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    ブラウン

    ラス為基本カラプラ。気楽にスタンプ押してください。感想など頂けると泣くほど嬉しいです。

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    ブラウン

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    カラプラ(婚約者確定)
    プラ様の誕生日パーティーに向けてお菓子を作る事になったカラ隊長だったがまさかの問題が発生?
    唱える呪文はパルプンテ?

    ギャグとして書いたのですが、ほのぼの?甘??
    ちなみにアサくんはカラ隊長最推しですので目を輝かせて全力で尊敬してます。

    祝福のかたち夜騎士館の厨房にアラン、エリック、アーサーに来て貰い問題物をテーブルの中心に置いた。
    「どうしたらこうなるんだ?」
    「分からないから困っているのだろう」
    アランの言葉に私はむっとしながら答える。
    目の前でアーサーが手に一つずつ取り勢いよく合わせるとその形は変形もせずカァァァンと高いいい音が鳴った。
    まるで金属で出来たような音だなと他人事のように思う。
    「すンげぇ防御力高いッスね!」
    流石のアーサーでも褒め言葉は出なかったようだ。
    いや、何故か目をキラキラさせてるから褒めているのか??
    エリックは包丁で割ってみようとソレに突きつけるもののキィィーーンとこちらもまるで金属同士をぶつけたような音しか出ず全く歯が立たない。
    エリックの口の端が引き攣った。
    「これ食べれるんか?」
    「さあ?だからお前たちを呼んだんだ」
    初めて作った作品はどのように考えても失敗に終わった。
    こんなのを王族であるプライド様に渡すことなど出来ない。
    私は椅子に座りレシピ本をもう一度見るも何がいけなかったのか全くわからないから困った。
    彼らも理由が分からないと首を傾げる。
    「あーあれだ、これ飛ばして敵にぶつければ立派な武器になるぞ?」
    「食べ物で遊ぶな!」
    「さっきの質問には答えなかったくせに」
    アランに対しては八つ当たりだと分かっている。
    上手く出来なかった自分に苛立つ。
    カヌレ・ド・ボルドー、我が領土で昔から作られてきた溝のあるお菓子だ。
    元々表面はカリッと固く中の生地もしっとりモチモチとした重い生地が特徴でバターと酒の香るお菓子である。
    昔から紅茶の伴に食べるのが大好きだった。
    表面が固いのが特徴と言ってもこんなカヌレ見たことがない。
    アランがとうとう剣で叩こうかと言い出したのでその口に無理矢理捩じ込んでやった。
    アランはもぐもぐと口を動かし首を傾げた。
    「うーんん?食べ…れはするな」
    「食べれるのか?」
    「お前、最近俺の扱い酷くね??」
    アランの言葉に「そうか?」と返しながらも覚えはある。
    一ヶ月後のプライド様の誕生日に私が婚約者だと発表される事が決まった。
    近衛騎士には先に団長から知らされている。
    そんな中、私は正直不安で落ち着かない。
    騎士のままプライド様の隣に立てる事は嬉しいものの、王族という立場になる事で騎士団、そして彼らとの交流関係も変わってしまうのではないかという不安だ。
    今のままが良くても、お互いにどうしようもない事態で変わってしまうかも知れない、そんな漠然とした不安が付き纏っていた。
    だが、いくらアランとはいえ無駄に当たるのは良くないと私も反省をし、意を決して自作のカヌレを口に入れた。
    噛めない程固いかと思ったがそんなことはなく、言うならば飴がコーティングされている様な表面だけがやたらと固くなっていただけのようだ。
    そして肝心の味は……
    「大味だな」
    「な?」
    食べれないほど不味くはないが美味しくもない。
    言うならば全てがボケた味だ。
    レシピ通り作ったというのに何故こうなったのか。
    「俺も料理ならまだしも菓子はパンケーキくらいだからな。小麦粉と砂糖と水を混ぜて焼いたのを弟妹に食べさせていたくらいだ」
    「ミルクと卵じゃないンですか?」とアーサーが聞けばアランは笑いながら「山奥で手に入らねぇ」と返した。
    同じお菓子でも手に入る材料で変わるのかと驚いていると「勿論ミルクと卵の方が美味いぞ」とアランが私の背中を軽く叩く。
    叩いたその意味は私がアランに当たったことに対して気にすんなってことだろう。
    アランの自然過ぎるこういう軽いやり取りにどれだけ私が救われて来たか、だからこそ失うのが怖いのだ。
    少なくともアランとの関係だけは壊したくないと強く願った。

