自殺カプセルと息を併せて大きく飲み込んで、引き金を引く。耳元で砲弾が着弾したかと思った。衝撃で、地面に思い切り倒れ込む。血。血だ。夥しい量の血が、私の周りを覆っている。目がまわる。吐き気がする。ああ神よ。死とはこんな景色だったのか。
マクダ。マクダが見える。手を伸ばしかけてやめた。もう呼んだって聞こえないだろう。彼女の死に顔。いままさに死にかけている顔。ずいぶんと老けてみえる。私だって、彼女からすればそうだったのだろうか。
吐きそうだ。吐くものがない。胸が痛い。拍動の音が耳にこだまする。頭が割れるように痛い。視界が眩む。これじゃまるで、いまから死ぬみたいじゃないか。良かった。生きていて良かった。ポーチに佇む僕が見たら、自分の存在に悩む僕が見たら、本を閉じてこちらを見て、きっとこの結末を喜ぶだろう。
脳幹を撃てなかったのだろう。もう頭が回らない。「これだから、」戦争を経験していないものは。ちゃんと決め切ったボスならそういうだろうか。
あ。大きく瞬きをする。痛くない。
青空を向いた彼の目は、白く濁っていた。