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    MeakanatuKant

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    MeakanatuKant

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    水瀬さんが丹生←モブのお話を書いていたのでじゃあ私も書かなきゃな!!!!!!!!!!ということで書きました
    小説自体描くの5年ぶり
    そこそこモブが気持ち悪くなった

    夜鷹君←モブのお話 観客視点夜鷹君←モブ ある観客
    初めて落語を見て夜鷹君に惚れたモブが近寄ろうとするけど牽制されちゃう話

    「最近私、落語にハマってさ~。○○も見に行かない?」
    大学で初めてできた友人から、からからと笑いながら二人分のチケットを差し出した。
    なんでも彼女は近頃、「皿屋敷」という落語を題材にしたアニメを見たらしく、折角なら友人と観に行きたいと私を誘ってくれたそうだ。
    「私、落語とかほんと何にも知らないんだけど大丈夫かな。」
    「だ~いじょうぶだよ~。このお話は結構有名な奴だし!きっと○○も好きになると思うよ~!」
    彼女はそう言って、チケット一枚と公演のパンフレットを渡した。

    私は生まれてこの方、落語というものに触れたことがない。
    かろうじて寿限無はすこし知っているが、話の流れまでは知らない。
    落語の事も、マナーも知らないずぶの素人が果たして見に行ってもいいのだろうか。
    せめて軽いマナーくらいは知っておこうと思い、あれこれ調べていたら、当日の演者についての掲示板を見つけた。
    今回、皿屋敷の演目を演じる人は最近人気の落語家のようで、何でも美しい見目をしている上に良い声をしていて、観客を引き込むような演技がうまいのだと聞いた。
    ネットでも余程の人気ぶりのようで常に掲示板が賑わっている。
    ……そんなに人気なんだ。
    どんな人だろう。綺麗な人ってあるけど、すごく気になる。落語家の人っておじさんが多いってイメージだったし。
    もし見てみてよかったら、また行ってみようかな。
    私は人生初の落語に心を躍らせながら、公演当日まで過ごした。

    ----------------------

    すごい。
    すごいという言葉しか出てこない。
    あんなに綺麗な人がいるんだ……。しかも、すごく綺麗な声で、綺麗な所作で、落語を演じる人がいるんだ…。

    彼は噂に違わぬ美貌の持ち主だった。
    ライトに照らされ、キラキラと輝く銀の髪。
    じっとこちらを見ている、澄んだ色の眼。
    扇子を持っているその指は細く、新雪の如く真っ白。
    すらっとした細い体を包む深い緑の着物は、彼のその美貌をさらに引き立てている。
    しかも彼は本当に、見た目だけではなかった。
    あんな細い体から、はっきりと通るような声を出すのだ。
    遠くの席でもはっきりと聞こえる声量、それなのに人を惑わさんばかりの美声。
    色んな登場人物を、本当にその人本人かのように演じる演技力、表情。
    その何もかもが素晴らしくて、私はずっと息を吞んであの人を見つめていた。
    そうして、いつの間にか。
    その柔らかな声で、私をもっと惑わしてほしい。
    その華奢で真っ白な指で、私の頬を撫ぜてほしい。
    その美しい眼で、私を見てほしい。
    狂わせてほしい、と。
    そう考えだした頃には落語も終わり、満足げな表情をしながら深々と頭を下げ、そのまま奥へと下がっていた。

    ----------------------

    あれから2ヵ月。
    私はすっかり、桃樂亭 よだ迦の虜になっていた。
    貯金していたお金を遠慮なく使って彼が出る演目は必ず見るようにし、最近上がっていた彼の落語の動画は日に何度も繰り返して見て、彼の出るインタビューが書かれた雑誌は5冊買って大切に保管するようになった。
    毎朝起きてすぐ、彼の落語の情報を漁り、彼が今何をしているのかと掲示板に居座り、彼がインタビューでよく行くと聞いた店まで行って彼の買ったと話していたものを買い、毎晩彼に抱かれる妄想をして眠るという生活を送っていた。
    あの人は私の事をどう暴いてくれるのだろうか。
    きっと優しい手つきで触るのだろう、彼は優しそうな色男なのだし。
    甘く、蕩ける様に抱いてくれるのだろうか、と。
    私は今までなら絶対にしなかったであろうふしだらな妄想をするようになった。
    私はもう、あの人なしじゃ生きられなくなってしまっていたのだ。

    つい先日、桃樂亭 よだ迦が最近この店に出入りしている、という情報をネットの掲示板で見かけた。
    何でもそこは有名な和菓子屋のようで、必ず水曜日の夕方に立ち寄っているそうだ。
    そこは丁度近くに事務所があるのか、極道の者たちがうろつく場所でもあるようだ。
    丁度今日は水曜日。
    彼一人であそこを歩いたら、きっと他の女に声をかけられてしまう。
    或いは、極道者が彼を襲ってしまうかも。
    あの人は私のものなのだ。
    私が助けてあげなくちゃと、そう思い立ちいそいそと身支度を整えた。