    そもそも料理などしたことない私がそのお菓子を作る事にしたのは婚約者プライド様の誕生日が約一ヶ月後にあるからだ。
    婚約者として初めての誕生日、プライド様に何が欲しいか聞いたら凄く考えられてから『可能ならカラム隊長の作った紅茶に合うお菓子を食べてみたいです』とお願いされた。
    婚約者となり初めての誕生日にそんなお願いされるなど思ってもいなかった。
    〝料理上手〟なプライド様に、料理をしたことの無い私が作ったものを出すのは如何なものかという思いもあったが、プライド様の所望を断ることなど出来るわけがない。
    「喜んで」と答えたのが運の尽きだった。
    手始めに自分の好きな物を作ったのだが、これが大失敗だった。
    「こんなにも難しいとは……」
    「凄い時間が掛かるお菓子なんですね」
    エリックがレシピ本を覗き込みながら言う。
    「初めてなら簡単なものから作った方がいいですよ。クッキーなら教えられますが?」
    エリックの母のクッキーをプライド様が喜んで食べた話を思い出せばそれが一番なのだろうとエリックに頼んだ。





    綺羅びやかで華やかで豪奢なプライド様の誕生祭とカラムとの婚約発表を無事に終えられた。
    これからカラムはプライド様の婚約者としてその隣に立つことになる。
    そんなプライド様の誕生祭から3日たった夜、午後の近衛騎士後カラムは1人残った。
    前から約束していたプライドの部屋でささやかな誕生日パーティーを行う為だ。
    カラムはプレゼントに用意したクッキーをプライドに渡しながらこの一ヶ月にあった出来事を話して聞かせた。
    「そんなにも大変だったんですか!?」
    この約一ヶ月にも及ぶクッキー鍛錬の日々を報告すればあわあわと口元に手を当て驚かれた。
    「私もこんなにも大変とは思いませんでした」
    思い出せば大変な一ヶ月だったが、終わった今となれば笑い話にも出来る程充実はしていた。
    余りにも大変すぎて王族になって騎士達と疎遠にならないかという憂いの気持ちも忘れさせてくれた程だ。
    それがとても有り難かった。
    プライドとの夜の一時を過ごしてから毎日のようにクッキーを作り続けた。
    最初はエリックとだったが毎日付き合わせるわけにもいかず、アーサーやアランにも手伝ってもらった。
    だが、しかし、結果はこの約一ヶ月で素人の域にも達しなかった。
    誰に手伝って貰っても何故か失敗ばかり続いた。
    真っ黒に焦げてしまったり、焼きムラが出てしまったりなら分かるが、上手く焼けたと思って手に持つとボロボロと崩れたり、逆に硬かったり、食べてみると味がしなかったり、他には外は生焼け中は真っ黒なんて事も。
    余りの説明出来ない現象にエリックも首を傾げるほどだった。
    一番最悪だったのはアランとアーサーが作った時は上手く出来るのに私が入るとどんなに火を入れても生焼けだった時だろうか。
    何故かアーサーが目をキラキラさせて「すげぇ!!」と私を見ていたのは今でも忘れられない。
    何度検証してもやはり原因が分からない現象に私が何か〝呪い〟でも受けているのかと本気で考えてしまった程だ。
    結局本番の昨日はエリックを中心にアーサー、アランが手伝いに入り、ならばとアランの呼び掛けでアーサーがハリソンまで連れてきて5人で作り、出来上がったのだった。
    ハリソンでさえ型抜きをしたというのに、私は材料の量りや食器の洗い、ラッピング位しかしておらず、そんな状況で私が作りましたという顔は出来ないと、プライドに己の不甲斐なさを報告する事になってしまった。
    プライドはカラムの手作りお菓子を所望したというのに、プライドの手の中にあるクッキーのプレゼントはプライドの近衛騎士5人による〝プライド様お誕生日プレゼントの結晶〟となってしまった。
    しかも肝心のカラムはほぼ関わってはいない。
    「本当に不甲斐なく申し訳ありません」
    「いえ、私の方こそお手数お掛けしました」
    プライドからすればただの思い付きだったのにまさかこんなにもカラムたちを悩ませる結果となるとは、手に持つクッキーがとても重く感じた程だ。
    (いつもの100倍は有り難く味わって食べなくては……)
    何でも卒なくこなす、手先の器用なカラムがここまで苦戦した上に何も出来ないとは全く思ってもいなかったし、どうしても食べたいと思ったわけでもない。
    出来ないなら出来ないで言ってくれれば他の物を考えもした。
    だが、カラムの性格上、王女であるプライドのお願いを断るなど出来なかったのだろうとも思った。
    カラムは毎晩の様にプライドにハーブティーを淹れてくれる、その手つきはとても繊細で手際がよく、見ていて惚れ惚れする程だ。
    生のフルーツの皮むきもスルスルと包丁で綺麗に剥いていたからてっきり料理も得意なのだと勘違いをしていた。
    そして聞けば聞くほどパルプンテを唱えたようなクッキーの様子は自分の真っ黒な炭を形成する呪いに近いのかも?と考えてしまい、もしかすると自分との婚約で彼にまで呪いが移ってしまったのだろうか?と真剣に考え始めた。
    もしそうならとんでもない事だ。
    自分のせいでカラムが不器用になってしまうなどあってはならない。
    だが婚約発表をした今更婚約解除もできない。
    それも理由が『料理が出来なくなる呪いから解放させるためです!』など誰も納得しない。
    かの有名な武将ですら〝三日天下〟と言われながらも11日は天下人だった筈だ。

