次は永遠に来ない◆ヴァイゼを黄金にしてから1ヶ月後
●北部高原ヴァイゼ地方
分厚い雲が頭上を覆い、月も星も隠れている。黄金に囲まれていても光がなければ反射一つ出来ない。完全な闇に包まれていた。
それでも魔力探知でこの街の些細は全て把握できる。一人、かつて石畳であった道を明かりもなく歩いた。
ある日の夜を顧みる。グリュックと馬車の中から見た街並みは、無骨な造りの建物や石畳をガス灯が橙色に照らし、薄暗くも先を見通せた。
あの景色も、グリュックが馬車の暇つぶしに話した他愛無い会話も、その時の自分の感情だって、鮮明に思い出せる。彼とのひとときは、一瞬であってもマハトにとってかけがえのないものだとあの時感じていたし、それは今も同じだ。
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