最後の星空 その人が穏やかに語る宇宙の話は、どんな本やプラネタリウムの解説よりも俺の心の中に入っていった。
クリスもといクリストファー・アークライトに初めて会った日のことは今でも覚えている。
あのときの俺にとって、世界は全て敵だった。ハルトに構わず研究に没頭している父さんも、碌な治療法も見つけられないくせにハルトのことを実験動物のように扱う周りの研究員も、そんなハルトを守ってやれない自分自身も。
それなのに
「はじめまして。Dr.フェイカーから話は聞いているよ。君が天城カイト…君、だね」
そう言って柔らかく微笑んだ彼の手を、何故とってしまったのか。優しく握られた手を、何故僅かにでも握り返してしまったのか。
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