    それを文字通り〝三日天下〟ならぬ〝3日で婚約破棄〟など笑いすら起きない。
    料理が出来ない事よりも大惨事である。

    そんな失礼な事をプライドが考えているとは全く気付いていないカラムは穏やかな顔で話を続ける。
    「本当に今回のことで更にプライド様は素晴らしいと痛感致しました。いつも美味しい料理を手作りされて。贅沢にも私も何度も頂いていますが、どれもこれも美味しくて感心致します」
    「い、いえ、私などッ!!」
    本当は炭を形成する達人です、など優しくも尊敬の眼差しを向けて言ってくれるカラムには言えない。
    プライドが作ったとカラム達が思っている料理もカラムよりも作業が少しばかり多いくらいで、その殆どは天使であるティアラが行っているのだ、と。
    言えない事実に口を閉ざしてしまうプライドの様子はカラムからはいつもの謙遜にしか見えない。
    「こちらのクッキーですが、先に味見したところとても美味しく出来ました。エリックの母上のレシピですのでプライド様もお気に召すと思います」
    「まぁエリック副隊長のお母様のクッキーですか!それはとても嬉しいです!!」
    言い出すタイミングを完全に逃したプライドはカラムに心で謝りながらもエリックの母のクッキーに目を輝かせた。
    「とっても美味しかったんです!また食べられて嬉しいです!」
    その様子にカラムは目を細めた。
    「もし良かったら毎年このように近衛騎士からプレゼントさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
    「え?」
    突然の申し出にプライドの目がパチパチと瞬いた。
    「私は手伝いしか出来ませんが、毎年近衛騎士全員からのプレゼントをプライド様にお渡ししたいと思っております。表向きは私からとはなってしまいますが、皆プライド様にお渡ししたいと常々思っておりました。今回偶々ですが、この形であれば渡せるのではないかと思いまして。プライド様が喜んで頂ければ、そうしたいと思うのですが、どうでしょうか?」
    プライドは申し出は嬉しいと思いつつも、忙しい隊長格の皆さんが自分の為に時間を使って貰うのは申し訳ない、と口を開こうとすると。
    「嬉しかったんです」
    カラムの優しい眼差しとその言葉に口が閉じた。
    「我々近衛騎士はプライド様から誕生日プレゼントを頂いているにも関わらず、プレゼント出来ないことを常々残念に思っていました。今回己の不甲斐なさからでしたが、皆でプライド様にプレゼント出来た事がとても嬉しかったのです」
    カラムは己の不甲斐なさに苦笑しながらも、それでも笑顔で伝える。
    一番この形を嬉しく、そしてこれからも続けたいと願ったのはカラムだ。
    他の近衛騎士達と違い自分はプライドに直接出来るようになった。
    それを妬む彼らではないが、やはり気にはなった。彼らも当日は難しくても、日付をズラして数分だけでもプライド様に直接誕生日のお祝いと共にプレゼントを渡す事が出来ればいいと願った。
    それが今回のように己か入ることで近衛騎士と婚約者という2つの立場を使い、その架け橋が出来るのではないかと。
    「今回所望されたプライド様へのお菓子作りは私は勿論彼らもとても喜んでました。みんなプライド様に感謝を込めてプレゼントをしたくて仕方ないのです」
    「そんな、いつも私の方がお世話になっているのに……」
    毎日護衛してもらい、時には振り回してしまう自分の方が感謝をするべきだと常々思っている。
    そのプライドの様子にカラムは畳み掛ける。
    「それからこちらが近衛騎士全員からの誕生日のお祝いの花束です」
    大きな袋から出されたのは真っ赤な真紅の花束だ。
    本数を数えれば8本

