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    k_yv12

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    k_yv12

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    ウェブボでお題頂きました、虎トウ(か愛されてトウマくん)で虎於さんの家族からも可愛がられる(愛される?)トウマくんです。
    遅くなりまして大変申し訳ありませんでした。
    何か思ってたのと違ったらすみません!!!
    ※主にご家族に対して多大な妄想、捏造が含まれますのでご注意下さい。虎於くんが初恋童貞で、架空のお兄さんが沢山喋ります。

    「連絡がつかない?トウマと?」
    「はい。」

    ある日の夕方話がある、と巳波に呼び出され、電話じゃ誰に聞かれるか分からないから念のため、といつもの溜まり場に到着すると、既に宇都木さんも、悠もそこにいた。




    そこで聞かされた思いがけない言葉に思わず巳波の顔を見つめた。俺の視線を受け、巳波はなんとも言えない顔をしている。

    「正確には一昨日の仕事後、夜から連絡がつかず、家に帰った気配もなく、直前に背の高い男性に連れられて高級車に乗り込んで行ったという目撃情報があります。」


    「オレその夜トウマとラビチャしてたんだけど、変なところで返信返ってこなくなっちゃって。家に着いてそのまま寝落ちしちゃったのかなって思ったんだけど…」
    ソファに座り、悠もいつからかそこに置いてある犬のぬいぐるみを抱え、心配そうな表情を浮かべている。
    「それは…何というか。微妙なところだな。悠、既読は付いたのか?」
    「ううん、まだ付いてない」

    トウマはこまめに連絡をする方で、エゴサもそこそこするからスマホは基本的に手放さない。にも関わらず既読すら付かないとは。今スマホが手から離れた状態にあるってことか?

    「昨日と今日、狗丸さんはオフで、明日の仕事の送迎の件で狗丸さんに連絡を取ってるんですが繋がらなくて。いつもラビチャも着歴も見たらすぐ折り返し連絡もらえるんですけど。」
    いつも穏やかな宇都木さんも困った顔をしている。

    「それで、昨日の夕方、六弥さんが近くにいらっしゃるとの事でしたので、ついでに狗丸さんのお宅に行ってインターホンを鳴らしてもらいましたがどうやら家に誰もいない様だと。…なので一昨日狗丸さんを見た人がいないか聞いてみたところ、そんな目撃証言が。」

    「六弥か…」
    巳波の口から挙げられたのは意外な人物の名前だった。
    「ええ、探していらっしゃったアニメのウエハースをその辺りのコンビニで見かけたと仲間に教えてもらったそうで、今日はその辺りを回ると意気込んでいらっしゃったので。」
    「あぁ…」

    カードを買うとおまけにウエハースが付いてくるとかなんとかいうあれか。前にいくつか食べきれないものを貰った事がある。

    「まぁ、六弥なら顔見知りだし、居留守を使う事もないだろうな。それで?トウマと一緒にいた男っていうのは?背の高い男って言ってもな…」
    「それが…目撃者というのが…七瀬さんなんですが、特に無理やりというよりは、むしろ和やかな雰囲気で狗丸さんは白い車に乗り込んでいった風だったと。」
    「七瀬?それじゃテレビ関係者じゃないってことか。」
    七瀬陸は雰囲気も言動もほわほわしているが、人の悪意などには敏感だと思うし、悪い雰囲気などにも敏感な方だと思う。良くない流れではなさそうだ。

    「トウマは本当に誰とでも仲良くなるからな…」
    この間サシ呑みをした時、少し遅れて俺が到着した時、焼き鳥屋の常連だという屈強な男と笑い合いながら肩を組んでいたのを思い出す。

    「それで、どうするの?」
    悠の言葉に俺は顔を上げた。

    「今の段階では1日連絡が取れないというだけですので…。狗丸さんも一応合意で車に乗られた様子との事ですし…皆さんにも相談したくて集まってもらったんです。」
    宇都木さんがそこで漸く口を開く。
    「なるほどな。」
    「どう思われますか?」

