特に何もする事がなく暇をもて余していた僕達の所にふみやさんが特製の人生ゲームを持ってきた。
特製と言ったわりにはその人生ゲームは普通のと殆ど変わらなかった。
しかしただ一つだけ違う事があった。
ある場所で必ずストップする結婚という人生のゴール。
その時だけルーレットが数字ではなく女子の絵に変わる。
そしてその女子の中に何故か混ざっている、ある絵。
皆の目が光り始める。
狙うは大瀬さんに似た絵柄だろう。
参加者は出掛けているテラさんと大瀬さん以外の自分を含めた6人。
そして始まったゲームだけど…全員が大瀬さんに当たるなんて凄い偶然。
何と言うか執念を感じる。
まあ、当たってしまったものは仕方ない。
皆さん満足そうだし。
なんて思いながらそのまま進めて行くと、とても大変な事が起きた。
あちらこちらで子供が産まれた。
今の現状だと多夫一妻な訳で、それ故に争奪戦になってしまった。
争う事一時間弱、帰宅した大瀬さんとテラさんのお陰で漸く止まった。
「なぁに?随分騒がしいんだけど」
「みなさん何をしてるんですか?」
そう聞かれたが…とても言えない。
大の男が部屋を目茶苦茶にして人生ゲームと言う名の大瀬さん争奪戦をしていましたなんて死んでも言えない。
恥ずかしすぎるだろ。
「大瀬さんを取り合っていたんですよ」
うわぁ、言ったよ。
言っちゃったよ、この人。
恥ずかしがらず寧ろ胸を張って。
凄いな、天彦さん。
「取り合う…?」
「大瀬さんは誰がいいの?」
凄い人はここにもいた、依央利さん。
ゲームからリアルに飛ばすなんて。
何かどさくさに紛れて触ってるし!
無我はどこに行ったんだ!?
「依央利さん、近いですよ」
流石理解さん、人類のリーダー!
「誰のものかまだ決まってないのですから」
ちょっ、理解さん!?
貴方そんなキャラでしたっけ!?
秩序を乱してると笛を鳴らす所じゃないんですか!?
いや、いやいや…待て待て待て。
大瀬さんは状況分かってないし、いきなり話し飛び過ぎだから。
ここは何とか流れを戻さないと…
「皆さん落ち着いてください。ゲームなんですから…」
どうにか丸く収めてゲームの方に戻す。
テラさんと大瀬さんは進行状況が気になったのかコマを一つ一つ見ていた。
「あー、これは……」
「?…今、どんな感じなんですか?」
状況を理解したテラさんは呆れ顔。
大瀬さんは見てもいまいち把握出来なかったようで聞いてきた。
なるべく変な事を言わないように気をつけて言おうとしたら…
「大瀬が子供産みまくってる」
はあ!?
なんとまさかの猿川さんが爆弾発言!
そこはぜってー教えないと反発する場面では!?
偶々お茶を飲んでいた理解さんが盛大に噴き出し、それがテラさんにかかり慌てて拭いている。
当の大瀬さんはキョトンとしてるだけで分かっていなかった。
それはそれで良かったんだけど。
「ハハ、ウケるな。皆大瀬と子作りしたがってるよ」
ふみやさん、何て事を!?
それ、分かってない大瀬さんに言ったらダメなやつ!
「クソ吉と…子作りですか?」
理解してなくて良かったなんて安心している自分がいる。
ああもうっ!
何で皆爆弾なんだよ!!
「まあ、要はここにいる全員大瀬と…」
何か企むように笑うふみやさんは大瀬さんを引き寄せ耳元で何かを言った。
というか自分は違うので巻き込まないでいただきたい。
大瀬さんは次第に頬を赤くさせていく。
「自分は…絶対そんな事しませんからっ!」
珍しく怒り口調の大瀬さんはそのまま2階の自室に走って行ってしまった。
「ふみや、何言ったんだ?」
そうふみやさんに聞いたのは猿川さんだった。
僕も気になったけど聞くに聞けなかった。
怖い返事が返ってきそうだったから。
「まぁまぁまぁ、別に普通だよ」
「暫く大瀬さんに避けられ続けるでしょうね。焦らしプレイなんて天彦興奮しちゃいます…♡」
悦に入った表情の天彦さん。
あ、この人はいつも通りだ。
てか、一体誰のせいでこんな事に…
トイレに行くフリをして大瀬さんに誤解を解きに行こうかな。
「虎さん、何処に行くんですかー?」
口元に笑みを浮かべつつも目は笑っていない依央利さんに止められる。
「あの、ちょっとトイレに…」
「嘘!本当は一人で大瀬さんに会って誤解でも解きに行こうとしてるんでしょ!?魂胆は見え見えだよ!」
全く、こういう時ばかりこの人達は勘が鋭い。
もういい、面倒になってきた。
「皆さん、ゲームの続きをしましょう。勝った方が大瀬さんの所に行けるって事で」
そしてこの後、再びこの場が戦場へと変わった。