    『あなたの思いやりに感謝します』

    差し出された花束にプライドの目に涙が浮かぶ。
    王女という立場からこうやって個人的にプレゼントを貰うのはステイル、ティアラ、アーサー、ジルベール宰相だけだったから、近衛騎士の全員からのプレゼントは思ってもないサプライズだ。
    「嬉しい!またドライフラワーにして飾りますね!!」
    大切で大好きな近衛騎士全員からのプレゼントは本当に嬉しい。
    ずっと持っていたいが花を弱らせては元も子もない、マリーに頼んで花瓶に生けて貰う。
    「今度からはみんなから渡したいと思いますが、いかがでしょうか?」
    「………とても嬉しいです」
    ずるいな、とカラムの喜ぶ笑顔を見ながらプライドは思う。
    涙を浮かべるほど嬉しいのだから断る事が出来るわけない。
    真紅の赤い薔薇で言葉を伝えてくれるなんて、カラムの差し金に決まっている。
    婚約者になってからカラムのそういうずるい所が見えるようになって来た。
    そしてそれがとても心地良いのだ。
    「あとこれは私からのプレゼントです」
    今度は別の袋から取り出されたのは小さく薄い袋に赤いリボンで作られた大きなロゼットが付けられ可愛く綺麗にラッピングされたプレゼント。
    差し出したカラムは恥ずかしいのか真っ赤な顔で、目も泳いでいる。
    「わぁ!クッキーと薔薇の他にも!わざわざ買ってきてくれたのですね!ありがとうございます!!」
    見たこともないラッピングで店名も印字されていないがとても可愛い。
    クッキーも花束も近衛騎士からということでカラム単体のプレゼントをわざわざ買ってくれたのだろう。
    ネックレス等の小物だろうか?と中身を想像しながら受け取る。
    「いえ、……私が作ったものですので気にいるかどうか……気に入らなかったら無理して使わなくてもいいので、……でもどうか捨てることだけはなさいませんようお願いします」
    「え!?」
    作った、と言うことはこのラッピングもカラムが自分でしたのだろう。
    マジマジと見れば見るほどロゼットも包装紙も可愛くて綺麗なラッピングだ。
    センスが良くて手先が器用だとは思ったがやはり、センスが良くて手先が器用なのだと再確認してしまった。
    「凄い、お店の方がしてくれたのかと思いました。それぐらい可愛くて綺麗です!!」
    「恐縮ですッ!」
    真っ赤な顔で頭を下げられた。
    「開けてもよろしいですか?」
    「どうぞ」
    許可を得てから丁寧に開ければ出て来たのは四葉のクローバーと天道虫の刺繍のコースター2枚だ。
    「すごい、とても可愛いわ……」
    想像もしていなかったプレゼントに目を見開いて思わず言葉が漏れた。
    まさかこんなにも可愛らしいコースターの刺繍をカラムが作るとは想像も出来なかった。
    思わず言葉少なくマジマジとコースターを見てしまうプライドに、恥ずかしさからかカラムは口に手を当てて赤い顔で言い訳を始める。
    「お菓子作りは出来ませんでしたが、刺繍ならと頑張ってみました。ネルさんの様にプロの方のような出来にはなりませんでしたが、お菓子作りよりは、断然得意なようです………」
    最後の方はむにょむにょと話すカラムにプライドは手に持ったコースターとカラムの顔を何度も目を行き来させる。
    プライドは刺繍も苦手だ。
    それを得意と言えるカラムが凄い。
    まだカラムには呪いが移っていないということだろうか?と失礼な事を思ってしまう。
    「刺繍は初めてですか?」
    「ええ。ですが騎士団でも団服の縺れなど補修は新兵時代からずっと行っていますので針仕事は一般の男性よりは慣れています。刺繍は初めてでしたので、本に作り方が載っていたのをそのまま真似ただけです」
    確かにプロのネルと比べたら甘いところはあるが、ネルはそれで食べているプロだ。
    カラムの作品は素人が本を見ながら初めて作るものとしてはとても綺麗で、あと何回か練習すれば売れるくらいの腕になるのではないかと思えるほどだ。
    正直羨ましい。
    「凄く嬉しいです!早速今日から使いましょう!!」
    「ぁりがと…ございます……!」
    カラムはプライドが喜んでくれた事に、喜びや嬉しさを感じつつも申し訳なさを感じていた。
    カラムは刺繍の難しさを全く理解していなかった。
    レシピ本を探していた時に目に入った刺繍の本を見てネルの作品を纏ったプライドを思い出して思わず手に取ってしまった。
    その後お菓子作りを大失敗した事で頭を抱え、縋ったのがその刺繍の本だった。
    そしてその通り作ったら素人の出来ではあるものの全く問題なく出来てしまったのだ。
    いくつか作り出来の良かったコースターをプレゼントにした。
    飾りのロゼットもその本に描かれていたのを参考に作っただけである。
    作成に時間は掛かったものの難儀し結局出来なかったお菓子よりも全く問題なく作れてしまったコースターにどれ程の価値があるのか疑心でしかなかった。
    それでもプライドの性格上手作りプレゼントを喜んでくれるだろうと半ば強引に己を説得し勇気を出して渡したのだ。
    そして予想通り喜んでくれたプライドは早速笑顔で使ってくれることに、今更ながら打算的だったとジワジワと羞恥心が込み上がってくる。
    それでも「可愛いです!」「嬉しいです!」と花のような笑顔で何度も言ってくれるプライドのとても愛らしい姿に、最後には心から作って良かったと顔を綻ばせた。


