでもないこーでもないと唸るばかりでこちらの事など一切お構いなし。仕方なく手で触れて確認してみるものの、感触だけではさっぱりわからず……鏡で見るのが一番手っ取り早いのだが、残念ながら周囲には見当たらなかった。
この大型マーケットに訪れるのは今回で二度目になる。前回はクロノと二人きり。今日はルビレ揃って。マネージャーも誘う予定だったが恒常的に忙しい人だし、全員で行くと言ったら心労で卒倒するかもしれない。今度声をかける時は入念に準備を整えておかなければ。いっそ貸し切りにしてしまおうか。
雪ノ下
MEMO2021.12.07『とあるオフの日-アカネと巌原の場合-』再録 お題「オフの日」Main:AKANE・IWAHARA
『とあるオフの日-アカネと巌原の場合-』「オフに呼び出して悪かったな」
「むしろ参加させてもらえてありがたいっすよ。俺が頼んだ案件なんだし」
"ルビレに関することは全て把握しておきたいから"と、たとえ休日でも打ち合わせがある時は連絡を寄越してほしいと頼まれていた。普段の多忙さを知っている手前たまのオフくらいゆっくり過ごしてほしいのが本音だが、アカネの希望を無視するわけにもいかない。会議室がリザーブできた段階で連絡を入れると、予想通り返事は即答だった。
ルビレのボーカル、サウンドプロデューサー、そして時には己の容姿を活かして広告塔をも務める。当然その仕事量は膨大だ。本人の意思でやっている事とはいえ本当に恐れ入る。明け方近くSNSに浮上していることもあるようだし、きちんと睡眠をとれているのか不安になってしまうが……私生活はクロノが見張っているだろうから無理はさせてもらえないだろう。体調さえ崩さなければある程度までは許容の範囲内だ。
2299「むしろ参加させてもらえてありがたいっすよ。俺が頼んだ案件なんだし」
"ルビレに関することは全て把握しておきたいから"と、たとえ休日でも打ち合わせがある時は連絡を寄越してほしいと頼まれていた。普段の多忙さを知っている手前たまのオフくらいゆっくり過ごしてほしいのが本音だが、アカネの希望を無視するわけにもいかない。会議室がリザーブできた段階で連絡を入れると、予想通り返事は即答だった。
ルビレのボーカル、サウンドプロデューサー、そして時には己の容姿を活かして広告塔をも務める。当然その仕事量は膨大だ。本人の意思でやっている事とはいえ本当に恐れ入る。明け方近くSNSに浮上していることもあるようだし、きちんと睡眠をとれているのか不安になってしまうが……私生活はクロノが見張っているだろうから無理はさせてもらえないだろう。体調さえ崩さなければある程度までは許容の範囲内だ。
雪ノ下
MEMO2021.12.14『Kalanchoe』再録クロノについてアカネとマシロが考える。花言葉ネタ
Main:AKANE・MASHIRO
『Kalanchoe』時任黒乃は、日暮茜にとって"不変の象徴"のような存在だと思う。
「コンニチハー」
久方ぶりのオフ、特に理由なく気まぐれにアカネ・クロノ宅の戸を叩いた。雑談ついでに昼食をご馳走になれたらラッキー程度の気持ちだ。
日に日にこのマンションに入り浸る率が高まっている自覚はあるが、時間ができるとつい足が向いてしまう。まぁ他でもない家主の片割れから"いつでもメシ食いに来いよ"と許可は得ていることだし、嫌な顔をされない限りは甘えさせてもらおうと思っている。
「ようマシロ」
「……おっと」
「なんだよ。出迎えが俺じゃ不満?」
「まさか」
インターホンを押すと応答したのはアカネだった。部屋に上がっても見当たらないもう一人はどこに行ったのかと尋ねると、午前中から買い出しに出掛けたという。現在デスクワークの真っ最中で暫く相手ができそうにないと眉を寄せるアカネに気にするなと手を振って、買っておいた酒とつまみを冷蔵庫にしまい込んだ。無意味に時間を浪費するのは嫌いだが、この家は居心地がいいから特別苦にならない。アカネが仕事を終えるかクロノが帰宅するまで適当に時間を潰せばいいだけだ。
2357「コンニチハー」
久方ぶりのオフ、特に理由なく気まぐれにアカネ・クロノ宅の戸を叩いた。雑談ついでに昼食をご馳走になれたらラッキー程度の気持ちだ。
