扉を開けた籠で待つ「…………ここ、どこだ?」
そっと開いた視界に自室とは趣の違う調度品が映って、カリムの口から疑問が零れる。ひとりごとになるはずのそれに、静かな声が返った。腹の奥に甘く響くような、知らない声が。
「ここは休憩用に用意してある部屋のひとつだ。廊下のど真ん中で倒れていたから連れてきたんだよ」
「ええ!? 全っ然覚えてない……」
「急病かと思って意識を確認したらぐーすか寝息を立てていたぞ。目に入ったからにはそのまま置いておくわけにもいかないだろう」
「そうなのか? とりあえず助かったぜ、ありあとう!」
今日はこの国の次代を担う若者を一同に集めたパーティだった。特権階級から新進気鋭の商人・芸術家まで、様々な男女が縁を繋ぐためという名目で開かれていたが、足をすくう機会を狙ってくる者も多い。下手を姿を晒すわけにはいかなかった。
4677