逆行キラシンオーブへたどり着くとともに、キラはモルゲンレーテへの技術協力として開発部へ通されていた。技術班の和気あいあいとした空気の中、ストライクのコクピットでキラは一人、ぼんやりと歪なOSを書き直していく。寝不足か精神的なものか、時よりぐらりと視界が歪むのがやけに鬱陶しく感じて強く目をこする。
途端、柔らかな手が触れる感覚がして、キラは顔をあげた。いつの間にコクピットに人が入り込んだんだ。焦ればやけに見覚えのある少年が不安そうにこちらをのぞき込んでいる。
「そんな擦ったら、めばちこできちゃうだろ。」
「ぇ、いや、シン?」
見間違えるはずもない。だってコーディネートされているとはいえ、こんなに人の目を引く少年居るはずがないから。長い黒檀から揺れる真紅は透き通って陶器のように滑らかな、新雪よりも真白な肌はほのかにあかくなっている。シン、シン・アスカだ。キラの部下で、キラを殺したことがあって、キラがすべてを任せて逃げた少年。記憶よりもちんまりとした姿で目の前に彼はいる。
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