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    Nanosa_AU

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    Nanosa_AU

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    レトロとルカが学生時代の話。
    ルカの左腕がなくなったきっかけの事件。
    誤字脱字、イメージのしづらさあるかもしれない…。

    Steam Punk Story〜過去編〜(⚠️流血表現あり)「はぁ……」
    大きなため息をついたのは、スチームパンクの世界のBFであるレトロ。彼は現在、部屋の片付けをしているようだ。床には工具やら壊れた部品やら散らかっている。恐らく誰かに片付けるよう命じられたのだろう。普段部屋を綺麗にしておかない彼がしぶしぶ片付ける程こっ酷く怒られたようだ。
    「何もあんなに怒らなくたってもいいのにさ……。俺の部屋なんだから好きにさせてくれっての……」
    ぶつぶつと文句を言いつつも片付けを進める。そして、立ち上がり移動しようとした途端、床に置いてある工具箱に足を引っ掛けてバランスを崩しそうになった。そして傍にある棚に手を掛けた。
    「あ」
    なんとか体勢は立て直せたものの、勢いが余ったせいか今度は棚が傾き中身が全部出てきてしまった。そしてその中身たちはそのままレトロの頭上へと崩れ落ちた。
    「おわあああああ」
    その悲鳴は書類や本の山へ埋もれていった。
    悲鳴が消えた数秒後、レトロは書類や本の山から頭を出した。
    「あちゃ〜……こりゃ参ったな……」
    自分が埋まっている山を見て頭の後ろを掻いた。言うまでもないが更に片付けが増えたのである。
    しばらく書類の山を見回すと、一際分厚い本が目に入った。
    気になったレトロは山から出て本を手に取った。本のタイトルには「album」と書かれていた。レトロの今までの思い出のアルバムだった。
    「お! これ俺が学生だった頃のアルバム!」
    レトロは目を輝かせて、アルバムを開いた。そこには、学生服を来たレトロや同級生の写真がたくさん挟まれていた。
    「懐かしいなぁ〜。お、コイツは……」
    ふとレトロの目にある人物が入った。その人物はオレンジ色の髪をオールバックにした少年。少年の頭にはゴーグル。
    「ルカだ」
    写っていたのは、現在一緒の街にいるスチームパンク世界のPicoことルカだった。
    写真に写っているルカは、顔に傷が無く、左腕がしっかり付いていた。そして、今では考えられないほど表情が穏やかだった。その反面、そんなルカを見つけたレトロは少し暗い表情をしている。
    「そうか。この時は事件前か……」
     レトロが口にした「事件」。それはルカを大きく変えてしまったきっかけなのだ。
     レトロは思い出したくもないが、その時の記憶を思い出すことにした。

