1021年6月 鳥居千万宮一子相伝の奥義。奥義を教えた親と受け継いだ子による最強の合体技、奥義の併せ。
この家の初代当主が生まれる数年前、かつてこの都で五本の指に入るほどの強さと言われた親子が迷宮の親玉に使ったのが最後の記録だ。その後、親子は共に行方不明となり、併せの方法を記した書物だけが残った。程なくして、それがとある討伐隊に渡り、話を盗み聞きしていた麦乃介がその書物を入手したという次第だ。
「なぁ、これええやろ?」
「どこで手に入れたんですか…」
「いっつもここら辺で酔っ払ってるおっちゃんや。」
「あぁ…我々がいつも介抱してる…どうせろくでもない物でしょう。」
要はまたいつもの冗談だと呆れ返るが、麦乃介の表情は真剣だ。
「違うんやって!由緒ある書物なんやって!なんでも、幻の大技っちゅう『奥義の併せ』について書いてあるらしいんや。」
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