星「電気をつけたら先生に見つかるんじゃない?怒られるよ、桃吾が」
「あ?お前も怒られろや」
「課題を教室に忘れたのは桃吾じゃん。俺はぁ、付き添いだし?優しいでしょ」
「先生なんかに見つからへんし、怒られへん」
「ホント?」
「知らん。それにしても、この時間の教室て、ほんまに暗いな」
なんとなく電気を点けるのが面倒で、暗い教室の中を進む。綾瀬川が脅してきたからではない。面倒だからだ、と桃吾は独り言のように繰り返した。夜の学校は消化器の赤いランプ以外に光るものがなく、窓からの明かりもない。大阪なら、外のビルや住宅やどこかしらが光っているものだが、ここは群馬だ。しかも、郊外とも言えない田舎の畑の真ん中で、窓の向こうはグラウンドと第二グラウンドと畑と田んぼが広がっている。夜はあかりのあの字もない。
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