けたたましく鳴る目覚まし時計代わりの携帯のアラームを指先で止める。金の髪に青い瞳。市内の大学へ通う学生であるリンクはついでに表示されているポップアップ表示に軽く目を通しスマホの画面を閉じる。
既に支度は整いいつでも大学へ向かえる。
玄関に据え付けられた鏡で再度身なりを確認しあ...!と、とあることを思い出し、手を止めた。
いつもの青いイヤリングに触れる。
─あのこれ良かったら使って下さい
─先輩のために皆で相談したんです
昨日研究室の後輩たちからプレゼントされた小箱を思い出す。中には小ぶりのピアスが収まっていた。
─たまには、気分転換に。
つけ慣れたピアスを外し付け替える。ゴールドカラーのそれは過度の装飾もなくシンプルなデザイン。
見慣れない気もするが、鏡を見ることなど限られる。それにそれを気にする人などそういないだろう。
しかも今日は講義は無く、課題提出と聞きたい教授の講演会に出席するだけだ。
鞄を抱え、スチール製のドアを開ければ、
乾いた初秋の風が室内に流れ込んできた。
大学で教授に課題を提出し。講演の始まるまで暇つぶしにと図書館へ足を向けた。
その道中、アノ教授を見つけドキッと心臓が跳ねた。
長身にたっぷりとした赤い髪、非常勤講師のガノンドロフ教授。一目惚れして以来ずっと片想いをしている。
─平常心!!平常心!!!
自分の心に言い聞かせ、軽く深呼吸をする。
「こんにちは。」
にこりと挨拶すれば、
「久しいな」と返事が帰ってきた。
金の瞳は相変わらず綺麗で真っ直ぐで益々ドキドキしてしまう。
「今から講義ですか?」
「いや、K教授の講演会の助手を頼まれた。」
「あ、それ出席します。」
嬉しいです。一緒の場所にいられるの。
ニコと笑えばふっと微笑を返され、思わず心の中でガッツポーズを決めてしまう。
「いつもと雰囲気が違うな。」
「え?そうですか?」
急に変わった話題に首を傾げる。
「いつものピアスはどうした?」
「あ!きょ、今日は違うんです。ちょっと気分を変えようかなって」
─まさか、まさか指摘されるとはっ!!
ドッドッドッと心臓が高鳴る。
「そうか.....アレの方が似合うぞ。」
ニヤリとしたその顔にドキンと心臓が益々跳ね上がり思わず倒れそうになるもなんとか踏ん張り耐え抜く。
「講演おくれるなよ。」
「わかりました。」
ひらひらと手を振られ思わず振り返す。
ドッドッドッドッドッ
激しく脈打つ心臓の音を聞きながら、トイレに駆け込こんだ。
─笑顔、笑顔がっっっ
先程の会話やら表情やらを思い出しかあっと頬が熱くなる。
─まずい完全に惚れてる....
あの瞳、あの声、あの表情....
思い出すだけで心臓が痛むほどに脈打つ。
─重症だなぁ
ペチペチと自分の頬を叩き、手元の時計で
時刻を確認すれば講演の開演までまであと60分程
─頭冷やしてから行こう
とぼとぼと図書館本館へ歩き出した。