とある日ボンドくんが料理中にうっかり指を切ってしまい何を思ったのか血液を1滴料理の中へ入れてしまう。そのまま手料理を出すと、レトロは気づかずその料理を美味しそうに頬張る。自分の血液が恋人の体内の一部になっている事を思うと快楽を覚える。暫く手料理に自分の血液を混ぜる事にハマってしまったボンドくん。一方レトロは3日ほどは何事もなくボンドくんの手料理を食べいたが、突如体調に異変が起きていることに気付く。頭痛や吐き気。次第には高温の発熱等、日に日に体調が悪化していく。ボンドくんにその事を相談すると、彼は快く看病してくれた。しかし、俺がいないとダメなんだと思ったボンドくんは癖になってしまいレトロの看病をしつつ手料理には自分の血液を混ぜ続ける。
夜、レトロが自室で眠っていると、窓を引っ掻く様な音で目を覚ます。レトロの部屋は2階(仮)、こんな高い所に行けるのは猫か鳥くらい。窓を開けるとそこには暴徒化したボンドくんの姿があった。レトロは悲鳴を上げ後ずさった。暴徒化ボンドくんを目の前にして、過去のトラウマが蘇る。暴徒化から戻ったボンドくんがレトロの事を跡形もなく記憶から消してしまったこと。レトロは暴徒化ボンドくんの方へ走り出し、落ちそうなくらいに窓の縁に身を乗り出した。必死にボンドくんの名前を呼ぶが、レトロは以前と同じく自分の事は忘れられてるのではないかと考えていた。そんな必死なレトロとは裏腹に、暴徒化ボンドくんは構わずレトロに巨大な手を伸ばした。レトロは避けられず窓に身を乗り出したまま動けなかった。その時、巨大な手が何かに弾かれた。暴徒化ボンドくんの足元に1人の人影。それは、ラルくん。ラルくんが見上げるとレトロと目が合った。ラルくんは「逃げろ」とジェスチャーしてみせた。レトロはわけも分からず家を出て走った。
暴徒化ボンドくんと距離を離せたがやはりボンドくんの事が気になるレトロ。戻ろうと1歩踏み出した瞬間目の前に鉄板のような物がレトロの行き場を阻むように何枚か地面に突き刺さった。いや、鉄板ではない、黒い刃物のような形……。降ってきた方を見上げると暴徒化ボンドくんがレトロを見下げていた。ラルくんを上手く撒いてしまったのか。そしてこの突き刺さった刃物の様なものは暴徒化ボンドくんの翼だった。レトロは驚いたが、深呼吸をして暴徒化ボンドくんに近づいた。そしてそっと体に触れた。
「また俺の事忘れちゃってるかもしれないけど……」
「ごめん……ボンド。こうなったのは俺のせいだ……」
「なんでいざという時言えないんだろうな……」
「大好きだよ……」
「帰ろう」