    この日の為に用意した美味しい紅茶を淹れ、ティーカップはカラムの作ったコースターに置き、2人で近衛騎士の作ったクッキーを食べる。
    勿論その机には花瓶に綺麗に生けられた真紅の薔薇が飾られている。
    一杯の紅茶を味わいながらクッキーを摘む。
    カリッといい音をして口の中で砕ける甘くて美味しいクッキーに2人は自然と笑顔になる。
    とても美味しいが2人にしては多すぎる量に明日まで保存出来るかしら?と心配になる。
    特に今の時期は湿気が多くこカリッとして食感が失われそうだ。
    2人同時に紅茶を飲み終えればカラムが優しい笑みをプライドに向けた。
    「もし良かったら専属の3人とも飲もうか?」
    「え?」
    突然のカラムからの提案にプライドは勿論、専属の3人の目が見開く。
    だがその驚きは全く違う意味合いだ。
    「いいの?」
    「私は問題ない」
    プライドの目が輝くのを見てカラムは静かに頷き紅茶を淹れるために席を立った。
    プライドが笑顔で3人を無理矢理にソファに座らせるのを見ながらやはりこれが正解だったなと、言って良かったと思った。
    ただ最初から分かっていながらも何も言わなかったのは、最初の一杯だけは2人だけで飲ませてほしいと願ったからだ。
    それぐらいは婚約者の特権として、初めて迎えるプライドの誕生日を祝いたかった。
    「プライド様、来年はステイル様やティアラ様達も呼んで盛大にパーティーをしましょう」
    「〜〜ッはい!!」
    プライド様を支えるみんなで祝いたい。
    1年にたった数時間だけでもプライド様が王族だということを忘れて、ただこの世界に生を受けた女性としてみんなと過ごせる時間があればいい。

    王族になると決まった時から漠然と抱いていた不安、それはプライドがいつも抱いている不満である皆から壁を感じているのと同じなのではないかと気付いた。
    ならば婚約者として彼女が一番喜ぶことをプレゼントするべきではないかと思うのは当然だ。
    例えそれが王族としてあり得ない事であろうとも。
    そして今日一番の笑顔をプライドは見せた。
    来年は出来るだけ多くの人を呼んで身内だけのパーティーを開こう。
    レオン王子とセドリック王弟も呼んだら喜んで来てくれるだろう。
    他にも毎年毎年増えていけばいい。
    そして皆から愛されていると実感して頂きたい。


    貴女はこんなにも愛されている素敵な女性なのだと。


    誕生日当日の華やかさとは比べようもない程ささやかな誕生日パーティー。
    だがプライドにとってはこれからの人生で一番幸せな誕生日パーティーとなる。
    プライドを支える一番身近なみんなからお祝いの言葉とプレゼントを貰える日になったのだから。

    「プライド様、愛してます」
    「ありがとうカラム隊長。私も愛してます!」

    まだまだ婚約したばかり、私達は私達で2人のかたちをこれから作っていくのだ。
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