その愛に名は無くとも。 カチ、カチ、と時計塔が音を立て時を刻み始めた。私たちの世界の眠りを促すように、規則正しく動き出した。
微かに感じる楽の気配以外は何も感じられず、他の者たちは既に眠りに落ちていったようだ。
「大和、そろそろ俺たちの番だ。」
その楽から背後から話しかけられる。見れば最後の塔の点検を終え綺麗な服に着替えた彼が悲しそうに微笑んでいた。
「ああ、そうだな。仕上げをしよう。せっかくだから楽も付き合ってくれ。」
2人で時計塔の中を登ってゆく。
針の音と、音質私たちの靴音がら調子外れの円舞曲のような旋律を奏でている。まるでそれは寝ない子供を寝かしつける母親の子守唄のようでもあった。
塔の最上階。始まりを告げる私のドールと、終わりを見届ける楽のドールが収められている。
1979