    宇都木さんは俺たちの顔を見渡した。

    1番先に言葉を発したのは、巳波だった。
    「まあ、狗丸さんももう大人ですから。その男性がもしかするとお友達だったり…恋人、だったりするかもしれませんよね。ほら、恋人に夢中で一日連絡が取れない、なんて珍しくないでしょう?」
    「え、トウマの、ええと、か、彼氏って事?!」
    悠が驚いた様に大きな声を上げる。
    「車の中には女性がいたのかもしれませんので彼女かも。可能性はゼロじゃありませんよ。ねえ御堂さん。昔貴方もお付き合いが盛んだった時、連絡が取れないなんてザラでしたし。」
    「え?あ、あぁ……こ、恋人か…」
    突然話を振られ、俺は頭が真っ白になった。トウマの恋人?そんな話は今まで聞いたことがない。というか、女への対応を見てると今まで付き合った女がいたのかすら怪しい。


    「ふふっ。御堂さん落ち着いて。冗談です。まぁ、もし、もしもそんな存在がいたとして、一生一蓮托生である私たちにすぐに紹介しないなんてあり得ないですけどね。」
    「巳波、目が笑ってないよ。でも同感。」
    悠が腕を組み、頷きながら同意する。
    「オレたちにも紹介できない恋人なんて認められない!」
    「そ、それもそうだな。トウマは俺の交際関係にあれこれ言ってきたんだ、俺にもトウマの交友関係に口を出す権利はある。」
    俺も徐々に思考を取り戻してきた。あの時の俺は確かにアイドルとして軽率だった。トウマがあれこれ口を出してきたのは仕方ないのだが、それはそれ、これはこれ、だ。
    「そうだよ!それに、トウマはお人好しで危なっかしいところがあるんだから、変な奴に引っかかる前にオレたちが守らないと!」

    「全く狗丸さんたら仕方ないですね。」

    うんうんと頷き合う俺たちに宇都木さんがしみじみと呟いた。

    「今日も皆さんから狗丸さんへの大きい愛を感じるなぁ。あ、僕は恋愛は自由派ですが、週刊誌などに撮られる前にこちらへ一応は相談して下さると助かります!」







    「とりあえず何回かの着信と、連絡下さいとメッセージを入れておきますので少し様子を見ましょう。御堂さん、今からラジオのゲスト出演でしょう?ちゃんとお仕事してきて下さいね。」

    巳波は笑顔でトウマへの発信履歴で埋まる画面を俺たちに見せた後、ラビチャにスタンプを連打し始めた。
    「もうそれ何回か、とかじゃなくない?鬼電じゃん。」


    「あ、あぁ。何か分かったらすぐに連絡してくれ。」





    「トウマに恋人、か。」
    車に乗り込み、現場へ向かう途中ふと出た小さな独り言はすぐに空に消えた。今までそんなこと、考えもしなかった。
    トウマは誰にでも…優しいから。恋人という特別な存在ができるなんて、想像してなかった。

    脳裏にトウマが小さくて華奢な女の肩に手を回し、笑いかける光景が浮かぶ。まぁ、あいつも身長が低い方でもないし鍛えている。本人は謙遜するだろうがアイドルになるだけの容姿でもある。絵になるであろうその風景を想像し、俺は…胸に言葉にしがたい痛みと、閊える様な不快感が湧いた。
    俺は、少し前からトウマに恋をしている。

    今更恋、なんて口に出すとなにをと笑ってしまいそうになる。しかし以前何度も目にしては実感できなかったその意味を、今は痛いほど理解している。
    苦しい、切ない、嬉しい、辛い、心地よい、あったかい。…愛おしい。空っぽだった俺は、トウマを通してそれを知ることになったのだった。

    生まれたばかりで雲を掴むようなその感情に、俺は振り回されてばかりだ。今日だって、連絡が取れないと聞いた時は不安で胸がいっぱいだったのに今は、顔も知らない女に嫉妬している。

    「はあ…」
    トウマ、今どこで、何をしているんだ。
    俺はため息を吐いた。





    仕事を終え、駐車場を歩きながらスマホを起動すると、スマホが着信の振動を伝える。着信元は、宇都木さんだった。急いで通話ボタンを押す。
    「宇都木さん?!トウマは?」
    「あ、御堂さん。お仕事終わりにすみません。ええと、狗丸さんは無事です。連絡がつきました。」
    「本当か?良かった。」
    まずは無事という言葉に俺はほっと胸を撫で下ろす。
    「それで、今トウマはどこに」

