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    サイナ

    @2Saina317

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    サイナ

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    めちゃくちゃ前にエピローグ→本編→プロローグの構成で楽ヤマ…、もといオーファブを書こうとしてたんですよ…メカララ世界はうろ覚えで捏造もいいものよ…
    これはそのプロローグ、仕掛けモロバレパート😇
    楽ヤマの日に仕上げて出せないかなぁ…

    その愛に名は無くとも。 カチ、カチ、と時計塔が音を立て時を刻み始めた。私たちの世界の眠りを促すように、規則正しく動き出した。
     微かに感じる楽の気配以外は何も感じられず、他の者たちは既に眠りに落ちていったようだ。
    「大和、そろそろ俺たちの番だ。」
     その楽から背後から話しかけられる。見れば最後の塔の点検を終え綺麗な服に着替えた彼が悲しそうに微笑んでいた。
    「ああ、そうだな。仕上げをしよう。せっかくだから楽も付き合ってくれ。」

     2人で時計塔の中を登ってゆく。
     針の音と、音質私たちの靴音がら調子外れの円舞曲のような旋律を奏でている。まるでそれは寝ない子供を寝かしつける母親の子守唄のようでもあった。
     塔の最上階。始まりを告げる私のドールと、終わりを見届ける楽のドールが収められている。
     螺子の切れた2体の姿は、戦火の中で戦っていた面影を見せないほど綺麗に感じた。そこだけ時が止まっていたかのように、彼ら2体の世界であった。
     「楽、彼らの名前をつけてあげようか。彼らだけがドールの世界で2番、8番と呼ばれるのは可哀想だからな。」
     いくら彼らにとって感情は必要のないものだと言っても、彼らがこれからのアコルダトゥーラの住人だ。何故ドールである自分たちが起動しているのかを疑問に思わせたいなんて考えはない。とは言っても私の全てを託す2番にとってはその疑問の答えは分かりきったことなのだろうが。
     楽も賛同したのだろう。少し考える素振りを見せた後、
    「俺が勝手に考えたのだが、ファブラとオーガスというのはどうだ。2月に産まれた大和と、8月に産まれた俺。真逆の月の俺たちから、これから真逆の役割をする彼らに相応しい名だと思う。」
    と、彼の案が返ってくる。
    「ああ、良い名だ。…。これからファブラにもオーガスにも辛い役をさせてしまうのだな。」
    「そうだな。彼らが幸せだという保証はどこにもない。世界が平和になるまで彼らは動き続ける。幸せであったとしてもそれが突然終わることもある。」
     ロボットドールたちに世界を託す目的。それは戦争により壊れた世界の再生と平和の再構築。
     その二つが果たされた時、彼らの世界は終わりを告げ、再び私たちの世界が目覚めるのだ。
    「皮肉なものだな、楽。私たちが破壊のために用いたこのドールたちが、私たちの壊したこの世界を守る為に起動するなんてな。」
    「人は過ちを犯すまで気付かないからさ。俺たちがあとこの世界のためにできることは、彼らがプログラム通り正確に動き続けることを願うだけだ。」
    「…。そうだな。」
     カチカチ、と時を刻み続ける針の音が私たちの間に無機質に鳴り響いている。

    「実は、オーガスに関して大和には、ファブラには伝えられていないことがあるんだ。」
     暫くの沈黙を破ったのは楽であった。
     私が何かと問う前に、滔々と言葉を紡ぎ出した。
    「オーガスは俺を模して作ったが、俺とは決定的に違う部分がある。オーガスの、思考回路だけは雑に作ってある。感情だけは彼に与えていないんだ。だから俺たちと全く同じような関係にオーガスとファブラがなることはあり得ないだろう。恋愛感情なんもの、彼は知らない。世界のために、知ってはいけない。…。世界のために、俺は俺の手で俺–オーガス−の幸せを一つ、二つと奪ったんだ。」
    「そうか…。」
     再び私たちの間を沈黙が包み込んだ。

    「せめてもの、私たちの証を彼らに刻むことは許されるだろうか。」
     願いを込めてそう呟く。楽も納得したようで、
    「いいぜ、俺たちが愛し合っていた印を残していこう。」
    との答えが返ってきた。
     私は点検の為に持ってきていた工具箱から釘を取り出す。そして彼らの左手をとり、その左手の薬指の爪に彫刻をする。
    「ほぉ…俺にFでお前にAか…」
     手際の良さに感嘆する素振りを見せつつ楽が呟く。
     ペアリングの裏側に互いの名を刻むように、ドールである彼らに修繕できない跡をつける。
     仕上げに白手袋を両の手に嵌める。
    「こんな事をしたところで、気付いても気付かないんだろうな。」
     今自分のしたことはただの自己満足でしかないことなど分かりきっている。それでも彼らの未来を願わずにはいられなかった。
    「…。大和、そろそろ時間だ。」
     楽が持つ懐中時計に酷く感じられる。しかしもう眠りの時だ。
    「そうだな…これで私たちの時が一時終わるな…」
     私はファブラを元に戻し、望みを託すように全てのロボットドール達の管理鍵を渡す。
     隣では楽が同じようにオーガスを納め、彼の懐中時計とこの塔の鍵である杖を持たせている。
     私達が眠りについた後、目覚めるようプログラムし、蓋を閉じる。
     隣の楽が「いつかはお前達も、自分の意思で動き、生きる喜びを感じられる世界が訪れるように、」と呟いたのが妙に耳に残った。
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