アンビバレント人というものはみんな幼い頃に味わった感情の積み重ねでできている。
そんな当たり前のことを日常ではなかなか思い出すことはないだろう。しかし蘇枋は現在目の前の光景にそれを激しく痛感させられている。
今自分の目の前にいる小さな子供。
その子は蘇枋とその隣にいる楡井を見つめ、怯えた色をたたえた瞳を無理やり細めて威嚇していた。
ここまで怯える子供を今まで見たことがあっただろうか。そう考えてしまうほど目の前の子供は異質なほどの怖がり様。こんなに穏やかな日常でそれほどまでに追い詰められる要因とは何なのか。それを無意識に考え込んでしまうほど蘇枋には鮮烈で言葉にできないほど悲しい出来事だった。
蘇枋と楡井は学校に来なかった桜を心配して二人で家まで様子を見に行くことにした。
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