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    ff14Haurneki

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    エス光(自機)

    進捗だよお

    ノパルテンダー食べるよ(仮) サカ・トラルはシャーローニ荒野の、赤褐色の大地をポツポツとサボテンの緑が彩る。その上は抜けるような青空。からりと乾いた風が吹く度に土埃が舞う様は、石橋を隔てたヨカ・トラルとは随分と様子が違う場所だ。
     
    「よし、終わり〜」
     
     光の戦士こと冒険者ブライトは、細身の二刀を器用にくるりと回して背負って納めた。足元には討伐したサボテン型のモンスター…ノパルテンダーが大量に倒れ伏している。フーサタイ宿場町のサボテン畑の直ぐ側、畑の養分を狙って現れた大量のノパルテンダーに困っていた原住民を見かけ、討伐に協力していたのである。しゃがみ込んで顎に手を添えながら、ブライトは怪訝そうに呟く。
     
    「んで、本当に食ったのか?これを?」
    「あぁ」
     
     何でもなさそうな声音がブライトの背中にかかる。己の槍に不備が出てないかを確認した後、エスティニアンは槍をいつも通り背負った。ブライトは変わらずなんとも言えない顔でノパルテンダーを観察している。ウルダハ育ちの彼女としても、サボテン食は決して馴染みの薄いものではない。ローストノパルなどザナラーンでは集落の露店で売られてさえいる。しかしアレは通常の、動かないウチワサボテンを使うものだ。サボテンダーなどウルダハでは特に馴染み深いものではあるが、どちらかと言えばゴールドソーサーの紳士なマスコットのイメージが強いからか、ブライトはどうにもこの似ても似つかない魔物を食すのに少しばかり気が憚られた。
     
    「……別に、無理に勧めてる訳じゃないんだ。食いたくなければ食わなければ良い」
     
     対するエスティニアンは憮然とした表情で腕組みなぞしていた。一応は善意100%で勧めたものにいつまでも文句を垂れられればそういった顔にもなるだろう。
     
    「いんや、食べるよ食べる。調理師として興味が無い訳じゃないし」
     
     数多の武器を使いこなし戦う武人であるブライトは、その上多種多様なクラフト技術を身に着けた職人でもある。調理師としての腕は、かのレストランビスマルクのリングサスからもお墨付きを貰える程だ。サボテンダーもなるほど未知の食材として考えると、確かに興味は湧いてくるもので。食とあらばとシロミミズやバヌバヌ族の草団子まで食べてみせるほどには好奇心旺盛なのだ。因みに前者は食べてそのまま素直に苦手になった。
     
    「あとお前が知ってるものを私が知らないのは何か気に食わない。冒険者の先輩として」
    「なんだそれは…。兎も角食べるんだな?」
    「おう」
     
     後はまあほぼほぼ冒険者としての意地である。ムッとした顔を作ってビッと指さしてくるブライトに、エスティニアンも呆れ顔で肩をすくめた。言い合いもそこそこに調理の為道具を鞄からごちゃごちゃと取り出し始めたブライトを見て、エスティニアンもまた薪になる木材を拾いに行く。丁度風が少なく土埃も舞わない今の気候なら、外での調理は十分可能だろう。ローストノパルはチーズソースを使ったが、はてガレアンチーズで代用は可能だろうかと首を傾げながらブライトは空を仰ぐ。
     顔のような部分は正直食べたくなかったので、その下の部位を使った。手元にあったウォータークリスタルで水を出しながら軽く洗い、通常のウチワサボテンサイズに切り分け、トゲをまるで魚の鱗のように取り除いていく。そうすると残るのは棘が生えていた根本…棘座だけになるので、それらが全て無くなるよう皮を軽く剥いてやれば、食用のウチワサボテンとほぼ変わらない。あとはそのまま丸っと油を敷き焚き火の上に置いたフライパンに滑らせ、焼きながら削ったガレアンチーズと食塩で味を整えれば完成だ。
     