日に日にこのマンションに入り浸る率が高まっている自覚はあるが、時間ができるとつい足が向いてしまう。まぁ他でもない家主の片割れから"いつでもメシ食いに来いよ"と許可は得ていることだし、嫌な顔をされない限りは甘えさせてもらおうと思っている。
「ようマシロ」
「……おっと」
「なんだよ。出迎えが俺じゃ不満?」
「まさか」
インターホンを押すと応答したのはアカネだった。部屋に上がっても見当たらないもう一人はどこに行ったのかと尋ねると、午前中から買い出しに出掛けたという。現在デスクワークの真っ最中で暫く相手ができそうにないと眉を寄せるアカネに気にするなと手を振って、買っておいた酒とつまみを冷蔵庫にしまい込んだ。無意味に時間を浪費するのは嫌いだが、この家は居心地がいいから特別苦にならない。アカネが仕事を終えるかクロノが帰宅するまで適当に時間を潰せばいいだけだ。
雪ノ下
MEMO2021.12.21『Q.酢豚にパイナップル。アリ?ナシ?』再録帝さんから大量のパイナップルが送られてくる話
Main:RUBIA Leopard
『Q.酢豚にパイナップル。アリ?ナシ?』「……なにコレ」
明日にオフを控えた夜、仕事終わりにアカネとクロノから揃って「この後うちに来てほしい」と声をかけられた。時間があるときに自ら赴くことはあっても家主である二人から直接来てほしいと頼まれるのはかなり稀なケースだ。現在取り掛かっている新曲のことか、はたまたバンドの方向性に関わることか……ともかく何か大事なことに違いない。ただならぬ気配を感じつつ、マシロとハイジは二つ返事で了承した……のが、今からおよそ三十分前の出来事である。
「なんなのコレ」
「パイナップル」
「それは見りゃわかるっつーの!」
家に上がってすぐに一階の最奥にある部屋に通された。確か普段はゲストルームとして使用されている場所だ。てっきり話し合いのためにリビングルームに直行するものと思っていたマシロとハイジは首を傾げたが、室内の異様な光景を目にしてすぐに納得した。
3219明日にオフを控えた夜、仕事終わりにアカネとクロノから揃って「この後うちに来てほしい」と声をかけられた。時間があるときに自ら赴くことはあっても家主である二人から直接来てほしいと頼まれるのはかなり稀なケースだ。現在取り掛かっている新曲のことか、はたまたバンドの方向性に関わることか……ともかく何か大事なことに違いない。ただならぬ気配を感じつつ、マシロとハイジは二つ返事で了承した……のが、今からおよそ三十分前の出来事である。
「なんなのコレ」
「パイナップル」
「それは見りゃわかるっつーの!」
家に上がってすぐに一階の最奥にある部屋に通された。確か普段はゲストルームとして使用されている場所だ。てっきり話し合いのためにリビングルームに直行するものと思っていたマシロとハイジは首を傾げたが、室内の異様な光景を目にしてすぐに納得した。
雪ノ下
MEMO2021.12.25『”You” from my point of view.(about 4years ago)』再録 お題「日暮茜」自己解釈度強。RUBIA解散直後にアカネが過ごしたかもしれない一夜
Main:AKANE・KURONO
『”You” from my point of view.(about 4years ago)』涙がでないのが不思議なほど苦しい夜だった。
ズキズキ。ズキズキ。心臓のあたりが鈍く痛む。
ズキズキ。ズキズキ。見えない何かが内側から苛む。
ズキズキ。ズキズキ。ズキズキ。ズキズキ。
血など一滴もでていないのに息をするのも辛い。
眠りたい。できない。
忘れたい。できない。
泣きたい。できない。
助けてほしい。縋りたい。頼りたい。できない。
許されない。してはいけない。言ってはいけない。悟られてはいけない。あらゆるNO。あらゆるシャットアウト。×××××。
"だってそんなのは日暮茜じゃない"
感情が爆発する一歩手前で理性がそう訴えかけてくる。
勝手に従う自分。意思とは正反対に機能する体。ひとりの人間としての日暮茜と、周囲から期待される日暮茜の"姿"。
2742ズキズキ。ズキズキ。心臓のあたりが鈍く痛む。
ズキズキ。ズキズキ。見えない何かが内側から苛む。
ズキズキ。ズキズキ。ズキズキ。ズキズキ。
血など一滴もでていないのに息をするのも辛い。
眠りたい。できない。
忘れたい。できない。
