「トリックオアトリート!」
楽しそうに合言葉を言い放った新八に片頬が引きつった。というかハロウィンという行事の名称はたどたどしいくせにその単語は流暢に言えるのかよ。
「お前はもちろん知ってんだろ? 菓子を渡さないとどうなるか、ってな」
そう言ってカカカと大口を開けて愉快そうに笑う。そんな爽やかで明るい雰囲気のミイラ男が居てたまるか。
コートのポケットに手を入れると小さな物が指先に触れる。
カルデアでの生活もそこそこ長ければ人生経験もそこそこの良い大人だ。この季節にもなれば子ども姿のサーヴァント達へ渡すための菓子くらい持ち歩いているもので。
「渡してやっても良いけど、普通に手渡しも面白みに欠けるよな」
「面白みとかいるか?」
「いるでしょ。ちょっと目つむって、何の菓子か当ててみてよ」
「? おう」
素直に目を閉じた新八の前に立つ。
ビニールの小さな包みから取り出した飴玉を新八の口まで運ぶ。唇に触れる硬質な感触に飴玉だと気付いたらしい。
かぱっと無防備に開かれた口の中へ飴玉を転がして、すぐさま押し込むように唇で食いついた。
驚いた新八の口が閉じられるより早く舌を差し込んで逃げられないよう頭を手で押さえる。
「ん、ぅ……っ、ふ……!」
胸を押して離れようとする手を捕まえて指を絡ませた。舌を動かすたびに新八の口の中で飴玉がからころと音を立てる。触れ合う舌が飴の味を移して甘い。
「んむ……っ、ふ、……っ」
抵抗が弱々しくなり大人しく腕の中に収まったところでようやく唇を離した。やっと解放すると力が抜けたのか、ふらついた新八の腰を支える。
「てめぇ、何して……っ」
「何って、言われた通りに菓子を渡しただけでしょ」
「それだけじゃねぇだろ……! こんな、とこで……っ」
そう焦ったように新八は辺りを見渡す。
〜ここまで〜
この後お持ち帰りさせる予定でした😌