    「はい、ローストノパル擬きの完成〜」
    「見事なものだな」
    「焼いただけだけどな」
     
     ふふっと笑うブライトに、それでもエスティニアンは舌を巻いた。自分が食べた時は棘を取り皮をぶ厚めに剥いたサボテンダーを塩焼きにしただけだった。旅の道中だ、食べられればそれで良いし、アレはアレで美味かったのだが、プロが調理するとこうもしっかりとした料理になるのか。エスティニアンは素直に感心していた。皿を出すのは少し勿体ないと、フライパンの上で直にナイフとフォークを使ってサボテンダーを切り分ける。一口齧ってみれば爽やかでクセのない酸味は控えめで、チーズソースの濃厚さと塩味のバランスが良い。外敵の攻撃から身を守るための、厚い表面をほぼ剥いたのは正解だったようで、シャクシャクと歯応えがありつつも十分に噛み砕ける程度の固さ。こんな屋外だし、材料もいつもとは違うが我ながら見事な出来栄えである。
     
    「…普通に美味い」
    「だろう?」
     
     エスティニアンは何処か満足そうに返した。
     
    「なあ、少し分けてくれないか」
    「お、じゃあ半分食べていいぜ。別にそんなに腹減ってる訳じゃないし」
     
     食べ進めていると、エスティニアンから声がかかった。元のサイズの半分に切り分け、少ない残りは一口で口の中へ。ん、と差し出されたフォークとナイフを受け取ると、エスティニアンの試食が始まった。焼いたノパルの上をカトラリーが滑る。平民育ちで粗野な言動も多い割に、エスティニアンのテーブルマナーは意外にも卒がない。蒼の竜騎士時代は皇都では英雄のような扱いだったのだろう。自分が祝賀会に呼ばれたように、彼もまた上流階級の食事会等に呼ばれることもあったのかもしれない。もしくはアイメリクの教育の賜物だろうか。いずれにせよとても様になっていた。
     
    「……何だ、ジロジロと」
    「こうして見るとやっぱエレゼンなんだなぁって思って」
    「最初から俺は徹頭徹尾エレゼンだが?……美味い」
    「お、良かった」
     
     速やかに残りを食べ終えフライパンとカトラリーを返す。ウォータークリスタルを使えば水は出せるが流石に何にでもすぐに使うのは勿体ないということで、油を紙で拭い魔法で燃やして終いにするのが冒険者達の間では通例だった。街や宿の水場を借りて後で洗えば良い。
     
    「で、お前が用があるってのはどの辺りだ」
    「ここからずーっと北に行くとあるオアシス」
    「じゃあこのまま北進するぞ」
    「ん、魔物の相手任せてもいいか?採取用の装備に変える」
    「あぁ」
     
     そも、何故ここに二人でいるかといえば、ブライトの納品作業の手伝いに他ならない。収集用のアカシア原木を伐採しに来たのだ。橙貨が…マテリアが…禁断が…とぶつぶつと呟いていた内容こそエスティニアンには全く理解できなかったが、折角鉢合わせたのだからとそのまま着いて来た次第である。曰く採る為には一定の時間まで待つ必要があるらしく、直近の採取時間までは一時間程あった。このまま目的地まで歩いていけば丁度いいくらいだろう。エスティニアンは槍を、ブライトは伐採用の斧をそれぞれ背負い、フーサタイを出発した。

     ーーー

     最初の些細な違和感は下腹部に感じた熱。それは少しずつ全身に回り、服の中でうっすら汗ばむ程になった。ブライトは、てっきり徒歩での移動をしている為に代謝が上がっている為かと思っていた。ヨカトラルのような湿度は無くとも、サカトラルも負けず劣らず気温は高い。日によっては日中の強い日差しで汗ばむ事だってある。だから、そうなのだと思っていたのだ。
     
    (………あつい)
     
     前を行くエスティニアンにバレぬよう、着ている装備のフードをぱさりと被った。下腹部は熱に続いて甘く痺れるような疼きを生み、理性を少しずつ削っていく。濃紺の甲冑を纏ったその背中に無性にしがみつきたくなる心地を脳裏から必死に追い出しながら、ブライトは急な己の変化に戸惑っていた。
     ところで、サボテンダーという生き物は決して食用しない訳ではない。ノパルテンダーのトゥナは珍味として交易品として広く取引されている。また、その茎も一緒にすり潰し、赤子の離乳食にして与える事もあるという。「食べると強く育つ」という言い伝えがあるように、意外にも栄養価が高いのだ。一部では、「滋養強壮の効果があり、精力剤としての効果がある」等という噂までまことしやかに囁かれており……つまりはそういう事なのだ。
     
