きたいこい水心子くんの夢の話夢を見ている。
そんなことはすぐにわかった。
暖かい前世の記憶の中に自分はいる。
これは……確か、万屋の隅にある甘味屋までの道のり。
任務がない日に、そこで清麿と共にお茶をしてのんびり過ごすのがあの時は何よりも楽しみだった。
横を見れば、そこには懐かしい衣装に身を包む親友だった彼の姿。
いつもの柔らかい口調で、穏やかに微笑んで彼は言葉を紡ぐ。
「今月は期間限定が苺の味なんだって。何にしようか迷ってしまうね」
それに対して、己は過去の己にもなれず、幼い学生服でこの場に存在している。
それがまた、過去には戻れず、現実からは逃れられないのだと思い知らされているようで苦しくなった。
「水心子はもう何にするか決めた?」
思い出の中の親友を見ずに、口を開く。
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