泣きたい。できない。
助けてほしい。縋りたい。頼りたい。できない。
許されない。してはいけない。言ってはいけない。悟られてはいけない。あらゆるNO。あらゆるシャットアウト。×××××。
"だってそんなのは日暮茜じゃない"
感情が爆発する一歩手前で理性がそう訴えかけてくる。
勝手に従う自分。意思とは正反対に機能する体。ひとりの人間としての日暮茜と、周囲から期待される日暮茜の"姿"。
雪ノ下
MEMO2022.01.21『12.09の邂逅』再録2021.12.09に叶希とクロノがしていたツイートのその後妄想
Main:TOKI・KURONO
『12.09の邂逅』「よければ一緒に行かないか」
事務所でファンレターを受け取った帰り道、上着のポケットに突っ込んでいたスマホが着信を知らせた。画面を確認すると、表示されていた名前は"黒乃さん"。緑の電話マークをタップする指が緊張からか少し震えた。
連絡先を交換して暫く経つというのに未だに電話でのやり取りには慣れない。つぐと違って人との距離を縮めるのが上手い方ではないし、何度か顔を合わせているとはいえ相手は事務所の先輩だ。ルビレのハードスケジュールっぷりを知っている手前、メッセージひとつ送るのでさえ躊躇してしまう。
タイミングはいつがいいか。どれくらいの頻度なら迷惑でないか。色々考えた末結局は連絡をしないのが一番迷惑をかけずに済むという答えに行き着いて、スマホから指は遠のくばかり。けれどまったく音沙汰なしというのも"一応交換はしたけれど連絡をとる気は一切ありません"などというあらぬ誤解を与えかねないし……とまたモヤモヤ。
2469事務所でファンレターを受け取った帰り道、上着のポケットに突っ込んでいたスマホが着信を知らせた。画面を確認すると、表示されていた名前は"黒乃さん"。緑の電話マークをタップする指が緊張からか少し震えた。
連絡先を交換して暫く経つというのに未だに電話でのやり取りには慣れない。つぐと違って人との距離を縮めるのが上手い方ではないし、何度か顔を合わせているとはいえ相手は事務所の先輩だ。ルビレのハードスケジュールっぷりを知っている手前、メッセージひとつ送るのでさえ躊躇してしまう。
タイミングはいつがいいか。どれくらいの頻度なら迷惑でないか。色々考えた末結局は連絡をしないのが一番迷惑をかけずに済むという答えに行き着いて、スマホから指は遠のくばかり。けれどまったく音沙汰なしというのも"一応交換はしたけれど連絡をとる気は一切ありません"などというあらぬ誤解を与えかねないし……とまたモヤモヤ。
雪ノ下
MEMO2022.02.04『紫紺のギタリスト曰く』再録 お題「野中つぐみ」叶希とアカネがつぐみについて語り合う
Main:TOKI・AKANE
『紫紺のギタリスト曰く』「……アカネさんてそんなにつぐのこと好きなんすか?」
口にだしてからしまったと思った。けれど金色の瞳はとっくにこちらを向いていて、今更"なんでもありません"と首を横に振れる雰囲気ではない。何よりアカネさんの場合そんな言葉で誤魔化されてはくれないだろう。
はじめて顔を合わせた時から思っていた。なぜこの人は、そこまでつぐのことを特別視するのだろうと。
競合相手ならまだしも相手はプロデビューしたばかりの嘴の青い新人アーティストだ。もちろん俺にとってはアイツ以上のボーカルはいないが、その評価には少なからず身内特有の贔屓目が含まれている。当然バンドとしての実績も遠く及ばないから、どうしてアカネさんが事ある毎につぐに絡むのか不思議でならなかった。
2695口にだしてからしまったと思った。けれど金色の瞳はとっくにこちらを向いていて、今更"なんでもありません"と首を横に振れる雰囲気ではない。何よりアカネさんの場合そんな言葉で誤魔化されてはくれないだろう。
はじめて顔を合わせた時から思っていた。なぜこの人は、そこまでつぐのことを特別視するのだろうと。
競合相手ならまだしも相手はプロデビューしたばかりの嘴の青い新人アーティストだ。もちろん俺にとってはアイツ以上のボーカルはいないが、その評価には少なからず身内特有の贔屓目が含まれている。当然バンドとしての実績も遠く及ばないから、どうしてアカネさんが事ある毎につぐに絡むのか不思議でならなかった。
雪ノ下
