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    Mangetuko_o1

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    Mangetuko_o1

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    ざっくりあらすじ
    街おこしの一環の食べ歩きスタンプラリーに参加する2人。景品のもらえる数の店舗を回ってすでに満足なリン君。ガノ様に行きたい場所を聞いたら、とあるカフェに案内される。一緒に行ってプリン食べて仲良く帰る2人。

    思い出とプリン三寒四温の季節が終わり木々の緑が鮮やかに香る薫風に金色の髪を靡かせ、リンクは公園のベンチに腰掛ける。手にはスタンプラリーの台紙と街の案内図とイベントの概要の書かれた冊子。
    スタンプラリーの台紙はすでに埋まりあとは景品交換場所へ提出すれば豪華景品がもらえる状態になっている。
    「あー楽しかった。」
    そしてお腹いっぱいとニコニコしながら隣に立つ長身の恋人を見上げる。
    「付き合ってくれてありがとう。」
    「気にするな。」
    低い声が響く。風に靡く赤い長髪。褐色の肌に彫りの深い顔立ち。とある企業の取締役でありリンクの恋人であるガノンドロフ。今日は5月の連休の初日。
    2人で他県で開催されている『街カフェ食べ歩き』のイベントへ参加した。冊子に記載された店舗を周り指定されたスイーツやドリンクを注文しスタンプをもらうというイベントでスタンプが集まれば豪華景品と交換される。
    「美味しかった。見た目も楽しかったし満足。」
    リンクは撮影した色とりどりのスイーツの写真を眺めては笑顔溢す。映えを狙った豪華なパフェ、有名シェフ監修のケーキ、繊細なアイシングの施されたクッキー、素材にこだわったドリンク・・・。
    —本当に美味しかったし楽しかった。
    来て良かったと再び頬が緩むも、ちらりとガノンドロフを見上げる。
    —どうだったんだろう?楽しかったのかな?
    ふと不安な気持ちが湧き上がる。その訳は全てのカフェにて注文したのはリンクだけであり、それを食べ切ったのも自分だけだからだ。
    食べる?と聞くも『全て食べて良いぞ』と否定されリンクが食べている横で珈琲か水を飲んでいた。
    —嫌な思いとか・・・してないかな?
    小さな不安が込み上げる。

    「ね、ガノンは、どこか行きたいとことかある?」
    不安な思いを心の内に仕舞い込み声をかければ思案する様な顔。
    「・・・少し調べても良いか?」
    「うん。」
    口元に手を当てたまま眉間に皺を寄せ地図アプリを睨んでいる。そんな横顔を見つめる。
    しばらくすれば「あぁなるほど」という声。
    「少し歩くが、行っても良いか?」
    その問いにもちろんと答えベンチから立ち上がった。

    公園を抜け西へ。街の中心とは反対側へ向かう。商店や車通りの多い幹線道路から離れ、一般住宅の立ち並ぶ地域へ足を踏み入れる。
    小川にかかる橋を渡り、こじんまりとした神社を通り過ぎれば目の前に急坂が現れた。
    「これ、登るの?」
    「そうだ。食後の運動にはピッタリだろう?」
    ニヤリと言われ「まさかそれでこの道選んだわけではないよね?」と頬を膨らませれば、「この道が一番近い。」とずんずんと登っていく背中を追いかける。

    急坂を登りうっすら汗が滲んだ頃坂の頂上にに到着し、吹く風に気持ちいいと目を細める。舗装された道はまだ続いているが、鉄製の門に閉ざされている。そこには『◯◯大学西キャンパス』の文字。一般人は入れそうにない。
    道ないけど・・・とその門の文字を見つめていれば、こっちだと手招きするガノンドロフ。近づいていけば、門の右側、こんもりとした林の中に丘の下へ続く階段があり、使用されているのか手入れをされた形跡が見てとれる。
    「狭いからな気をつけろ。」
    「うん。」
    獣道のような階段を2人で降りていく。