    言いかけた俺の背中に、今一番聴きたかった声が投げかけられた。

    「トラ!」

    振り向くと、トウマが笑顔で手を振っている。

    「トウマ!!!」
    体が衝動的に動いた。トウマにすぐに駆け寄りそのままぎゅっとトウマの身体を抱きしめた。暖かな体温を確かめる。

    人通りは多くはない駐車場ではあったが、男同士の抱擁にちらちらと好奇の視線を感じる。しかし俺はそんなことなど気にしていられなかった。

    「先ほど御堂さんの居場所を伝えると、そちらへ向かわれるとの事でしたので。無事会われたみたいですね。それでは私はこれで。失礼します。」
    電話口から宇都木さんのほっとした声が聞こえてくる。
    「ありがとう。宇都木さん。」
    「いいえ。それでは。」








    「あ、ええと、なんかすっげぇ心配かけたみたいで悪かった。」

    電話を切ると、トウマが俺の腕の中でバツが悪そうに苦笑した。

    「そうだな。すごく心配した。…でも、帰ってきたならいいさ。」
    もう一度腕にぎゅっと力を込めた後、名残惜しいが腕から解放してやった。


    「それで、今までお前どこに、」

    1日連絡がつかなかったくらいで会ってすぐに急かすように居場所を聞くなんて、本当に必死で笑える。だが、番組の前に感じた胸のざわつきと、巳波の「恋人」と言う言葉がずっと引っかかっている。

    「あの…ここで立ちっぱもなんだし、…俺んち来ねぇ?」

    周りの視線が気になるのか、トウマは俺の袖を引き、小さい声でそう言った。




    トウマの部屋に着くと、トウマは俺をソファに促し、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出して俺に渡した。
    「悪い、忘れてた。今何もなかったんだった。」

    「気にするな。それより、トウマは今までどこで誰と会っていた?」
    水を受け取り先ほどと同じ質問を投げかける。こんなに気になるなんて、俺も余裕がないな。

    「心配かけて悪かったって。ミナにも散々叱られちまった。…あ、…トラ、これ。」
    どうやら仕事の連絡がつかなかった事を責められていると勘違いしているらしい。トウマは苦笑いして、俺にスマホを差し出した。真新しいそれは、見慣れたトウマのものではない。そして今、振動し、着信を伝えている。
    「スマホ?」
    着信中のそこに表示されている名前を確認して俺は驚きの声をあげた。

    「え、に、兄さん?」

    「そーそー!トラのお父さんもお兄さん達もめっちゃかっこいいのな!!遺伝子ってすげーわ!」

    嬉しそうにはしゃぐトウマのスマホを受け取り、恐る恐る通話ボタンを押すと、聞き覚えのある声が耳に響いてくる。
    「兄さん!どういうことだ?」

    「やあ虎於。」
    聞き覚えのある、穏やかな声。
    兄の話を聞くに、俺が家族と一緒にいる間もZOOL、特にトウマの話ばかりしている。父さんが一体どういう子なのか気になると、兄さんに話をしたらしい。そして、兄さんがトウマをうちに招待し、話をしたと。
    高校の時も、大学の時も、彼女ができてもそう長くは続かなかったし、彼女の話もあまり家族の前でしなかったから、トウマの事が気になっていたそうだ。テレビを見て顔は知っているが、どうやってコンタクトを取ろうかと思ってたら、たまたまトウマを道すがら見かけて思わず声をかけてしまったと。
    変装もせずにウロウロしてたのか?とトウマを見ると、(悪い、もう帰るだけだったし、マスク間違えて捨てちまっててさ)と小声で伝えてきた。
    「兄さん…」
    確か兄さんの私用の車の一つは白い高級車だ。兄は俺よりも身長は高くないが、秘書の1人は大柄な男で、俺も何度か会ったことがある。
    予想だにしない繋がりだった為思いつかなかったのだが、冷静になって考えてみれば確かに。俺の兄だと知ればトウマも特に警戒することもなく車に乗り込んだだろう。
    「心配をかけて本当にすまなかった。」
    兄は俺に黙ってトウマを連れて行った事を電話口で必死に謝ってくる。その様子に悪意は感じられない。
    「…分かったよ。悠と巳波と宇都木さんには俺からも謝っておく。」



    電話を切ると、再びトウマが口を開く。
    「いやー、ちょっと話がしたいって言われてビビったし、どうしようかと思ったけど、トラの父さんも兄さんも、トラ想いでいい人だな。すっげー美味い肉の食べられるレストラン連れてってくれて、遅くなってしまったから今夜は泊まって行きなさいって超良い部屋用意してくれて。」
    部屋に着いていたマッサージチェアがあまりにも気持ちよくて昨日は寝落ちしてしまったそうだ。はぁ。快適に過ごせてたなら良かったが。
    「それで今日は?どうして連絡が取れなかったんだ」
    昨夜は何をしていたか分かったが、今日は目が覚めた後、巳波の鬼電に気づかなかった筈がない。

