その少年の風采は、一言でいうと華美であった。
種族も美的価値観も違うはずなのに。
私は彼という存在に文字通り魅了されてしまった。
彼の姿が目の端に入っているだけで。
若き日の私の脳みそには、彼を飾り立てる言葉が湯水の如く湧き出てきた。
しかし、共通語では語彙が足りず。
容姿にまつわる語彙が豊富なエルフ語でも足りず。
この世にある言葉全てを使っても。
我が生涯をかけても彼の美しさは言葉で説明できるはずもないのだった。
学が無いはずの私は。
ひょんな事から美しき彼の生涯について書き記す大変栄誉な役割を与えられてしまった。
あまりにも恐れ多く……何度も。
何度も断ったのだが……私しか彼を記録できる者が……もう残っていなかった。
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