MEMO2022.05.27『夏空とストロベリー』再録気まぐれなマシロが甘いものを飲む話
Main:MASHIRO
『夏空とストロベリー』「あっっっつ……」
雲ひとつない青空に輝く太陽が容赦なく地上を照りつけていた。初夏らしからぬ熱気を恨めしく思いながら、顎を伝う汗を無造作に拭う。
次の現場までそんなに離れていないからとらしくもなく徒歩移動を選択した自分が間違っていた。まさか今日がこんな季節外れの真夏日になろうとは。
道すがら拾おうかと提案してくれたアカネの誘いを断ったことを今更ながらに後悔する。今からでもいいから迎えに来てほしい。
まったくまだ五月も半ばだというのにこの暑さ、盛夏を迎えたら一体どうなってしまうのだろう。陽光と熱風で溶けてしまうんじゃないのかと一抹の不安が頭を過ぎる。そう思いながら毎年なんだかんだ乗り越えられているからいらぬ心配には違いないのだろうが……そうは言ってもこの気温の高さ、流石に参ってしまう。
2154雲ひとつない青空に輝く太陽が容赦なく地上を照りつけていた。初夏らしからぬ熱気を恨めしく思いながら、顎を伝う汗を無造作に拭う。
次の現場までそんなに離れていないからとらしくもなく徒歩移動を選択した自分が間違っていた。まさか今日がこんな季節外れの真夏日になろうとは。
道すがら拾おうかと提案してくれたアカネの誘いを断ったことを今更ながらに後悔する。今からでもいいから迎えに来てほしい。
まったくまだ五月も半ばだというのにこの暑さ、盛夏を迎えたら一体どうなってしまうのだろう。陽光と熱風で溶けてしまうんじゃないのかと一抹の不安が頭を過ぎる。そう思いながら毎年なんだかんだ乗り越えられているからいらぬ心配には違いないのだろうが……そうは言ってもこの気温の高さ、流石に参ってしまう。
雪ノ下
MEMO2022.07.26『お遊び的SS』再録10割会話。アカネがハイジをおぶる話
Main:RUBIA Leopard
『お遊び的SS』「……なにしてんの」
「ハイジおぶってる」
「それは見りゃわかるっつの」
「だったら聞くな」
「いや聞くでしょ!」
「こら、騒がしいぞ。廊下まで声が聞こえた」
「待ってがんちゃん俺のせいじゃない。見て」
「……なにやってんだお前ら」
「ちょっとハイジをおぶってみようかと」
「危ないだろ。おろせ」
「絶対落とさねーって」
「まったく……何がどうしてこうなったんだ」
「前にハイジが熱だした時おぶりそこねたから」
「はぁ?」
「あー……ナルホド。そういうことか」
「そういうこと」
「待て。俺にもわかるように説明しろ」
-説明中-
「だからって本当にするやつがあるか」
「やったらいけたから」
「軽いの?」
1112「ハイジおぶってる」
「それは見りゃわかるっつの」
「だったら聞くな」
「いや聞くでしょ!」
「こら、騒がしいぞ。廊下まで声が聞こえた」
「待ってがんちゃん俺のせいじゃない。見て」
「……なにやってんだお前ら」
「ちょっとハイジをおぶってみようかと」
「危ないだろ。おろせ」
「絶対落とさねーって」
「まったく……何がどうしてこうなったんだ」
「前にハイジが熱だした時おぶりそこねたから」
「はぁ?」
「あー……ナルホド。そういうことか」
「そういうこと」
「待て。俺にもわかるように説明しろ」
-説明中-
「だからって本当にするやつがあるか」
「やったらいけたから」
「軽いの?」
雪ノ下
MEMO2022.10.18『橙黄を纏う』再録クロノと香水
Main:RUBIA Leopard
『橙黄を纏う』「なぁ。クロノって香水変えた?」
スタジオに入るなりそう尋ねられて、暫く思考を巡らせたアカネはさぁと首を傾げた。
「まだ会ってねーんだよ」
「……あぁ。昨日帰ってないのね」
「そ。出先から直行」
「やーい朝帰り」
「誤解うむような言い方やめろ」
もはや日常のテンプレと化したマシロの揶揄を軽く受け流してソファに腰かける。一息ついたところで、先程のワードに再び意識を戻した。
はて。"クロノと香水"とは、なんとも珍しい組み合わせだ。
「で、なんで香水?」
「いつもと違うっつか……すげー甘い匂いする」
「マジ?珍し」
そもクロノが香りを纏っていること自体日常的とは言い難い。