    「あ、寝落ちした時にスマホ落としちまって…打ちどころが悪かったみたいで朝起きたら電源入らなくてさ、すげーーー焦った。やっぱスマホに頼り過ぎてちゃダメだな!!なんもできねぇ。」
    なるほどスマホが故障していたのか。真新しい機種も、それで合点がいく。

    「慌ててショップに予約取ってさ。電源点けたらミナからすげー着信とメッセージ来てんだもん。びっくりしたよ。」
    笑いながら見せてきたスマホの着信画面は、「ミナ」でいっぱいだった。





    「それで、俺にも内緒で何の話してたんだ?」
    これは最もな疑問だと思う。拗ねた様に言ってやるとトウマは慌ててええと、あの…と口ごもった後、
    「いや、お父さんもお兄さんも、昔、ちょっと可愛いあまりに過保護になり過ぎて、トラに辛い思いをさせちまったって、言ってた。」
    と小さな声で言った。

    「…そうか」

    「うん。気持ちの…すれ違いっていうか、ボタンの掛け違いみたいなもんですって言っておいた。トラは、家族のこと、尊敬しているし大好きなんですって。…あと、」

    「なんだ?」

    「いや、なんでもない!」

    トウマは何か言いかけたが口を噤んだ為、俺はそれ以上何も聞けなかった。






    その一件からトウマは、俺の家族と会う事が増えていった。

    1番びっくりしたのは毎年俺の誕生日の近日に家族で祝いをするのだが、その席でサプライズという事でトウマを呼んでいた事だ。

    「あ、あの、いいのかな?俺なんかが」
    恐らく2番目の兄が選んだレストランのドレスコードであるパリッとしたスーツに身を包み、兄に手を引かれ、髪型を整えられたトウマがおずおずと俺の前にやってきた時は本当に驚いた。

    「兄さん!」
    思わず兄を見るが、虎於が1番喜ぶかと思って。と揶揄うように返される。
    「ごめんなトラ、折角の家族の集まりに。やっぱ迷惑だったよな。」
    その行動を勘違いしたのだろう、トウマが眉尻を下げ、申し訳なさそうに言う。
    「迷惑な訳ないだろ!…来てくれて、嬉しいよ。」
    今にも退席しそうなほど狼狽えたトウマの腕を即座に取り、否定してやると、トウマはほっとした様に胸を撫で下ろす。
    「ほ、ほんとか?良かった。…それじゃ、改めてトラ、誕生日、おめでとう。」
    「…ありがとう。」

    その日の夜は、楽しく過ごしたのだった。
    兄に感謝はしているが、兄がトウマの全身プロデュースしたという事実に少しばかり嫉妬したなんてことは、誰にも言えない。








    「それで、トウマくんといつから付き合ってるんだ?」

    「え」

    兄とトウマについて話をしていると、突然そんな事を言われた。

    俺はトウマに片想いしているが、告白もしていない。過去の恋愛経験を聞いていると(ほとんどない様だが)トウマの恋愛対象は十中八九、女だ。男の俺は恋愛対象になる事などあり得ないだろう。
    もしも想いを伝えたとして、トウマに拒絶されたらと思うと怖くて、それならば今の「最高の仲間」と言うポジションでいる方がずっといい。それならば永遠に共に歌い続ける仲間といて一緒にいられるのだから。
    今は俺に向けられる優しい視線が、笑顔に少しでも嫌悪や拒絶が混ざり、歪む所を想像すると、どんな危険なスタントだって平気な体が恐怖で身が竦みそうになる。

    「俺たちは、そんな関係じゃ…」

    「そうなのか?」

    「それに男同士じゃないか。…変に、思わないのか?」

    「外国に視察へ行くと、思っていた以上に同姓のそういった関係は多いものだよ。それに、」
    何より虎於が昔女の子と付き合っている時より、トウマくんの話をする時の方が、表情が柔らかい。嬉しそうに見える。そう見えていたんだが。
    兄はうんうんと頷くと、笑顔を向けた。