     
     時を遡ること二年前。レトロとルカがまだ学生の頃かつアン(スチームパンク世界のGF)と会う前の頃。
     レトロ達が通う学校は、小・中・高と一纏めになっている。なので、レトロとルカは、歳が離れているが同じ学校に通っているのである。
     レトロは高校生、今と変わらずドジでとんでもなく機械音痴。よく学校の機材を壊し先生に叱られている。一方ルカは中学生。今とは違い表情は穏やかで、友達とも楽しくやっていた。
    「レトローーーー‼︎‼︎」
     学校に先生らしき人物の怒鳴り声が響いたかと思えば、声のした教室からレトロが出てきた。また何かを壊したのだ。
     偶然通りかかったルカはレトロの方を見て呆れた。
    「またやらかしたのか? お前、よくそれで退学にならないな」
    「良かれと思ってやったのにな……」
     ルカの言葉にレトロは更に肩を落とす。
    「いや、何もするなよ……」
     慰めの言葉貰えず。
    「とりあえず、飯食おうぜ」
     しかたねぇなと言わんばかりに、ルカがレトロを手を引いてその場を後にした。
     しかし、そんな平凡な時間が突如終わりを迎えるのだ。
    ─────ドカーン
    突然の爆発と共に生徒たちの悲鳴が上がる。
     「なんだ⁉︎」
     弁当を食べようと屋上に来た二人は、爆発が起きて煙が上がっている場所へ向かった。
     向かっている最中も、あちこちで悲鳴や爆発だけでなく、発砲音も聞こえてくる。
     走る廊下には、何人もの生徒や先生が血を流して倒れている。
    「おい! しっかりしろ‼︎ 何があった‼︎」
     ルカは倒れている生徒の一人に声をかけた。その生徒はルカの友達の一人だった。彼はルカの返事には一切反応が無かった。
    「どうなってるんだ……。とにかくここを……」
     レトロがルカの方を見ると、ルカは呼吸を荒くしていた。
    「はぁ……! はぁ……! お、おれはどうしたら……‼︎」
     かなり取り乱している様子だ。
    「ルカ‼︎ 落ち着け‼︎」
     レトロはルカの肩をゆすった。
    「俺らまでやられる前に外に出て助けを求めるしかない‼︎」
    「何処にも行かせネェから」
    「?」
     背後から二人以外の声が聞こえてき、レトロとルカは声の主へと振り返った。そこには、赤髪の少女がバズーカーを担いで立っていた。
    「あんたは確か……」
    「カルミネ……」
     レトロに続いてルカは相手の名前を呟いた。カルミネはスチームパンク世界のCassandra。そして彼女はルカのクラスメイトである。
    「なんだァ? まだ生き残りがいたのカ……」
    「お前がやったのか?」
    「あぁそうダ。しばらく大人しくしてたけどヨォ、いい加減くだらなくなってきてのサ。ルカ、いつになったらオレのモンになるんダ?」
    「は?」
     カルミネの最後の発言に理解できなかったルカは首を傾げた。
    「オレァあんなにもアピールしてたのにオマエは気づきもしない。オマエはトモダチとやらとばっかいやがる。だから、全員消すことにしたのサ」
    「訳わかんねぇこと言ってねぇで今すぐやめろ!」
    「オマエが大人しくオレのモンになればな」
     カルミネはニヤリと笑った。
     何言っても無駄だと悟ったルカは、戦闘の体制をとった。
    「お? オレとやるってのカ? おもしれェ。せっかくならフェアにいこうぜ」
     そう言うと、彼女は背負っていたライフルをルカの方に放り投げた。
     ルカは何も言わずに受け取った。
    「ルカ、やめとけよ……。このまま外に出よう……」
     レトロは不安げに言うが、ルカは聞く耳を持たなかった。彼の言葉を無視しただけだと思いきや──。
    「っ」
     ルカは廊下に置いてあるロッカーに向けて、レトロを思い切り突き飛ばした。そのままレトロはロッカーの中へ。
    「ル───っ」
     名前を最後まで呼ぶことができず、ロッカーの扉は閉じられてしまった。そして、ガチャリとロックをされる音。レトロは閉じ込められてしまった。いや、これはルカに意志があってやったことだ。レトロを巻き込まないために。
    「ルカ‼︎ よせ‼︎」
     レトロは必死に扉を叩いたが、やはりルカは聞かなかった。
     レトロはロッカーの中からルカを見守ることしかできなくなってしまった。
    「オマエにライフルを渡してやったが、オレと戦えるカナ?」
    「……」
     ルカは緊張と不安と恐怖で顔が強張っていた。そして、ライフルを持つ手が小刻みに震えている。
    「仕方ねェ。オレが見せてやるよ」