元々そういう類にあまり興味がないらしく、時折ふっている香水もアカネが購入した際にサンプルとして貰ったものだ。新しいのを買ってやると言っても首を横に振るばかりで、なくなったタイミングで贈ろうと画策してはいるものの、つけない日もしばしばあるから一向に減る気配がない。
2120スタジオに入るなりそう尋ねられて、暫く思考を巡らせたアカネはさぁと首を傾げた。
「まだ会ってねーんだよ」
「……あぁ。昨日帰ってないのね」
「そ。出先から直行」
「やーい朝帰り」
「誤解うむような言い方やめろ」
もはや日常のテンプレと化したマシロの揶揄を軽く受け流してソファに腰かける。一息ついたところで、先程のワードに再び意識を戻した。
はて。"クロノと香水"とは、なんとも珍しい組み合わせだ。
「で、なんで香水?」
「いつもと違うっつか……すげー甘い匂いする」
「マジ?珍し」
そもクロノが香りを纏っていること自体日常的とは言い難い。
元々そういう類にあまり興味がないらしく、時折ふっている香水もアカネが購入した際にサンプルとして貰ったものだ。新しいのを買ってやると言っても首を横に振るばかりで、なくなったタイミングで贈ろうと画策してはいるものの、つけない日もしばしばあるから一向に減る気配がない。
雪ノ下
MEMO2022.11.02『たいもひとりはうまからず』再録鯛のような美味しい魚や料理であっても、たったひとりで食べるのでは味気なく感じるということ
転じて、「食事は大勢で食べるほうが美味しく感じられる」という意
Main:MASHIRO
『たいもひとりはうまからず』「……どーっすかな今日」
制限時間いっぱいまでベースを弾き、借りていたスタジオをでると日はすっかり高くなっていた。
ちょうど時刻は昼時……が、如何せん腹が減らない。いや、本当は減っているのかもしれないが自ら食事をとろうと思うほどの欲が湧かないのだ。疲労は感じるからそれなりに動いているには違いないし、消費したエネルギーの分だけ空腹を覚えていても不思議はないのだが……結局今日も"ひとりでメシを食うのだ"と思うと、微々たる食欲よりも、それを満たすためにあれこれ悩むのは面倒だという気持ちの方が勝った。
大抵のことは適当に済ませられると思っていたが、俺って案外繊細なのかもしれない。以前は……ひとりでいることが当たり前だった頃は、むしろ他人と時間を共有するなど鬱陶しいことこの上ないと思っていたのに。
2291制限時間いっぱいまでベースを弾き、借りていたスタジオをでると日はすっかり高くなっていた。
ちょうど時刻は昼時……が、如何せん腹が減らない。いや、本当は減っているのかもしれないが自ら食事をとろうと思うほどの欲が湧かないのだ。疲労は感じるからそれなりに動いているには違いないし、消費したエネルギーの分だけ空腹を覚えていても不思議はないのだが……結局今日も"ひとりでメシを食うのだ"と思うと、微々たる食欲よりも、それを満たすためにあれこれ悩むのは面倒だという気持ちの方が勝った。
大抵のことは適当に済ませられると思っていたが、俺って案外繊細なのかもしれない。以前は……ひとりでいることが当たり前だった頃は、むしろ他人と時間を共有するなど鬱陶しいことこの上ないと思っていたのに。
雪ノ下
MEMO2022.11.29『speechless』再録アカネの声がでなくなる話
Main:AKANE・KURONO
『speechless』"日常とは突如崩れ去るものである"
まさか、こんな最悪の形で経験することになるなんて。
「……」
目が覚めたとき、特に違和感はなかった。
昨夜なかなか寝つけなかったせいで少し頭が重いのと、周りの景色の変化にまだ慣れないこと以外は。枕元のスマホを見ると6時30分。ほぼ普段通りの起床時刻だ。
きっちりカーテンが引かれた室内に少し開いた扉の隙間から人口的な光が差し込んでいる。耳を澄ますとリビングの方からパタパタとスリッパが鳴る音と、食器が擦れ合うような音が聞こえてきた。
クロノ、もう起きてるのか。
"はえーな"
そう呟こうとして、気づいた。
「 」
声がでない。
3688まさか、こんな最悪の形で経験することになるなんて。
「……」
目が覚めたとき、特に違和感はなかった。
昨夜なかなか寝つけなかったせいで少し頭が重いのと、周りの景色の変化にまだ慣れないこと以外は。枕元のスマホを見ると6時30分。ほぼ普段通りの起床時刻だ。
