幸せな夢 オーブのコロニーであるヘリオポリスは、オーブと同じ季節に調節されている。
だから、四月は秋の気候だ。
少しひんやりとした空気が、地球のそれによく似ていて、四月のトールの誕生日には手袋やマフラーなんかを贈って
「風邪引かないようにしてよね」
なんて世話を焼いたものだった。
トールもまんざらでもなさそうに
「もう、ミリィったらお母さんみたいだよ」
なんて笑っていた。
あの顔をもう一度見たい。
笑うと、どこからどう見ても人の良さそうなあの顔を。
それなのに、彼は夢にすら出てきてくれない。
たったの一度もだ。
いや、トールだけではない。
ミリアリアの夢には、トールも、両親も出てきたことはないのだ。
今隣に眠る最愛の彼、ディアッカでさえも。
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