タダイツワリヌアイデ「どうやってここまで来たんだ?」
頭からすっぽりと白衣を被らせたまま所長室まで連れて歩く。
「どう……? 歩いて」
意思疎通はできるが、会話の精度は高くない。口調も辿々しい。
部屋の扉を閉めてようやくホッと一息つく。
「とにかくもう二度と勝手にひとりで外に出るな、イサミ」
白衣を外してやる。
アオによく似た顔が現れた。
「サタケさん、怒ってる?」
「あぁ、怒ってる。危ないことをするんじゃない」
「……ごめんなさい」
言葉は合ってるが表情が合っていない。表情を作れる設定のはずなのにイサミは基本的に無表情だ。
「心配した」
イサミの頭を撫でてみる。
「心配?」
「何かあったら困る」
イサミの表情は変わらない。
「来てしまったものは仕方ない、今日はここから一歩も出ずにおとなしくしてろ。定時になったら一緒に帰るから」
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