きっちりカーテンが引かれた室内に少し開いた扉の隙間から人口的な光が差し込んでいる。耳を澄ますとリビングの方からパタパタとスリッパが鳴る音と、食器が擦れ合うような音が聞こえてきた。
クロノ、もう起きてるのか。
"はえーな"
そう呟こうとして、気づいた。
「 」
声がでない。
雪ノ下
MEMO2022.12.21『EVOKE』再録Main:KURONO・MASHIRO
『EVOKE』忘れかけていた記憶の欠片がふとした瞬間、何気ないことで喚起される。
アルバムのページが独りでに捲られていくように。無数の星が一斉に瞬くように。
自分の中では遥か彼方にあって、もう届くまいと思い込んでいるものでも、ちょっとしたトリガーさえあれば案外簡単に呼び起こせるものだ。その点、人間の脳はよく出来ている。
「あ」
ぽろ、と手からペンが零れ落ちた。
先程から上手く力が伝わらず、そろそろ落っことしそうだと思っていた矢先の出来事だった。空調はきいているはずなのに指先は一向に温かくならない。この季節の嫌なところだ。
反動に従ってコロコロと床を転がったそれは、まるで「拾ってください」と言わんばかりに誰かの足元で動きを止めた。よく磨かれた真っ黒な爪先から視線を上げると、いつの間に来たのかクロノが立っている。どれだけ静かに入ってきたとしても扉の開閉音くらいはしたはずだが、今の今までまったく気がつかずにいたらしい。いるなら声くらいかけてくれればいいのに。
3944アルバムのページが独りでに捲られていくように。無数の星が一斉に瞬くように。
自分の中では遥か彼方にあって、もう届くまいと思い込んでいるものでも、ちょっとしたトリガーさえあれば案外簡単に呼び起こせるものだ。その点、人間の脳はよく出来ている。
「あ」
ぽろ、と手からペンが零れ落ちた。
先程から上手く力が伝わらず、そろそろ落っことしそうだと思っていた矢先の出来事だった。空調はきいているはずなのに指先は一向に温かくならない。この季節の嫌なところだ。
反動に従ってコロコロと床を転がったそれは、まるで「拾ってください」と言わんばかりに誰かの足元で動きを止めた。よく磨かれた真っ黒な爪先から視線を上げると、いつの間に来たのかクロノが立っている。どれだけ静かに入ってきたとしても扉の開閉音くらいはしたはずだが、今の今までまったく気がつかずにいたらしい。いるなら声くらいかけてくれればいいのに。
雪ノ下
MEMO2023.01.17『blank space』再録※時間軸Never end
Main:RUBIA Leopard
『blank space』ピンポーン
来訪者を知らせるチャイムの音にモニターを確認すると、"さっさといれてよ"と言わんばかりにこちらを覗き込む見慣れた綿毛が目に入った。勿論これはあだ名……とまでもいかない今浮かんだばかりの仮名だが、我ながら結構いい例えだと思う。
「また来たのか」
「お腹すいたーあけてー」
「うちは食堂じゃないと何度言えば……」
「んな固いこと言わずに!ね?クロノおにーちゃん」
「切るぞ」
揶揄を含んだ声音に若干の苛立ちを覚えて突っぱねるとマシロの態度は一転、低姿勢なものに変わった。日によって会話の内容が異なるとはいえこれに似たやり取りをもう何度も繰り返している。マシロの軽口など挨拶のようなものだ。いい加減流せるようになれと思うものの、コイツ相手にすんなり首を振るのはどうにも癪に障るというか……
2162来訪者を知らせるチャイムの音にモニターを確認すると、"さっさといれてよ"と言わんばかりにこちらを覗き込む見慣れた綿毛が目に入った。勿論これはあだ名……とまでもいかない今浮かんだばかりの仮名だが、我ながら結構いい例えだと思う。
「また来たのか」
「お腹すいたーあけてー」
「うちは食堂じゃないと何度言えば……」
「んな固いこと言わずに!ね?クロノおにーちゃん」
「切るぞ」
揶揄を含んだ声音に若干の苛立ちを覚えて突っぱねるとマシロの態度は一転、低姿勢なものに変わった。日によって会話の内容が異なるとはいえこれに似たやり取りをもう何度も繰り返している。マシロの軽口など挨拶のようなものだ。いい加減流せるようになれと思うものの、コイツ相手にすんなり首を振るのはどうにも癪に障るというか……