あまやかし⑧* * *
アクセサリーケースから取り出された、ごくごく小さなライフル弾。
「……」
クレナの細い指先が摘まみ上げたそれへと、向ける言葉に窮したシンは口籠る。
対してクレナはシンのそんな反応すら予想通りであるのか。金晶種の瞳がじっとシンを見つめてくる。
「アクセサリー、好きなのを選んで良いって言われたから」
クレナ自身の小指の爪ほどのサイズの、ライフル弾を模した耳飾り。
薄紙の一枚も撃ち抜けやしない紛い物の弾丸が、照明を弾いてゆらゆらと揺れる。
「直接尋ねてあげないと、シン君はクレナちゃんが身に着けているものに何か言うなんてしてあげないものねぇ」
いつの間にかシンの背後に立っていたアンジュが言う。
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