膝に乗せて 小さな刀が仲の良い大きな刀の側にいることは良くある。
「大千鳥」
泛塵も、そんな刀たちと同じ様に大千鳥十文字槍の側にいる。
胡座をかいた大千鳥十文字槍の脚の間にすとんと座るのが定位置になっていた。なんだかそこが落ち着くのだ。彼のぬくもりも、頭のすぐ上から聞こえる声も心地好い。
だが、ある日。
「もう乗らないでくれ」
いつものようにそこへ腰をおろそうとしたら、背を押されて拒まれた。
「何故だ?」
「……重いから……」
「なに」
泛塵が振り返ると、大千鳥十文字槍はばつが悪そうに眼を逸した。
……嫌だったなんて、思わなかった。
「……すまなかった」
震える声をなんとか絞り出して一言だけ告げると、泛塵はその場から走り去った。
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