さくすおポメガ 前略。
おれは敷布団の上で胡座をかいた桜君の足の、ひし形に空いた隙間で香箱座りをしている。
「……大丈夫か?」
顔を見せないからか、桜君はいつもより心配してくれているけれど、正直なところぜんぜん大丈夫じゃない。
なぜなら、おれを撫でる桜君の手つきが良すぎるんだもの。初めの頃なんてガシガシゴシゴシ、それはもう芋洗いみたいに雑だったのに、いつの間にか毛並みに沿って撫でたり、撫で方に緩急をつけたり、力加減も文句のつけようがなくなっている。
それのなにが問題かというと、いったい誰がこんな甘やかし方を教えたのか、ということだ。
犯人として真っ先に思い浮かぶのは、にれ君と桐生君。あとはクラスの中なら、実際にワンちゃんを飼っている柿内君の可能性もある。上級生なら、楠見さんだろうか。梶さんもリサちゃんで慣れてるだろうし……。
1959