きらきらのスープ ナラア街で胃腸風邪が流行していた。街に二つある医療施設は連日患者が絶えず、重症者のベッドが空くことはない。それに伴い医療施設併設の薬局以外でも、診断魔術を使える者がいれば薬を処方をできることになった。街の薬屋でそんな能力があるのは、レイヴンの伴侶のアディしかいない。彼は不眠不休で薬を精製し、客を診断し、適切な薬を与えて回った。こうしてようやく終息……の目処が立ったところでついに力尽き、厄介な胃腸風邪に罹患したのである。
アディはここ三日ほど食事を摂れず、店舗に常備していた、塩と砂糖を混ぜた水だけを飲んでいる。レイヴンもこっそりその水を味見をしてみたけれど、本当にヒトが飲んで平気なのか疑わしい、奇妙な風味だった。
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