    「は、…フーッ…」
    「どうした」
    「!や、別に…」
     
     一度息を整えようと岩陰でそっと深呼吸していると、様子を見に踵を返したエスティニアンが顔を覗き込む。心配を掛けさせてしまったか、と努めて明るい声で応えて目を合わせた瞬間、手甲に包まれた両手が頭に被せたフードをそっと掴んで引き寄せた。
     
    「え、ンッ!」
    「…、ふっ…」
    「あふっん、んぁ…はっ」
     
     フードで陰った視界の中、グレーの瞳がペリドットとぶつかる。フードの中の口付けは、まるで世界に自分と彼の二人きりかのように錯覚させられる。熱い舌が少しばかり性急に唇をこじ開け、滑り込む。甘く燻らされ続けた情欲の火に薪を焚べられ、ブライトはたまらず甲冑に包まれたその体にしがみついた。ずりっいつの間にやら脚の間に膝を潜り込まされ、そのままぐりぐりと擦り上げられる。無意識に合わせて腰を揺すって快楽を追う仕草に、口内を好き勝手蹂躙していたエスティニアンはそっと唇を離し、ククッと喉で笑った。
     
    「相棒、積極的なのは良いが、人に見られるかもしれんぞ」
    「…ッハ!」
     
     とろりと潤んでいた萌黄色の瞳がカッと見開かれる。正気に返ったブライトがぐいと胸を押し返そうとするのを、いつの間にやらフードから外された腕を腰に回すことで阻止した。距離を取ることに失敗したブライトは、諦めたように甲冑の胸に顔を埋めてせめてもの抵抗とした。
     
    「お、お前〜〜〜〜〜ッ!!!分かってたな!?こうなるって分かってただろうが!?」
    「さて、どうだろうな」
    「前食ったって言ってたもんなあ!!?」
     
     王位継承戦直後のエレンヴィルとの二人旅の時にもご機嫌に勧められていた事を思い出す。
     
    「まあ、俺が知っているのはどうだって良いだろう」
    「良いわけあるか!!」
    「それより、さてどうする?これからフーサタイに戻れば、少なくともベッドの上は保証できる訳だが…それとも、ここで抱かれるか?」
     
     若干脅しにも似た提案にブライトは絶句する。思えばコイツは自分の食べた半分を食べている訳で、自分の今の状態は、詰まるところこの男の状態でもある訳で。
     
    「………戻るに決まってるだろ…ッ」
    「よし」
     
     よしではない。
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    ff14Haurneki

    DONEエス光(自機)話。酔っ払いの相棒がなんかめちゃくちゃ柄じゃないこと喋っていますので、苦手な方はご注意。
    ※黄金までのネタバレを含みます。

    自機設定:ブライト・リピア…ローエンガルデ女性24歳。メインジョブ吟遊詩人
    愛をくれし君の ゴーニトルクの宝浜の白砂を、夕日のオレンジが染め上げる。西陽に照らされキラキラと輝く海を一望しながらの食事を楽しめるシェバーブチェは、トライヨラでも1、2位を争う人気を誇るレストランだ。メインディッシュのタコス以外にも串焼きのシュラスコやチップスのナチョス、この地で採れる新鮮な果物を使ったカクテル等メニューは充実している。海に面したパラソル付きのラウンドテーブルの下、武王ウクラマトお墨付きのタコスを頬張りながら、エスティニアンはのんびりとメスカルを煽る。アガベと呼ばれる植物の茎から採った樹液を蒸留して作られたその酒は、イシュガルドで慣れ親しんだワインやエール、クガネで好んで飲んでいた清酒等とは全く異なる味とスモーキーな香りがした。未知を楽しむは冒険者の醍醐味だという、冒険者の先輩である相棒の言を最近ようやっと理解できてきたように思う。どれつまみにシュラスコでも、と串焼きにされたロネーク肉を手に伸ばすと、聞き馴染みのある声が背中に掛けられた。
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