    ----------------------

    午後4時55分。
    私は和菓子屋の近くのカフェに隠れて、よだ迦さんが来るまでじっと待っていた。
    かれこれ2時間以上経過しているが、別に苦とも感じなかった。
    なんせ、あの人に会えるのだから。

    いた。よだ迦さんだ。
    相変わらずお綺麗で、何をしていても様になる。
    あぁ、何を買われているのだろうか。
    危ないわ、もしかしたら店主も彼の虜になってしまうかもしれない。
    それだけあの人は魅力的なのだ。
    私が、私があの人を守ってあげなくちゃ。
    あぁ嫌だ、微笑まないで。
    店主も惚れてしまう。
    急いでいかなくちゃ、危ないって言わなきゃ。
    あの人は私の物なのに!
    私の足はいつの間にか動き出していた。
    逸る動悸を感じながら、必死になって彼の背に抱き着かん勢いで。
    ようやっと、ようやっとふたりきりに。

    緩む口元を抑えつつ、あと少しで彼のもとに辿り着くと思った瞬間。
    横から大柄な男が、私とよだ迦さんの間に割って入り、そのままよだ迦さんの腰を抱いていた。

    「よォ、落語野郎。随分帰りが遅いようで心配したぜ。やっぱりテメェにはリードが必要だったか?」
    サングラスをかけ、派手なシャツを身にまとった大柄な男は口元をにやりと歪ませて、彼の腰をさらに強く抱いた。
    「!?…ちょっと、痛いんですが。何度力加減しろと言えば済むんです。…リードが必要なのはあなたの方じゃないんですか?桂一郎。」
    「してあげてるに決まってんだろ、お前が弱すぎるだけなんだよ。もう少し鍛えろよ。へなちょこ」
    「あのねぇ………。貴方のしてる力加減は力加減じゃないんですよ。ほらその節穴な目でよく見てください、昨晩貴方に掴まれた腕に痕がしっかり残ってるんですよ。普通残んないんです。」
    「お前が暴れるからだろ。寧ろ興奮してるようにも見えたけど気のせいだったか?」
    「こんな夕方から何言ってんです阿保」

    誰だろう、この人。
    明らかに距離近すぎるし、なんでいきなり腰を抱いてるの…?
    というか、よだ迦さん見たことない顔してるし、どういう関係……?
    嘘でしょ、独り身のはずなのに。
    私がこの状況にフリーズしていると、大柄な男はこちらをじろりと威圧感たっぷりに睨んできた。
    「……誰だお前」
    「…!!!あ、えっと」
    「おや、最近よく見かけるお客様じゃありませんか。いつもありがとうございます。貴方もここの大福を買いに?」
    「え、あっはい、えと、私のこと覚えていてくれてるんですか…?」
    「勿論ですとも。今後とも桃樂亭よだ迦の一舞台、よろしくお願い致しますね」
    「もういいだろ。ほら帰ンぞ。お前今日晩飯作る日だったろ」
    「ちょっと……。腕引っ張んないでくださいって…はぁ…。せっかちは身を滅ぼしますよ?」
    「お前が遅いだけだろうがよ…。…、…………、………」
    「あちょっと、お客さんに何言ったんです。変なこと言ってないですよね?」
    「うるせぇな……さっさと歩け落語野郎。ちんたらしてると腕ごと引きちぎるぞ」
    「はぁ、野蛮で困ります。いつもあんなに乱れ狂っているというのに。その素直さどこに置いてきたんでしょう…。……それでは俺は失礼致しますね、お嬢さん。また見に来てくださいな」

    よだ迦さんは目を細めて、軽く手を振りそのまま男の人に引っ張られて行ってしまった。
    折角挨拶をしてくれたのに、挨拶をすることもできずそのまま彼を見送ってしまった。
    だって去り際、あの男が私の耳元でこう言ったのだ。
    「コイツは俺の物だ。お前のものにならなくて、残念だったな?」と。
    あの美しい、よだ迦さんが。あの如何にも粗そうな男の物?
    しかも去り際、よだ迦さんのうなじに赤い斑点と酷い噛み痕がしっかりと残っているのが見えた。
    酷い噛み痕に、大量のキスマーク。
    それにさっき乱れ狂って、って、よだ迦さんが返していたし。
    どういう事、なんも聞いてないよ。
    あの人、今独り身じゃなかったの?
    よだ迦さん、見たことない顔してあの人をじっと見つめてた。
    あんな顔するなんて聞いてないよ。

    私は今起きたことを受け入れる事が出来ずに、その場を呆然としていた。
    真赤な夕暮れ、公園から聞こえてくるチャイムが、5時を知らせていた。

    ----------------------

    或る落語家について語る掲示板。
    少し前までは、もっぱら彼に惚れた者たちが愛を叫ぶ場所となっていたのだが、つい先日ある一つの書き込みが話題を呼んだ。
    『金木犀色の目をした男が、かの落語家のお相手らしい』
    その書き込みは掲示板を震撼させた。
    あまりの衝撃的な書き込みに様々な者がショックを受け、精神を病ませたものもいた。
    唯一その金木犀色の目を持つ男だけは、書き込みを鼻で笑い、「これで虫除けになるといいんだが」と言ってその掲示板の画面を閉じたのであった。
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