    木漏れ日が足元を照らす。風が吹けばザワザワと木々のざわめきが広がる。先ほどまでいた繁華街とは全く違う有機物の香りと空気にリンクは異空間へ迷い込んだような錯覚を覚え、この道を行ってもどこにも行けなかったりしてと不思議な不安感に襲われる。
    だがその不安は階段が終わると同時に消え去った。到着したのは丘の上に作られた住宅街、その端、見晴らしの良い場所に煉瓦造りの建物があり道路に面した壁に“カフェ“の文字が書かれている。
    「行きたい場所ってここ?」
    「そうだ」
    木製のドアを潜れば珈琲の香ばしい香りと静かに流れるピアノ曲。
    いらっしゃいませと店の奥から出てきた店員に窓際の席を案内される。
    嵌め込まれたステンドグラスから淡い光が差し込み卓上を照らしている。
    「ご注文はお決まりですか?」
    声をかけられ「えっと」とあたふたするリンクを他所に「ブラック2つとプリンを2つお願いできるか?」という声。「わかりました」伝票に文字を書き込んで定員が厨房へ消えていく。
    「聞かなくて済まない、ここのプリンが美味しくてな」
    ふっと少しはにかんで笑う姿に思わず笑みが浮かぶ。

    運ばれてきたのは香ばしい香りの珈琲とレトロなガラスの器に盛られたプリンで、濃い黄色をした円錐台のプリンには茶色のカラメルがとろりとかけてあり、器の端に生クリームとシロップ漬けのさくらんぼが添えられている。デザートスプーンを差し込めば硬めの感触。ひと掬いを口に運べば濃厚な甘さが口いっぱいに広がり、自然と笑みが溢れた。

    ガノンドロフはプリンを口に入れ目を輝かすリンクの様子を眺め胸の内で笑顔を浮かべる。
    嬉しそうなその笑顔を見るだけで幸せな気持ちが湧き上がる。
    カフェ巡りの最中ももちろんそうだった。キラキラと目を輝かせ写真を撮影しスイーツを頬張る姿に愛おしさが込み上げた。
    —まったく愛いやつよ
    目を細めてプリンを幸せそうに食べる姿を見つめる。

    ふっとあげられた青い瞳と目が合う。
    「どうした?」
    「ガノン、プリン食べないの?」
    見れば既にリンクの皿は空だ。
    「美味かったか?」
    「うん!」
    キラキラの笑顔に思わず口角が上がる。
    硬めのプリンにスプーンを差し込み口に運ぶ、ほろ苦いカラメルと卵の甘さが口に広がった。

    結局半分をリンクに譲渡し、香ばしい珈琲を楽しみ、店を出た。
    傾き始めた夕日が淡い光を投げかける。
    景品交換所のある公園をスマホの地図アプリで検索し2人で歩き出す。

    「ね、ガノン、今日楽しかった?」
    背後から聞こえるどこか不安が滲む声に振り向けば、少し眉をさげ不安気な表情のリンクが夕陽に照らされている。
    その消え入りそうな儚い姿に思わず胸の内がちりちりと痛む。
    「不安にさせたか・・・すまない。」
    「・・・うん、少し」
    だらんと下がる手を取る。

    「お前には敵うまい。」
    「・・どうゆう?こと?・・・」揺れる青い瞳を向けられる。
    「柄になく舞い上がった。一緒に街歩きも悪くないな。」
    楽しかったと笑顔を向ければ、ぱっとリンクの顔が明るくなる。
    「ありがとうガノン。僕も一緒に来れて嬉しかった。」
    ニコニコの笑顔に心の内に温かいものが込み上げる。
    「景品交換!早く行こ!」
    「あぁそうだな。」
    手を繋いだまま地図アプリの示す方向へ歩き出した。



    「そういえば、何であのお店知ってたの?」
    自宅に向かう車内。リンクは運転するガノンドロフの横顔に話しかける。
    「あの店とは?」
    「プリン食べたところ。」
    あぁと短い返事と「まだお前に会う前、良く通った。」との答えが返ってくる。
    「前って?大学講師してた頃?」
    「そうだ・・・いつか、お前にあのプリンを食べさせたいと思っていた。」
    その言葉にドッと心臓が跳ねる。
    出会う前の過去をあまり話さないガノンドロフ。それはリンクの知らないガノンドロフの姿。もちろん過去全てを知りたいとは思ってはいない。だが、その過去の一欠片を分けてもらった様なそんな気がしてリンクは嬉しさが込み上げる。
    「実現できて良かった。」
    嬉しそうなガノンドロフの声。
    「僕も、あの喫茶店行けて良かった。」
    プリンとっても美味しかったと笑顔で答えれば。それは良かったという声。

    既に日は沈み、夜の帷の降りた空には、細い月。
    仲良く会話する2人の頭上には春の星座が静かに瞬いていた。
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