     そう言ってカルミネはバズーカーの銃口をルカの方へ向けて構えた。にも関わらずルカはその場から動けずにいる。
     レトロは嫌な予感しかしなかった。
    「ルカ‼︎ 逃げろおおお‼︎」
     レトロはそう叫ぶしかできなかった。
     その間もなく はバズーカーを放った。
    「──────‼︎」
     爆発音と共にルカの声にならない悲鳴が上がった。
    「あ……ぐっ……」
    「ルカ……?」
     ロッカーのエアポケットから見えたのは、左腕を押さえて座り込むルカ。ルカの左腕からは大量の血が流れていた。ふと、視線をずらすと、誰かの腕が転がっているのが見えた。
     ───誰のだ……?
    嫌な予感し、再び視線を戻すと、ルカは左腕を半分以上失っていた。バズーカーで吹き飛ばされたのだ。
    「ルカあああああああ‼︎‼︎」
     レトロは喉が裂けるほど声を上げた。
    「おぉ。一発で腕吹っ飛んじまったカァ……」
     カルミネは落ちたルカの腕を拾い上げた。
    「さて、もっと広い場所でやろうカ。屋上に来イ」
     カルミネはそう言い残すと、腕を持ったまま立ち去った。
     しばらくして、黙っていたルカは自分のカッターシャツの布をちぎり、切断された腕にきつく巻きつけ止血した。そして屋上に向かおうと歩き出す。
    「ルカ‼︎ 行くな‼︎ 頼むからこれ以上は……っ‼︎」
     ルカはもう、レトロのことが見えてもいない、聞こえてもない。感情を失っていた。
     それを悟ったレトロは、呼びかけることをやめ、ロッカーの中で小さくなった。そして、普段泣かない彼は何粒もの涙を流した。
     ロッカーの中でただただ大切な友人を見守ることしかできなかった。何もできなかった事が悔しくてたまらない。あの危険な人物と戦うために去ってしまった。片腕がないままで。
     一人ロッカーの中に居続けて数時間が経過した。
    「もぉ〜めちゃくちゃじゃない」
     突然、聞き慣れない声が聞こえてきた。まだ生き残りがいたのか。それか彼女の仲間か……。
    「あら? 誰か居るの?」
    「‼︎」
     気配を消していたつもりが、簡単にバレてしまった。レトロは焦ったが、今居るのは狭いロッカーの中。逃げる場所も無い。
     そう考えているうちに、扉のロックが開けられる音がした。そしてそのまま扉が開いた。
     声の主は髪の長い少女。先ほどのカルミネとは違い、優しい顔付きだった。
     彼女はレトロを見ると目を見開いた。
    「大丈夫⁉︎ 良かった、まだ生き残りがいたのね! さっ、ここから出ましょ!」
     彼女はレトロの手を引っ張りロッカーの外へ出した。そのまま手を引いて行こうとしたが、レトロは動こうとしなかった。彼女が何者なのかと言うことより、外へ開放された今、ルカのところへ行きたくて仕方なかった。
    「どうしたの?」
     彼女は心配そうにレトロの方を見た。
    「俺の友達がっ! 早く屋上にっ……!」
    「屋上? 誰もいなかったわよ?」
    「え……?」
     彼女の言葉にレトロは言葉を失った。
    「とにかく落ち着いて、まずはここから出なきゃ。話はそれからゆっくり聞くわ」
     彼女は優しい声でレトロに言った。
    「う、うん……」
     レトロはまた泣きそうになったが必死に涙を堪えた。
    「自己紹介がまだだったわね。私はアン。よろしくね」
     突然そこでシーンが途切れた。


    「う〜ん……」
     目を覚ますと、そこは物が散らかった部屋。壊れた機械や部品、工具などが散乱している。そんな部屋で一人、レトロが仰向けになっていた。おそらく眠ってしまったのだろう。
    「あれ、寝ちゃってたのか……」
     ふぁ〜っと大きなあくびを一つ。
     嫌な記憶を思い出していた上に夢を見てしまい目覚めが悪い。
    あの事件以来、ルカと会うことは無かった。しかし、今はこの街にいる。ひょんなことから再会を果たせたのだ。再会理由はあまり平和的ではなかったが、今ではいつも通りに接している。そして、片腕がないままのルカに、レトロは義手を作ってあげた。機械音痴のレトロが初めて失敗せずに完成させた奇跡の逸品だ。
    「おーいレトロー」
     部屋の外から聞き覚えのある声がした。
    「片付け終わったか……って、何やってんだ」
     ルカだ。
    「ルカ……」
     レトロは、重たそうに上半身を起こしてルカの方を見た。
    「お前、余計散らかってないか……? なんだその顔……」
     不機嫌そうな彼の顔を見て、レトロはニッと笑った。
    「別にぃ?」
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