    「そうか。虎於がその程度の気持ちなら、私がトウマくんを狙ってみようかな。」

    「…は?」
    予想外の兄の言葉に俺は思わず聞き返した。
    「ね、狙うって、何言って…」

    「トウマくんは礼儀正しい、いい子だし、話をしてても人懐っこい犬の様なキラキラした目でこちらを見てきてとても可愛いね。体も綺麗に引き締まっていて見栄えがする。それに、…海外に向けてそういった性差別や偏見はない、とアピールする為に、そういう男の子を置いておくのもいい。虎於もそう思わないか?」

    「なっ…!」

    「会社の発展の為だよ。父さんもトウマくんを気に入っていたからきっと喜ぶ。トウマくんも昔は解散だの移籍だのあって大変だったみたいじゃないか。芸能界なんて不安定な職業より、そっちの方がいいだろ?お前もトウマくんが側にいれば、嬉しいだろう?」

    何を言っている?見栄えがいいから会社の為にトウマを側に置く?トウマが兄さんとそういう関係になって俺も嬉しい…?
    俺は拳をぎゅっと握りしめる。

    「トウマは、…俺たちŹOOĻのリーダーだ。俺たちにはあいつが必要だし、あいつにも俺たちが必要だ。一生、一緒に歌って行くって決めた。もう解散なんてしないし、1人になんて絶対させない!それに、」

    言葉を置き、一呼吸し、俺は再び言葉を続けた。
    「俺はトウマが好きだ。トウマは、何があっても、誰であっても、例え兄さんにだって渡さない、絶対に!」

    一気に言葉にすると、兄は俺の顔をきょとんと見つめた後、ふ、と笑った。

    「ははは。虎於の本当の気持ちが聞けて嬉しいよ。」

    「え?」

    「いや、私たちももどかしい気持ちになってね。…トウマくんと初めて話をした時に」









    俺に関する様々な話を終えた後、トウマは父さんたちにこう言ったそうだ。

    「お父さんもお兄さんも、ご家族の人たちみんな、虎於くん…トラの事、すごく大事にしてるんだなって分かりました。俺はあなたたちと話ができて、良かったです。…なので、打ち明けておきます。俺は、虎於くんが、…トラのこと…」

    その時にトウマは、俺に特別な感情を抱いていること。そして、その気持ちを生涯明かすつもりはないと、告げたそうだ。

    「は…?」

    思いがけない内容に俺はぽかんとする。

    「その代わり、一生ŹOOĻとして幸せにする。だから側にいることを許して欲しいってさ。」

    「な、な、」
    トウマがそんな事を?!思わず口を押さえる。体温が急激に上昇するのが分かる。あぁもう心臓の音がうるさい。

    「虎於も口を開けばトウマくんトウマくんと嬉しそうに言うから、私たちとしてはもどかしくてね。…お前の誕生日も、良かれと思ってトウマくんを呼んだのに、あの日、お前は私を恨めしげに見てくるし。」

    「うっ…。」
    隠しているつもりだったのに、家族とはいえ、そんなに分かりやすかったのか、俺は。



    「なあ虎於、私は可愛い可愛い弟の虎於に余計な負担をかけてしまっていたみたいだ。本当にすまなかった。でも、虎於には幸せになって欲しい。トウマくんの事を知って尚更そう思ったよ。」
    ふわりと微笑む兄は、いつも優しい人だった。
    「兄さん…。ありがとう。」

    俺は、今まで愛し俺を想ってくれていた家族を憎いだとか、嫌いだなんて思った事はないよ。


    「今からトウマに会って、気持ちを伝えてくる。」
    「そうだね、行ってきなさい。」

    トウマは今日、撮影があると言っていた気がする。今すぐに連絡は繋がるだろうか。
    スマホを取り出し、トウマのスケジュールを確認していると、

    「トウマくんは今日午後からオフだったっけ?誰とも予定がないから、お気に入りのドッグカフェに行くって聞いたかな。」
    「兄さん…」
    こういうところは経営者らしく、しっかりしている。
    「これから弟がもう1人増えるのを楽しみにしてるよ。」











    「トラ!どした?」
    家を飛び出し、電話をかけるとすぐに繋がった。のんきな声に俺はほっと胸を撫で下ろす。
    「なあトウマ。今すぐ会って話したい事があるんだ。」
    「びっくりしたー!あはは!俺も今トラのこと考えてたんだ。」
    「そうか。今どこにいる」
    「家、だけど」
    「分かった。すぐに行く。」
    そう言って電話を切った。


    トウマに会って、抱きしめる告白するまであと15分。
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