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    あける

    種熱が再燃したためイラストを描き始めた初心者🔰種箱推し/ディアミリ/サイメイへの愛が重め❤

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    あける

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    ディアッカとノイマンはどのように仲良くなったのかを考えた、航海日誌の補完的なお話
    CE74年7月くらい。運命と自由の間。
    ディアミリ前提、ノイナタ風味
    (ミリアリアとナタルは出てきません)

    ##ディアミリ

    大尉同盟 アーノルド・ノイマンはザフト軍基地内にあるバーの前に来ていた。
    ここか?と思いながら、少し重そうな木のドアを押す。
    アンティーク調のドアベルがチリンと上品に鳴った。
    間接証明とジャズの音で大人な空間を演出している店内は、ザフトの軍服を纏った者たちで賑わっていた。
    数人がちらちらとドアに視線を向けている。
    コンパスの制服がまだ完成していないため、オーブ軍の制服を着ているノイマンは、いささか場違いな気がして思わず一歩後退した。
    もちろん、許可を得てこのエリアに足を踏み入れている身ではあるが。
    「ノイマン大尉」
    淡い金髪を後ろに流した黒服の青年が、ひょいっと手をあげて手招きをしているのが見えた。
    「遅くなってすまない」
    彼の座るカウンター席に腰を下ろし、ノイマンは言った。
    バーテンダーがおしぼりを置き、「お飲み物はいかがいたしましょう?」と恭しく訊いてくる。
    ちらりと彼の飲んでいるものを見ると、手元にウイスキーのロックが置かれていた。
    「じゃあ、ハイボールで」
    「畏まりました」
    「久しぶりだな、エルスマン。元気だったか?」
    ノイマンは最後に会ったときに比べ、ぐっと精悍な顔つきになった彼を見て言った。
    「オカゲサマデ。ノイマン大尉もアークエンジェルのみんなも変わりないようで」
    「あぁ、うちの連中は相変わらずだ」
    ノイマンはそう言いながらおしぼりで手を拭いた。
     平和監視機構コンパスの設立に伴い、そちらへ出向となったアークエンジェルクルーたちは、現在プラントに来ている。
    ザフト側のスターティングメンバーとの顔合わせや、打ち合わせ、諸々決めなければならないことが山積みなのだ。
    そんな折り、彼--ディアッカ・エルスマンからノイマンのプライベート端末にメッセージが入った。
    第一次大戦終結後、アドレスを交換しただけで、一度も連絡を取り合ったことのなかったディアッカから、「プラントに来ているなら飲まないか」というお誘いがきたのだ。
    なんでも折り入って頼みがあるのだとか。
    正直、さほど仲がよかったという訳ではなかったので驚いたが、懐かしさから二つ返事で会う約束をしたのである。
    「ハイボールです」
    バーテンダーが紙のコースターの上にグラスを置き、横につまみのナッツを添えた。
    夕食はすでに食堂で済ませてきているので、これで丁度いい。
    「お疲れ様デス」
    「お疲れ」
    二人はカチンとグラスを当てて乾杯した。
    「黒服とは見違えたな。今は立派な将校様か」
    ノイマンは初めて見るディアッカの副長服姿に感心した。
    「階級はノイマン大尉とおんなじデスヨ」
    「とはいえザフトの黒服だろう?俺とは権力が違うよ」
    「あれ、権力ほしいタイプデシタッケ?」
    くくくと笑うディアッカは、愉しそうにぐびっとウイスキーを一口飲んだ。
    喉仏がゆっくり上下するその横顔は、男でも惚れるような色気を漂わせていた。
    最後に会ったときはまだ幼さの残る少年だったのに、時が経つのは早いものだ。
    「お前さ、なんで敬語なの?」
    ノイマンは先程からの違和感を口にした。
    「前から敬語デシタヨ?」
    「違うだろ」
    ディアッカは、あははと自嘲すると
    「やっぱ変だよな?」
    と言ってつまみをひょいっと口に入れた。
    「変だな。元捕虜は元敵に敬語は使わないだろ」
    「いやぁここザフトだし?あんま馴れ馴れしい感じ出ると良くないかなぁって思ってたんだけどさ~」
    愉快そうに笑う姿は、まだあの頃の面影を残していた。
    「それと「ノイマン大尉」っていうのは何だ?」
    「だってファーストネーム知らねぇし」
    「アーノルドだ」
    「ふーん、それってみんな知ってる?呼び捨てだと仲良さそうすぎじゃね?ノイマンのおっさん?も変だしな?そもそも俺らそんな歳違わなさそうだし」
    「俺を幾つだと思ってる?」
    「ん~二十四、五?」
    「二十八だが」
    「え、まじ?俺の八個上?見えねぇ見えねぇ…ナチュラルってこわ~」
    「ナチュラルは関係ないだろ」
    ノイマンは童顔であることにコンプレックスがあるので、ディアッカを横目で睨みながらぐいっとハイボールを煽った。
