ゆめのなかでもそばにいろ 零
出られない。四方を砂に囲まれ部屋の中にさえ黄色の波が立つ家の中に、俺はその砂みたいな色の髪をした男と二人きりでいる。俺はその家から、四方の砂から出られない。そいつはいつも暗い目をして、俺が帰ろうとするのをじっとりと拒む。俺がこの地底から脱け出そうと梯子に手をかけるたびに、
「イヤ、な、そこまで帰ることに執着しなくても。」
「砂かきが終わらないんだ……。もう暫く手伝ってくれ。」
など言ってくる。俺はかの珍しい虫、小さな羽虫であるが貴重なそれを探しにきただけだ。だというのに俺は砂に、あの男に阻まれている。露を含んで重い砂を掻きながら、砂の上から覗く、あいつと同じような暗い目に刺されている。
どうして俺はこんなところにいる?
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