高主♂短編の序盤 それは突然襲い掛かってきた。
自ら誘った酒場。
長椅子に腰掛けて、簡単なつまみと共に酒を煽りたいところだが、今日のところは控えめに呑んでいた。
高杉は並んで酒を呑む隠し刀の顔を横目に、自らの器を揺らす。ちゃぷりと水音が跳ねて落ちるその間に、この男の内に隠されている真意を探ろうと試みていた。元々警戒心の高い方だと自負している。面白い男だということは分かったが、まだまだ気を許すまではない。
そういった探りを入れる際に酒は実に便利な代物であった。これは人の正気を狂わす。云えぬものも、ぽろりと溢す。その不意に口走ってしまったものを高杉は欲していた。
しかし予想しているものは、人間の薄汚い部分を煮詰めたものであり、人間を狂わせる言葉などではなかったはずだ。
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