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    tinu_dorarona

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    tinu_dorarona

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    嘘ドラロナWEBオンリー
    「常夜の月は夜明けの夢を見るか」
    参加展示作です。

    夜明け空過ぎて、昼見上げ。「この本…なに??」

    そう言いながらロナルドくんは、フォン・ナ・ドゥーブツから貰った吸血鬼資料の本の束のある一冊を、訝しげに摘み上げた。

    「女性がやけに薄着の本だ」
    『エロ本だね。そういえばフォンくんはエロ本大好きだったから混ざったのかも』

    太陽が登らなくなったこの夜の世界ではレアな存在になったエロ本には、表紙に常夏の水着女性が飾られてた。
    太陽の写真は吸血鬼の過激派がとことん燃やし尽くしており、こんな本でも太陽が拝めて少しありがたく感じる。

    「この白いのが太陽」
    『カメラで強い光源を撮るとこうなるんだ』
    「暖かいから下着なのか?」
    『水着という泳ぐのに最適な衣だよ』

    ロナルドくんが生まれた時は既に太陽は隠されており、暑いと言う感覚が分からないほど、この世界は寒々しい世界となった。水着なんぞ等に廃れており、彼には火に焼かれていないのに暑いという発想がない。

    彼が持つ晴天の瞳に、いつか陽の光を映してあげたいと思い巡らせていると、彼は急にクスクスと笑い出した。

    どうしたのだろうと思っていると、疑問に思ってる私の気配を察し、ロナルドくんが笑うのもそこそこに息を整える。

    「悪い、少し昔を思い出して」
    『気になるなぁ。何を思い出したの?』

    「ショットに何でハンターになったのかと聞いたことがあったんだ」

    その質問にかなり驚く。この質問はこのご時世なかなかのデレカシーに欠ける質問なのだ。人を思いやるロナルドくんがする質問に思えなかった。私が驚いてるのに気がついたのか、ロナルドくんが補足で「あの頃は若かったんだよ」と付け加えた。
    どうやら後にヴァモネさんから注意を受けたそうだ。新人の頃の失敗ってやつだな。そこまで話されてふと思い出す。

    『そういえばショットさんは、特にかっこいいからで理由も無しにハンターをやっていなかったかい?』

    そうだ。私が肉体を持ってた頃から彼は明言していた。『自分には大した理由もなくハンターを続けているのだ』と。

    「ショットのそれは今も昔も変わらないけど、昔はまだ若かったからか夢物語のように教えてくれたことがある。
    吸血鬼から昼を取り戻したら太陽が出るだろ?曰く太陽はあったかい。昔の人間は暖かい昼で体温調節のする為に、薄い服を着て過ごすらしい。自分は実は俺女の子のそういう姿見たくって頑張ってる。…って」

    『なるほど、それをこの本を見て思い出したんだな』

    「ショットの言う通り、本当に薄着なんだな」



    心底楽しそうにエロ本をめくってる姿が、やけに無垢な子供に見えて、肉体が無いことに心底安堵した。一周回ってえっちな光景である。

    『そういえば、他の人がハンターになった理由とか知らないな!』

    気を紛らわす為に思わず口に出たのは、先程自分でもデレカシーがないと思っていた質問だった。肉体があったら一度ショック死してるとこだ。




    「そうだな…一緒にいるのが長ければ長いほど、どうしてハンターになったのかは、聞かなくても段々察しがついてくる。サテツとか分かりやすいよな」

    『…あの体質ゆえだね』

    サテツくんは半人狼だ。満月の夜の中だと凶暴化してしまう。あのような体質は夜だけの世界になってから現れるようになった。
    人による対吸血鬼用人体実験の成果か…はたまた吸血鬼による戯れ的人体実験か…またはこれも一つの人類の進化か…今は定かではない。
    多くの説がある中で、最も支持率が多いのは、昼の太陽を浴びていた為、人狼化現象が抑えられていた。というものだ。
    梅雨が多い日本において、その説は難しいのではないかと私は思うが、人は希望があれば縋りたいものなのだ。
    サテツさんもそのような希望を持った一人なのだろう。




    「レッドバレットは、俺たちの名前に太陽が入っているのに見たことがないのが悔しくてハンターになったと言っていた」

    お兄さんのハンター名を聞きふと思い出す。そういえば、お兄さんが子どもの頃はまだ人類が抵抗出来ていた時代で、一部の地域の昼は存在していた。おそらくお兄さんは太陽を見ているのだろう。

    「今では真逆の所に行っちまったけどな」

    そう言いながらロナルドくんはこないだ取り逃がした吸血鬼に付けられた傷を撫でた。真紅の瞳には、もはや人の心は無かった。しかしロナルドくんは気がついているのだろうか…戦闘の後半にロナルドくんの呼びかけに反応して、彼は瞳の色を変えてた。顔色こそ変わっていないが、あの真っ赤な血のような瞳の奥には、まだ彼のお兄さんが…

    いや何も言うまい。
    刃が鈍るだけだ。




    『ロナルドくんがハンターになったのは、行方不明のお兄さんを探すためだったよね?』

    「そうだ。そして今はお前との誓いのために竜大公を止める…!」

    冷たく固い意志だ。もっと明るい世界に彼を連れていきたい。


    『それで太陽を取り戻したら、ロナルドくんはどうする?』

    「え…っと、…そうだな。一目見れれば十分だから後は心臓をお前に返s…『待て待て待て、ロナルドくん』


    この男…今のうちに聞いておいてよかった。何のために私が彼を生かしたのかまるで理解していない姿に焦りを覚える。この様子では最後の戦い後、すぐに心臓を抉り返して来そうだ。君の寿命尽きるまで返却不能だと言いたい。が彼はきっと納得いかないだろうから、言い負かすことにした。




    『夜明けの太陽と昼の太陽は顔色が違うのだよ!ロナルドくん!』

    「え、そうなの??」

    『また夕暮れ時の太陽も色が違う。冬と夏の太陽は別物とも聞く。君は朝日の太陽のみで満足する気かい?勿体ない!せっかくロナルドくんの身体の中ならば安全に太陽を満喫出来そうなのに!』

    「…享楽主義者め…なんでそんなに太陽に詳しいんだ…」

    『年の功さ』




    心底太陽を知らない幼な子は、まるで豆知識を仕入れたかのように目をキラキラさせていた。




    『夜明け空を共に過ごし、昼空を見上げ共に確認しようではないか。太陽はお互い初めての体験になるな。ロナルドくん。ちなみに直接太陽を見ると目が焼けてしまうらしいよ』

    「どうやって昔の人は太陽を見ていたんだろうな?」


    それはきっと君の瞳(空)が答えだろうけど、私は楽しみを取っておくように『そうだね』と同調した。
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