    相変わらず馴れ馴れしいやつだが、人の懐に入ってくるのが絶妙に上手い。
    久方ぶりに顔を合わせたと思えないほどだ。
    彼がこの調子なので、まだ捕虜だった時代の懐かしい話やら、彼がザフトに復隊してからのこと、アークエンジェルのクルーの近況といった、会わなかった三年近くの間の話に花が咲いた。語り合いながら「お互いよく生きていたな」と労をねぎらう。
    話は尽きず、あっという間に時間は過ぎていった。
     時計の針が十時半を回った頃、ノイマンは
    「それで、頼みっていうのは結局なんだったんだ?」
    と、やっと本題に入った。
    そろそろ閉店の様で、周りの客が帰りつつある。
    ディアッカはグラスの中の氷を揺らしていた手を止め、少し真剣な顔でノイマンの方に身体を向けた。
    「それがさ、ノイマン大尉にミリアリアのことでお願いがあるんだ」
    「ミリィのことで?」
    「ミリアリアと俺さ、まだまだしょっちゅう会えるわけじゃねぇから、連絡手段の一つになってほしいの」
    それからディアッカは少し間を置いて付け加えた。
    「あと……有事の時には、ミリアリアを傍で守ってほしい……っていうオネガイ」
    「それはまた大したお願いだな」
    ノイマンは荷が重いような気がして苦笑した。
    「第二次大戦が始まったとき、俺、気が気じゃなくてさ。その前からアイツ、戦場カメラマンになるとか言って全然連絡取れなくなってんのに、アークエンジェルにまた乗ったらしいって噂は聞こえてくるし。戦況も戦況だったから、一時は安否も分からなくて。心配しすぎて剥げるかと思ったんだぜ?」
    剥げとは無縁のはずのコーディネイターの彼は、当時を思い出したのか、グラスを持っていない手でこめかみを押さえた。
    「で、これからは使える伝や駒は全部使ってミリアリアの動向を把握して、片時も目ぇ離さねぇようにしてやろうと思って。ラミアス艦長やフラガのおっさん、キラにサイに、オーブの姫さん。癪だけどアスランにも、俺の手や足や目や耳の代わりになってもらおうと思っていま動いてんの」
    「そんなみんなに頼んでるのか。それで俺にも?」
    「そ。アークエンジェルの操舵士様はミリアリアのことをよく気にかけてるって聞いたし、ミリアリアがまたオペレーターとしてあの艦に乗艦する可能性もあるだろ?だから適任かと思ってさ」
    「なるほど。大変だな、お前も」
    ノイマンはディアッカを見やった。
    その横顔は、一人の女性を真剣に愛している健気な男の顔だった。
    「…ミリアリアのことはさ、知れる手段はいくつあってもいいし、守ってくれるやつは一人でも多いほうがいいんだよ」
    ディアッカが遠い目をして言った。
    自分が直接その手で、目で、守れればそれに越したことはないのだろう。
    だが、今の二人を隔てるものはあまりに大きい。
    「ま、普段はミリアリアに悪い虫が付かないように見張って、アイツの情報を逐一教えてくれればいいんだけど。アイツ最近どんどん美人になってくから、マァジで心配なの。あー…って言っても、アンタはどちらかというと虫側かもしんないけど?」
    ディアッカがにやりとノイマンを見た。
    ぎくり、としたノイマンは平静を装って少し薄くなった二杯目のハイボールを一口飲む。
    「俺はそんなんじゃないよ」
    確かに、ミリアリアが再びアークエンジェルに戻ってきたとき、以前より少し大人びた姿でCIC席に座った彼女は美しく、目を惹いた。
    オーブのために、世界のためにと前を向いた姿はとても凛としていたのだ。
    だがノイマンの胸のうちには忘れられない人がいる。
    たぶん、ミリアリアの居住まいがあの人と重なるところがあったのだろう。
    あの人も、常に背筋を伸ばし凛としていた人だったから。
    「…なら、いいけど?」
    ディアッカの紫眼が本心を探るように一瞬ノイマンを捕らえたが、ふぃっと前へ向き直ると残り僅かなウイスキーを口にした。
    「俺も今はコンパスに出向中の身だから絶対という約束は出来ないが、出来る限りミリィを見守るよ。ミリィがお前を忘れないように橋渡しにも協力してやる。だが言っておくが、しょっちゅうは無理だぞ」
    ノイマンはディアッカを可愛く思って言った。
    何の障害もなく二人が会える世界が、早く訪れるといい。
    「ありがと、ノイマン大尉」
    とディアッカはウィスキーのグラスをちょん、とノイマンのグラスに当てて、柔らかな笑みを浮かべた。
     バーテンダーが「そろそろお時間で御座います」と声をかけてきた。
    時計は十一時を回っていた。
    皿に残ったナッツを口に放り込みながら、ディアッカが唐突に言った。
    「つかさ、あんたミリィミリィってちょっと言い過ぎじゃね?」
    「そうだったか?」
    「俺なんてミリアリアになかなかミリィって呼ばせてもらえないのにさ~。ベッドの中だけだぜ?ミリィって呼んでいいの」
    ディアッカの盛大な惚気に、ノイマンは飲もうとしていたハイボールの残りを思いっきり気管に詰まらせ、げほげほとむせ返ったのであった。


    Fin
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